世界最大規模のレリーフ!南インド「ガンガーの降下」

世界最大規模のレリーフ!南インド「ガンガーの降下」

更新日:2015/05/13 16:38

石を彫ったレリーフとして世界最大の規模を誇る「ガンガーの降下」は、1985年に世界遺産に登録された「マハーバリプラムの建造物群」の一部で、インド南部のタミル・ナードゥ州、マハーバリプラムという街にあります。この街は6世紀以降、パッラヴァ朝という王朝が栄え、東西貿易の拠点として多くのヒンドゥー教寺院が建立された場所です。今回は、7世紀頃に作られたというこの異彩を放つをレリーフについてご紹介します。

解釈は2通り。「ガンガーの降下」または「アルジュナの苦行」

解釈は2通り。「ガンガーの降下」または「アルジュナの苦行」
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チェンナイからバスで約2時間、ベンガル湾を臨む風光明媚なマハーバリプラム。その観光を支えている一大遺跡群の中に「ガンガーの降下」はあります。道路の横に突如現れる壮大な彫刻に、誰もが驚かずにはいられません。

この巨大なレリーフは、高さ9メートル、幅27メートルの花崗岩の岩山に彫られています。1300年以上経った今、テーマはもはやはっきりと分からず、ヒンドゥー教の神話である「ガンガーの降下」もしくはインド最大の叙事詩『マハーバーラタ』に登場する「アルジュナの苦行」の場面を描いたという2つの解釈があります。
たくさんの神々や動物、また人間たちの躍動感溢れる姿に、古代の人々の感情が垣間見えるようでワクワクします。

レリーフの前の砂場のようなところには入ることはできませんが、その大きさは十分に体感できます。例えば、写真右下の象は、本物と同じくらいのサイズです。

ガンガーの降下の物語

ガンガーの降下の物語
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先程紹介した「アルジュナの苦行」という解釈は、マハーバーラタに登場する英雄アルジュナが、シヴァ神から強力な武器を手に入れる為に苦行をしているというもので、レリーフ中央の溝がある部分の左上に、片足立ちになって腕を頭の上に回しているのがアルジュナの姿といわれています。

しかし、レリーフ中央の溝はガンジス川を表しているとも言われ「ガンガーの降下」の場面という説も根強いです。ここでは、この物語について少し触れたいと思います。

昔々、サガラ王という王が、自身の2人の妃に男の子が欲しいと願い苦行を行ったところ、片方の妻から6万人の勇敢な息子が生まれ、もうひとりからはたった一人の美しい男の子が生まれました。やがて、6万人の息子は無謀な戦いに挑み全滅、その灰は地中に埋まり天界へ昇ることができずにいました。
一方でたった一人生まれた男の子の子孫、バギーラタという聖者が、6万人の先祖の成仏を願い、天界から聖なる水を持つガンガー(ガンジス川)を降下させるため一心に苦行をしたそうです。このとき願いを聞き入れたシヴァ神は、天界から流れ落ちるガンガーを己の額で受け止め、先祖は無事に供養されました。ところが、ガンガーは、内心「私を受け止めるなんて無理に違いない」と見くびった為、それを知ったシヴァ神は怒り、その長い髪の中にガンガーを7年間に渡り閉じ込めました。ガンガーはひたすら許しを乞い、やっと地上に流れ落ちることができた、という話です。

インドの神話はこのように常にスケールが大きく、思わず笑ってしまうような話も多々あります。是非、インドの遺跡などを見に行かれる際には、予め神話に触れておくとより一層楽しく鑑賞できると思います。

細部までユニークな模様

細部までユニークな模様
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このレリーフには、作り手のユーモアを感じる部分が多々あります。
例えば、写真の象の下には小象がいたり、さらに左下には修行者の真似をする猫の姿もあります。他にも猿が毛づくろいしている場面が描かれていたり、表情豊かな神々は生命力に溢れ見応え十分です。象も写実的で、今にも動き出しそうな様子です。

ところが、レリーフの左側は全く何も施されておらず、製作が中断したとも言われています。ひとつの作品から、実に様々なことが想像できる興味深い遺跡です。

パンチャパーンダパ・マンダパ窟

パンチャパーンダパ・マンダパ窟
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ガンガーの降下のレリーフの先は、石窟寺院「パンチャパーンダパ・マンダパ窟」と繋がっています。
柱にはパッラヴァ王朝の象徴とも言われる見事なライオンが彫られており、石窟寺院内のいくつかの彫刻も躍動感があり見事なものです。しかし、よく見れば柱のライオンもないものもあり、中央の祠堂はレリーフも何も施されておらず、未完成であることが伺えます。
これは、7世紀から8世紀にかけて建築手法が古代の石窟から石造を中心とする中世の建築へと進化した為だと言われていますが、その真偽は謎のままです。

おわりに

「ガンガーの降下」のある場所周辺は、観光客や市民の憩いの場として緑豊かな公園が広がっており、誰もが無料で見学することが可能です。近くにはレンタサイクルもあるので、周辺の遺跡を自転車で巡るのも良いでしょう。
のんびりできるビーチなどもあり、2〜3日宿泊されることをお勧めします。
是非、インドの悠久の歴史を感じる不思議な遺跡を訪れてみてはいかがでしょうか。

掲載内容は執筆時点のものです。 2011/09/10 訪問

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