写真:東郷 カオル
地図を見るまるでヨーロッパの街中にいるような錯覚さえ覚えるこちらのビルは、奈良ホテルの建設にも携わった河合浩蔵氏によるもので、1997年に登録有形文化財に登録されています。現在の名称は「新井ビル」ですが、もともとは1922年(大正11年)に報徳銀行として建てられたもの。金融恐慌で報徳銀行が倒産した後、貸しビルやレストラン、証券会社を経て、現在は五感のサロンとして幅広い年代から愛される建物となっています。
1階がショップで、2階がサロン。大きな吹き抜けとなっていて、2階の回廊からショップを見下ろす眺めは見事です。2階のサロンは吹き抜けを囲むようにいくつもの部屋が配置されていて、昔の部屋割りをそのまま利用されています。
この建物が一番美しく見えるのは夕暮れ頃。辺りが薄暗くなりはじめ外壁のライトが点くと、この一角だけ大阪とは思えないような雰囲気に包まれます。サロンを利用するなら、並ばずにすむモーニングもおすすめ。フレンチトーストのセットはお手頃価格でサロンを楽しむことのできる優秀なモーニングメニューです。
写真:東郷 カオル
地図を見る地下鉄淀屋橋からすぐの場所にある芝川ビル。1927年(昭和2年)に竣工した建物で、南米マヤ・インカの装飾が施されています。芝川ビルは一時は「芝蘭社家政学園」という花嫁学校として船場のこいさん・いとはん(※)が通い、これが現在の女子短大のはしりであったとも言われています。とても現役の建物とは思えない外観ですが、恐る恐る古いガラスの扉を押してみると中へ入ることができます。このビルには意外と沢山のお店が入っていて、レストラン、カフェ、バーからフラワーショップなどジャンルも多彩。それぞれこだわりのお店がこのレトロな芝川ビルを選んだというのがよくわかります。
芝川ビルの地下に入っている、モールアンドホソイコーヒーズもその中のひとつ。普通カフェは眺めの良いフロアにあるイメージですが、このお店は地下。ひんやりした石の階段を降りていくと辿り着く秘密の喫茶室といった感じです。それもそのはず。このお店の入っている場所はもともと金庫室だった場所。モールアンドホソイコーヒーズは金庫室をリノベーションした斬新なカフェなのです。独特の雰囲気が漂う店内。普通のカフェは飽きた人には是非訪れていただきたい金庫喫茶です。
※ こいさん・いとはん:船場言葉で、船場の商家の娘のこと
写真:東郷 カオル
地図を見る高麗橋野村ビルディングは、関西を代表する建築家・安井武雄の設計で1927年(昭和2年)に建てられたもの。正面玄関の両脇に孟宗竹をデザインした柱が立ち、その上に月形の照明をあしらったモダンなデザイン。今も野村グループのビルとして使われています。
こちらのビルにあるのは、チェーン店の「サンマルクカフェ」。気軽にレトロモダンな雰囲気が楽しめます。野村グループの正面玄関を挟んで、写真左にサンマルクカフェ、右は和菓子の源吉兆庵がテナントとして入っています。
安井氏の作品には大阪瓦斯ビルヂングや大阪倶楽部など、この近辺にもいくつか残っていますので、時間の許す方は訪ねてみるのもおもしろいでしょう。
写真:東郷 カオル
地図を見る1912年(明治45年)に建築された北浜レトロビルヂング。証券会社の大きなビルが立ち並ぶ土佐堀通りにあって、ここだけ時が止まったかのような佇まいです。かつて証券会社や専門商社の社屋として使用され、国登録有形文化財にも登録されているこの建物には、遠方から訪れる女性がお店の開店時間前から列を作るカフェが入っています。ビルの名前をそのまま店名にした「北浜レトロ」。壁面から突き出たティーポットがかわいらしいティーサロンです。
2階にはイギリスのアンティークでしつらえたティールームがあり、ここから中之島公園を眺めながらいただくアフターヌーンティは格別。写真は川を挟んで中之島公園側から建物を撮影したものですが、建物の裏側の壁面にもティーポットが飾られているところがオシャレですね。
※向かいの中之島公園で写真のようなバラが見られるのは5月〜6月と10月〜11月です。
写真:東郷 カオル
地図を見る淀屋橋に建つマンションの1階に入っているのが、コホロエルマーズグリーンコーヒーカウンター。このマンション自体は新しいのですが、旧大阪農工銀行の外壁の一部を曳家工法(※)を使って保存し、マンションに再利用しています。こういった形でも古いものが取り壊されずに残るということは素晴らしいことですね。
旧大阪農工銀行は、1918年(大正7年)辰野片岡建築事務所の設計により竣工。1968年(昭和43年)からは繊維商社の八木通商大阪本社として使われていましたので、大阪の方はこちらの名称のほうがピンとくるかもしれません。
コホロエルマーズグリーンコーヒーカウンターへは是非ビジネス街が静かな土日に訪れてみてください。入口のわりに中は意外と広く、とても落ち着いた雰囲気。店内に置かれている器や雑貨を眺めながら静かなコーヒータイムが過ごせます。
※曳家工法:耐震補強などのため、建物全体をジャッキにより一時的に持ち上げ、レール上を移動させる工法
大阪でレトロビルが集中しているのは、淀屋橋から北浜近辺。特に三休橋筋という南北に走る筋はレトロな雰囲気たっぷりです。この辺りをぶらぶらすると、他にも沢山のレトロビルに出会えるはず。見つけたらよく観察してみてください。もしかしたらカフェが入っているかもしれません。
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この記事を書いたナビゲーター
東郷 カオル
国内外のラグジュアリーホテルを中心に、オトナ女子のおひとりさま旅、女子旅を提案。"癒し系"ではなく、私自身の"癒されたい系"の目線から、忙しく毎日をがんばる女性…
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