オンネトーは、道東の観光スポットとしても有名です。ここから見る山々は、人々の心を惹きつけます。写真の左の山が雌阿寒岳(1499m)、右の山が阿寒富士(1476m)です。オンネトーの絶景を語る上においては、この両山抜きには語れません。
雌阿寒岳への登山道は3コースあります。雌阿寒(野中)温泉、オンネトー、阿寒湖畔の3つです。前者の2つが一般的に利用されているコースです。
雌阿寒温泉に登山口のある雌阿寒コースは、頂上まで3.3km。一般的に登りは2時間、下りは1時間20分。3コースの中で、最短の距離・時間で登山できます。
オンネトー国設野営場に登山口のあるオンネトーコースは、頂上まで4.2km。一般的に登りは2時間40分、下りは1時間40分。間近に阿寒富士を眺めながら登山できます。
阿寒湖湖畔に登山口のある阿寒湖畔コースは、マチネシリ火口を経由して頂上まで6km。一般的に登りは3時間、下りは2時間。3コースの中で、最も距離・時間とも長いコースとなっています。
今回は、眼下にオンネトー、右手に阿寒富士、左手に火口内の青沼・赤沼を楽しめるオンネトーコースを紹介します。このコースを歩いて雌阿寒岳の素晴らしさを満喫して下さい。
登山口から少し進むと、登山届けのポストがあります。必ず登山届けに記入してから登り始めましょう。登山届けを出すことは、最低限のルールです。
最初は針葉樹林の中の急傾斜の階段登りからスタートしますが、直ぐに平坦な登山道へと変わります。その後、緩急のある道を進みます。途中、木々の根が登山道の表面に張りだしていますので、転ばぬように足下に注意を払って下さい。
針葉樹林に囲まれた登山道を登り続けると、ハイマツの中を進む道へと変化します。やがて背の丈の低いハイマツのトンネルを抜けると、視界が開けます。火山礫で歩きにくいルートを少し進んだら振り返って下さい。眼下にオンネトーの美しい姿と、遠くに足寄の町並みを目にすることができます。
オンネトーは、アイヌ語で「老いた沼」の意味です。雌阿寒岳は、アイヌ語で「マチネシリ」と呼ばれ、「女の山」という意味です。ここから、雌阿寒岳と名付けられました。因みに雄阿寒岳は、アイヌ語で「ピンネシリ」と呼ばれ、「男の山」という意味です。
登山道沿いには、高山植物も咲いています。オンネトーの景色。可憐に咲く花。これらを見れば、登山で疲れつつある身体が癒されます。
高山植物を見ながら火山礫の登山道を進むと、円錐形の美しい阿寒富士が右手間近に迫ります。近くから見る「富士」は、迫力があります。しかも、雌阿寒岳とは土の色が異なる黒色の山肌にも圧倒されることでしょう。
実際に歩いてみると分かることですが、阿寒富士の登山道は歩きにくいの一言です。黒土の正体は火山灰です。しかし黒土自体が締まっておらず、まさに一歩進んで半歩後退というような道です。その点、雌阿寒岳の登山道は歩きやすい方でしょう。
雌阿寒岳登山に時間的・体力的に余裕があれば登ってみて下さい。阿寒富士への分岐点から頂上まで30分。頂上から分岐点まで20分。往復に1時間少々の時間的・体力的余裕があれば、二つの頂を征服することができます。阿寒富士から見る雌阿寒岳も美しいです。
阿寒富士への分岐点から少し登った所を最後に、背後に広がるオンネトーは視界から消えます。その代わりに、左手前方に雌阿寒岳頂上付近の景色が視界に入ります。
前方に頂上付近が見えてくると、風向きによっては硫黄臭を感じます。時には、息苦しくなることもあります。この臭いの正体は、頂上部の火口内から吹き上がる噴気。健康に害を及ぼすこともあるので、安全面に注意しながら歩いて下さい。
噴気口からは、吹き出す音も聞こえてきます。まさに大地の息吹を感じさせてくれます。そして、雌阿寒岳が活火山であることを実感します。
写真の手前にある青い池は青沼。その後ろに噴気。奥に見えるのが阿寒富士です。雌阿寒岳を代表する絶景です。
頂上で昼食をとるのも良いのですが、この絶景を見ながら食べることもお勧めします。シーズン中は登山者数が多く、頂上でお気に入りの場所を確保するのが困難な場合もあります。この頂上手前付近であれば、絶景スポットを独り占めすることも可能です。
オンネトーで登山用の弁当を確保することは無理です。宿泊施設で弁当を用意してもらうか、阿寒湖畔のコンビニを利用して昼食を確保して下さい。自然の中で食べる昼食も思い出の一つとなることでしょう。
火口壁の登山道を進むと、右手下にマチネシリ火口、右手奥に雄阿寒岳が視界に入ります。阿寒湖畔コースとの分岐点を過ぎると頂上まで残り僅か。でも、火口に近づきすぎると滑落する危険性が高いので、登山道から外れることなく歩きましょう。
火口壁の登山道を登り切ると雌阿寒岳頂上に到着します。天気さえ良ければ登ってきた甲斐があったと身にしみて思うことでしょう。噴気を上げる雌阿寒岳頂上部のカルデラ。後方に視線を移せばマチネシリ火口。更に阿寒湖と雄阿寒岳。頂上からの大パノラマを満喫することでしょう。
雌阿寒岳は日本百名山の一つとして広く知られていますが、意外と知られていない事実をご存じでしょうか。実は百名山の選定者の深田久弥氏は、雌阿寒岳には登っていないのです。
深田久弥氏が、登山目的に阿寒湖周辺を訪れたのは1959(昭和34)年。この時、雌阿寒岳は火山活動のため登山禁止となっていました。そこで彼は、雄阿寒岳に登頂しました。そして彼の著書『日本百名山』では、「阿寒岳」として紹介したのです。しかし「阿寒岳」と言えば、今では一般的に雌阿寒岳を指すようになりました。それ故に、雌阿寒岳が百名山の一つとして知られるようになったのです。
雌阿寒岳は活火山です。有史以来、噴火を繰り返してきています。最近では、1998年と2006年に小噴火しています。気象庁による、常時観測火山の一つともなっています。登山をする際には、最新の火山活動情報を入手して下さい。また、登山道脇に掲げられている注意を促す看板の指示にも従って下さい。自分の命は自分で守りましょう。
下山後は、源泉掛け流しの温泉に入りませんか。阿寒湖畔コースを下山すれば阿寒湖温泉が、オンネトーコースと雌阿寒コースを下山すれば雌阿寒(野中)温泉が待っています。
特に雌阿寒(野中)温泉を利用してみて下さい。源泉掛け流しの硫黄成分を含む温泉が、筋肉疲労した身体をケアしてくれます。そして先ほど見てきた大地の息吹、雌阿寒岳の火山活動に感謝することでしょう。
雌阿寒温泉には、日帰り入浴が可能な施設が3つあります。それぞれの施設には、個性豊かな源泉掛け流しの浴場を備えています。お気に入りの施設を自分の肌で見つけて下さい。
雌阿寒岳は比較的登りやすい山ですが、自然・眺望を大いに堪能できます。季節によっては、高山植物も楽しむことができます。登山を楽しく終えるためにも、以下の点に特に留意して下さい。
(1)活火山ですので、気象庁のホームページから最新情報を入手して下さい。
(2)ヒグマの目撃情報があるので、熊よけの鈴などを身につけて下さい。
(3)水場がないので、水分は必ず持参して下さい。
一般的な登山のルールを守り、無理のない登山計画で名峰・雌阿寒岳を満喫しましょう。
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(2024/10/9更新)
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