日本の夕陽百選に選ばれた「淵ノ元カトリック墓碑群」は、福江島の三井楽(みいらく)にあります。三井楽は、その名の通り三つの井戸にちなんでつけられた地名。ここは、その昔日本で遣唐使船が飲み水を供給するために選んだ最後の寄港地です。水が豊富なこのエリアには、今でもその当時の井戸が枯れずに残っています。中国人の掘った井戸もちゃんと残っています。
ここでのお勧めは、なんといっても雄大な景色。井戸のある集落を抜けると海を見渡す丘があり、東シナ海が目の前に広がっています。緑の草原がどこまでも続き、波打ち際には噴火した火山の溶岩が固まってできた入り江が見えます。ときおり鶯の声がきこえてきますが、あとは波と風の音だけの静かな世界。春から夏にかけてのこの景色、ハワイとそっくりです。
小高い丘には、第16次遣唐使としてこの地に寄港した空海の像と記念碑が立っています。この最果ての地をあとにして中国へ旅立つと、2度と再び日本の地を踏むことがないかもしれない。そんな決意の言葉「辞本涯」が記念碑には刻まれています。
海をはさんで、像の向こうに見えるのが姫島。かつて隠れキリシタン達が住んでいたのですが、今は無人島。姫島に葬られた人たちは、福江島に移住する際に三井楽の貝津教会の脇の墓地に移され今も安らかに眠っています。
余談ですが、貝津教会には西日の射す夕暮れ時に行くのがお勧めです。ステンドグラス越しにカラフルな光が会堂中に広がってため息がでます。
昼間ならいいけれど、夕陽を見るのにわざわざ墓地にいくなんて心細いと思っているあなたにお勧めなのが、地元で旅のコーディネートを行っているWING五島のガイドさん。予約をすると手頃な料金で地元を観光するお手伝いをしてくれます。ガイドさんがいれば、街灯ひとつないところへも安心していけます。それに地元の興味深い話もたくさん聞けて一挙両得。
さて、墓地にはそれぞれ区画があり、そのどれもがとっても立派。迫害があった頃の島の暮らしは貧しく、ときには過酷だったそうです。立派なお墓がなんだか彼らへのご褒美のようにも見えてきます。
五島列島では宗旨にかかわらずお墓にはお金をかける習慣があります。そして共通しているのが、手向けられているお花。どれもがとっても色鮮やか。それもそのはず、全部造花なんです。これは、一見の価値あり。
墓碑群の隣には、海につきだした竹組みのやぐらがあります。これは、スライスしたサツマイモをゆでて干すところ。天日干しをする場所は今ではめずらしく、干された「かんころ」は、餅とあわせて土地の名産品「かんころ餅」へと変身します。
墓碑群を通り過ぎると遊歩道は民家へとつながっています。夕暮れ時には、近所の人たちが連れ立ってお散歩しています。ときには海に釣り糸を垂れる人に出会うことも。墓碑群といっても、決して怖い所ではありません。
五島のお墓には宗旨にかかわらず造花が供えられるのですが、ちゃんと自然の花も植えられています。遊歩道に組まれた石垣には、島の人たちが植えた白百合がたくさん咲いています。白百合は五島列島の教会ではよく見かける花です。カトリックでは、清らかな白百合は、マリア様を表す花。ここにはぴったりのお花ですね。見ているこちらの気持ちまで優しく包んでくれます。
いよいよ夕陽が迫ってきました。海や空を赤くそめていく夕陽。そこに浮かぶ十字架の墓標とマリア様の像のシルエット。その時間と空間は、まさに祈りのひとときです。隠れキリシタンや遣唐使たちに想いを馳せながら、昔彼らが眺めた最果ての夕陽を是非あなたも眺めてみませんか。
福江島は、五島列島最大の島。島での移動はレンタカーをお勧めします。またガイドさんと一緒なら島の色んな穴場に連れて行ってもらえます。また毎年、ホタルフクロの花が沿道に咲く5月から6月中旬頃には、たくさんのホタルがみられます。夕陽鑑賞のあと、懐中電灯をもって「浦の川」あたりにホタル鑑賞は、いかがでしょうか。当たり年にはホタルの光の川ができるんですよ。
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