大和・難波を結ぶ奈良街道のピーク・暗(くらがり)越えの見どころ

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大和・難波を結ぶ奈良街道のピーク・暗(くらがり)越えの見どころ

大和・難波を結ぶ奈良街道のピーク・暗(くらがり)越えの見どころ

更新日:2015/05/03 18:11

ナツキのプロフィール写真 ナツキ きのこの文化研究家、博物学者

近鉄南生駒駅のやや南の小瀬橋から暗峠に通じる国道308号線は、今でこそ国道とは思えないほど狭隘きわまりない道路ですが、ここは奈良の春日大社から大阪の玉造まで続く古くからの奈良街道。
芭蕉も通ったこの由緒ある峠路をたどり、垣間見える歴史の痕跡に触れる旅を楽しみましょう。

奈良街道・暗越えの大和側

奈良街道・暗越えの大和側

写真:ナツキ

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生駒山系は大和側はゆるやかで大阪側は急峻な地形。暗(くらがり)越えは現代人の脚力では奈良側から登ることをおすすめします。
近鉄南生駒駅やや南の小瀬橋を渡り1kmほど西へ行くと、右手に応願寺の小道が続いています。

この寺の地蔵堂には欠けた鼻をセメントで補修した、ユーモラスな地蔵石仏がおさめられています。しかし、この厚肉彫り、像高147cmの見事な地蔵立像は永仁2(1294)年の造立年号が刻まれた由緒正しい石仏。
境内にはそのほか十三重塔や名号碑など室町・桃山時代の石造物がさりげなく置かれています。
暗越えはまずこの寺から出発いたしましょう。

藤尾町の石仏寺から藤尾峠の阿弥陀石仏、阿弥陀磨崖仏

藤尾町の石仏寺から藤尾峠の阿弥陀石仏、阿弥陀磨崖仏

写真:ナツキ

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この峠路の寺はこぢんまりとして拝観寺ではありませんが、それぞれ境内には、歳月の風化に耐えた石造物を多く蔵しており、見逃せません。

藤尾町の石仏寺の本尊は、永仁2(1294)年に大工伊行氏が作った阿弥陀坐像とその両脇の阿弥陀立像、地蔵立像が有名ですが、芳志で拝観することもできます。またここにも境内には鎌倉後期の五輪塔(高さ208cm)や名号板碑も散見されます。

しかし、この集落での見ものは藤尾峠の道路脇の小堂におさめられた石仏です。
堂内には上部を欠損した高さ135cmの蓮華座に立つ来迎印の阿弥陀立像が薄肉彫りされています。文永7(1270)年の銘があり、とても見事な出来栄えです。

この峠路に阿弥陀像、地蔵像をはじめ、馬頭観音像が多く見られるのは、やはりこの街道が物流の大動脈を担っていた名残りです。

奈良側の峠路には、段々畑が広がり、振りさけみれば矢田丘陵が遠く望めます。そんなあっけらかんとした風景を楽しみながら、のんびり登ればいつしか石畳道となり暗峠に至ります。

大阪府と奈良県の県境の暗峠

大阪府と奈良県の県境の暗峠

写真:ナツキ

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峠には数軒の家並みと昔ながらの茶店もあり、やや北に入ったところにはきわめて古風な像容の等身大の地蔵をおさめた地蔵堂。江戸時代の道しるべ、やや西寄りには伊勢参りのおかげ石灯籠、矢田山・奈良への道しるべが置かれていて、往時の賑わいを伝えています。

峠道から分かりにくい標識をたよりに西北に深く入り込んでいくと鬱蒼とした杉林の中にポツリと髪切山(こぎりさん)慈光寺が建っています。
役行者が生駒山で二鬼を捕えたところが鬼取山で、鬼の髪を切って従者としたところがこの髪切だと言われています。
寺の庭はこじんまりしてはいますが、四季おりおりの花で満たされ、森閑とした素敵なところで、峠路の来し方の疲れを癒してくれます。

生き物天国の暗峠・大阪側

生き物天国の暗峠・大阪側

写真:ナツキ

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髪切山慈光寺でたっぷり時間をとって休息した後は、一挙に枚岡神社へと下りましょう。
この下りの途中の法照寺手前には句碑があります。

菊の香にくらがりのぼる節句かな   芭蕉

元禄7(1694)年、重陽の節句の9月9日、芭蕉はここを下り大阪入りし、病を得て御堂会館あたりで他界してしまいます。
この暗越えの道は芭蕉最後の旅となった街道としても有名です。
とはいえ、この峠道は今では狭くて急な上に車が頻繁に通る国道ですので、人間専用に作られた道路とはいささか趣きが異なります。
途中の「弘法の水」と書かれ、古い様式を伝える阿弥陀如来像が上部に刻まれた笠塔婆のある所から、やや下ったところより峠道を逸れ、大阪府民の森を抜け元春日の神津嶽(こうづだけ)を経て枚岡神社裏へと下る山道のコースをおすすめします。
ここから見る大阪平野の展望はとても素晴らしいものです。

そしてこの峠から続く大阪側の森には、さまざまな生き物と出会うことができ、お子様連れにももってこいのルートです。

大和・難波の環境指標生物としてのアミガサタケ

大和・難波の環境指標生物としてのアミガサタケ

写真:ナツキ

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商魂たくましい難波の濃厚な空気にさらされた暗越え峠道の大阪側の魅力は、なんと言っても生き物天国。
生駒山の西東では、まったく空気も人情もすべて対照的で、決して誇張ではなく、山ひとつ越えただけなのに生き物密度の違いには驚かされます。
「清流に魚棲まず」のたとえ通り、春の使者のアミガサタケは都市の難波と農村の大和という空気の異なる世界の指標生物です。
このきのこは重金属、とりわけ炭素を好み、廃油を含んだような黒々とした肥沃な土壌に繁殖します。
土筆の親玉のような立ち姿で、フランス料理では豊潤な香りと濃厚な味わいで珍重される高級食材のきのこですが、この峠路では圧倒的に大阪側に多く発生するのです。

ただし調理の手順如何では中毒することもしばしばですので、もし道の辺で見かけたら「よう!!」と声をかけるだけにいたしましょう。

おわりに

生駒山は難波大和を隔てる自然の要害で、我が国古代の都が大陸との交易ルートの瀬戸内海をはるかに隔てた大和に建国されたことにも深い理由があります。
しかし、この二大都市を隔てる生駒山を効率よく越えるための峠路が早くから開かれ、多くの物資や人々が行き来しました。
そんなかっての峠の中でも、とりわけ古いものが生駒山には数多く残されています。この峠を越える人は大和と難波の空気の違いをワクワクドキドキ体感しながら通ったと思われます。
そんな歴史街道探訪の旅のモデルとして暗越えは最高です。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/04/12 訪問

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