静岡・蒲原は旧東海道屈指の古い町並みが残る宿場町

静岡・蒲原は旧東海道屈指の古い町並みが残る宿場町

更新日:2017/10/31 13:31

風祭 哲哉のプロフィール写真 風祭 哲哉 B級スポットライター、物語ツーリズムライター、青春18きっぷ伝道師
東海道15番目の宿場町、静岡市清水区にある蒲原は、安藤広重の「蒲原夜之雪」で有名な場所。旧東海道の中でも古い建物が数多く残っていて、たいへん風情のある町並みとして知られています。
端から端まで歩いても2キロにも満たない小さな町なので、ぐるっと一周しても2時間ほど。のんびりと散策するにはぴったりの蒲原を紹介します。

蒲原といえば安藤広重「蒲原夜之雪」

蒲原といえば安藤広重「蒲原夜之雪」

写真:風祭 哲哉

地図を見る

蒲原の宿場町散策の最寄り駅は、JR東海道本線の新蒲原駅。ひとつ西に蒲原駅もあるのですが、旧東海道の宿場町に近いのは新蒲原のほうなので、ご注意ください。

駅のすぐわきを走る東海道の歩道橋を渡って西に進むと、小さな川沿いに安藤広重の浮世絵「蒲原夜之雪」記念碑があります(写真)。
まさにこの場所で、この絵が書かれたのではないか、と言われていることから、ここに記念碑が建てられました。

昭和35年、国際文通週間の記念切手に採用されたことにより、この絵は一躍有名になりましたが、実は蒲原に雪が降ることはほとんどなく、この絵のように降り積もることはまずない、と言われています。また、この絵は真夏に描かれたという説もあり、広重の東海道五十三次の中でも「役物」と称され、非常に人気の高いこの作品ですが、まだまだ謎が多いようです。

なまこ壁の佐藤家は、蒲原で最も存在感のある建物

なまこ壁の佐藤家は、蒲原で最も存在感のある建物

写真:風祭 哲哉

地図を見る

「蒲原夜之雪」記念碑から山側に少し進むと、旧東海道沿いの蒲原のメインストリートと交差します。ここはかつて問屋場があった場所で、かつての蒲原宿の中心地でした。本陣跡もすぐそばに残っています。

ここから東側(富士市方面)に進むとすぐに見えるのが吉田家と佐藤家。国登録有形文化財である吉田家は昭和まで「僊菓堂(せんかどう)」という和菓子を作っていた商家。なまこ壁の「塗り家造り」で内部は柱がなく広々とした「店の間」づくりになっており、土間が奥まで続いています。
佐藤家も壁が漆喰の「塗り家造り」の建物ですが、なまこ壁の白と黒のコントラストが美しく、蒲原の町並みの中でも最も存在感のある建物のひとつです(写真)。

そのまましばらく旧街道らしい細い道を進むと、左側の山肌に突如4本の大きな鉄管が現れます。これは沿岸にある日本軽金属蒲原工場のアルミニウム精錬のための自家水力発電用設備で、富士川の水を利用しているのだそうです。
鉄管を越えるとすぐに蒲原宿の東の入り口であった東木戸跡に到着。この先の東海道は山道となり、東名高速を陸橋で越えて富士川方面へと至ります。

旧五十嵐歯科医院は、蒲原宿西側のハイライト

旧五十嵐歯科医院は、蒲原宿西側のハイライト

写真:風祭 哲哉

地図を見る

東木戸跡から引き返して今度は宿場の西(由比方面)へと向かいましょう。宿場の中心、本陣跡を越えて先に進むと連子格子の続く中、突如洋館が現れ、蒲原宿西側のハイライト、旧五十嵐歯科医院の建物が見えてきます。

これは町家を洋風に増改築した擬洋風建築と呼ばれる建物で、国登録有形文化財となっています。大正時代、既に建てられていた町家を元に、ガラスと下見板をはめ込んだ独特なデザインに改装され、モダンな雰囲気を醸し出しています。

1階には純和風の中庭と畳の部屋が続いていますが、診療室や待合室のあった2階は洋風を意識した広い窓が南側一面にあり、明るく開放感のある空間となっています。
名医として知られ、明治の元老で元宮内大臣の田中光顕(みつあき)伯爵も治療に訪れていたのだとか。専用の特別な待合室もあります。

旧五十嵐歯科医院の建物の目の前にあるのが、志田邸。
屋号をやま六といい、醤油・味噌・油などを扱っていた元商家でした。しとみ戸や店の間・中の間など商家の面影がよく残されている国登録有形文化財で、現在でも資料館として見学することができます。

蒲原のB級グルメはイルカ?

蒲原のB級グルメはイルカ?

写真:風祭 哲哉

地図を見る

旧五十嵐歯科医院や志田邸を過ぎると、旧東海道はやがて左に曲がって西木戸跡で東海道と合流し、蒲原の宿場町はここで終わりとなります。
東海道をこのまま西に進むとJR東海道本線の蒲原駅を経て由比方面に続きますので、そのまま西進して、由比の宿場町やさくらえびを楽しむのもおススメです。

さて由比のさくらえびほど有名ではないのですが、蒲原のB級グルメに「イルカすまし」があります。
イルカとはそう、あのイルカ。蒲原ではイルカの背びれや尾びれを薄く切って1〜2日間水にさらしたあと30〜40分ゆで、塩に漬けたものを昔からおやつ代わりに食べていたそうです。珍味として有名で、別名「蒲原のチューインガム」と呼ばれており、一頭からわずかしか採れないとても貴重品な食物でもあります。
蒲原周辺のスーパーや魚屋さんなどで買えますので、蒲原を訪れた際にはぜひチャレンジしてみてください。

旧東海道・蒲原は、一年じゅう散策が楽しめる町

旧東海道の中で古い宿場の面影を色濃く残す宿場町は、尾張の有松宿、伊勢の関宿、そして駿河の蒲原宿などが有名ですが、東京から一番近いのがここ蒲原です。
首都圏からなら、新幹線を使えばもちろん、在来線の旅でも十分に日帰り圏内。春から秋にかけての行楽シーズンはもちろんのこと、冬でも温暖な地域ですので一年じゅう散策が可能です。

ぜひ蒲原をのんびりと歩きに出かけてみてください。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/12/27 訪問

- PR -

条件を指定して検索

- PR -

この記事に関するお問い合わせ

- 広告 -