「恋しき」で体感する広島県府中市の優雅な文化と現代の息吹

「恋しき」で体感する広島県府中市の優雅な文化と現代の息吹

更新日:2015/06/19 11:19

村井 マヤのプロフィール写真 村井 マヤ 中国・九州文化的街並探検家
広島県府中市には、「恋しき」という魅惑的な名を持つ歴史的建築物があります。この府中は、大化の改新後に備後国府が置かれ、政治・文化の中心地として栄え、江戸時代には、石見銀山に通じる石州街道の交通の要衝として、人や物資流通の拠点的な役割も果たしました。
明治時代に旅館として開業した「恋しき」。時代の流れで現在は、町屋Cafe&Dinig恋しきをメインテナントとして再生!さあ「恋しき」で優雅なひと時を♪

明治5年創業の割烹旅館「恋しき」は府中市のシンボル

明治5年創業の割烹旅館「恋しき」は府中市のシンボル

写真:村井 マヤ

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「恋しき」という魅力的な名前がついた旅館は、明治5(1872)年に開業した「旅館土生屋」が原型。この土生屋が当時の財界人の提案で「恋しき」と改名されました。とても素敵な名前ですよね。

「恋しき」とは、何と魅惑的な名前で、明治という時代背景を考えると斬新なネーミング!
風格ある外観(写真)で、府中市を訪れる人を魅了します。
府中市の新しい町歩きの拠点「府中市地域交流センター」のすぐ隣に位置して、便利な立地でもあります。

建物は、近世宿場町の典型的切妻平入りの町家で伝統的な木造3階建ての旅館建築です。平成に入って「恋しき」は旅館としての役割を終えましたが、近世府中の社交場として数々の文化人、財界人に愛された「恋しき」は、地元の方々にとっても府中の繁栄の象徴のような存在だったのでしょう・・。そんな人々の「恋しき」への思いや復活への願いが、通じたのでしょうか?平成16(2004)年に登録有形文化財となり、文化財的価値が付加され、復活を願う人々にとって再生への後押しとなったようです。

特別なランチやディナーを優雅でノスタルジックな空間で

特別なランチやディナーを優雅でノスタルジックな空間で

写真:村井 マヤ

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「恋しき」は明治5(1872)年に開業し、石州街道を行きかう人々が宿泊して賑わいました。ここには、多くの著名人が宿泊し、周辺の人々の結婚式や特別な催しなどが行われ、由緒ある割烹旅館として府中及び近隣の人々に親しまれていました。

ここを訪れた著名人としては、犬養木道(犬養毅)、岸信介氏、福田赳夫氏などの政界人、吉川英治、福山を代表する作家井伏鱒二なども訪れました。田山花袋の作品『蒲団』には「恋しき」に宿泊した記載もあります。

平成に入って「恋しき」は、旅館としての役割を終えましたが、地元の人の心にはずっと良き思い出として存在し続けました。

2012年11月18日より「町屋Cafe&Dining 恋しき」をメインテナントとした複合商業施設として再スタートしています。ここでは、ランチからディナーまでいただくことができますよ♪

写真は、「恋しき」の東側の外観、裏門の様子です。

「町屋Cafe&Dining 恋しき」で過ごす贅沢な時間・・

「町屋Cafe&Dining 恋しき」で過ごす贅沢な時間・・

写真:村井 マヤ

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「恋しき」は、平成16(2004)年に建造物の登録有形文化財に登録されました。登録文化財に指定されているのは、主屋と離れ4棟(桔梗の間、菊の間、桐・さつきの間、竹・萩の間」の5件です。登録文化財の選定と同時に、「恋しき」再生計画がスタートされます。

平成17(2005)年、地元企業、有志の出資により「恋しき」の保存活用を目的とした会社「株式会社恋しき」が設立されました。現在3階部分は、建築構造上の問題や消防法の関係で使用しないことになりました。現在は、3階へ上がる階段部分を上手に利用して、食器などの展示スペースとしています。

会社設立後の「恋しき」の営業は、離れ部分をテナントの喫茶店スペース、懐石料理屋として、また主屋1階を直営の土産物屋や蕎麦処として利用していましたが、「恋しき」再生より5年後の平成24(2012)年、「株式会社恋しき」は、営業形態の見直しをおこない主屋を再改修して、新たに飲食業者と賃貸契約を結びました。それが「町屋Cafe&Dining 恋しき」です。主屋をフル活用して素敵な時間を提供してくれます。

お部屋から望む内庭の風景に癒され、時間の許す限りランチや、カフェタイム、ディナーを楽しむことができます。特別な記念日にご利用になっても良いのでは♪

名物「府中ロール」!風雅なお部屋で頂く絶品スイーツ♡

名物「府中ロール」!風雅なお部屋で頂く絶品スイーツ♡

写真:村井 マヤ

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「町屋Cafe&Dining 恋しき」では、ランチ後14時から、カフェタイムとしてのご利用が可能です♡
府中市観光に歩き疲れて、ほっと一息するのもよし、「府中焼き」の食べ歩きの途中に立ち寄ってもよし、素敵なお庭を見ながらのんびり散策したり、素敵な「恋しき」の館内を歩いて昔の賑やかだった老舗旅館に思いを馳せてもよろしいのでは。
何気ない食器や空間の一部、「ものづくりのまち」府中の技術が発揮されているテーブルに至るまで、府中の歴史と現代の府中の息吹も感じさせてくれます。

写真のように内庭の風が感じられる素敵なお部屋で、お土産としても販売されている「府中ロール」を食べてみては・・。ふわふわっとした食感が忘れられない絶品スイーツですよ♡

結婚披露宴も行える2階の大広間!

結婚披露宴も行える2階の大広間!

写真:村井 マヤ

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「恋しき」は、旧街道の北に面しており、間口約18m、奥行約7.2m、一部3階建ての増改築された部分があります。「恋しき」は、時代に応じて増改築を繰り返しています。5棟の離れが囲むように大正7年築庭された見事な回遊式庭園があります。庭園の見学は自由にできます。

府中市観光案内所は、庭園入口の門を入ってすぐの所にある「竹・萩の間」「菊の間」を府中市観光協会が借り、平成24(2012)年にオープンした府中市の観光情報基地です。府中市観光の際には、是非ご利用になって下さい。

「恋しき」の第2次改修によって、館内は靴を履いたまま利用できるようになりました。ほとんどの部屋が和室だったため、廊下との段差がありましたが、改修により床材を敷き詰めることで段差もなくなりました。

写真は、2階の大広間の様子です。初代「恋しき」でも行われていた結婚披露宴を、現在の「恋しき」の2階で催すことができます。格式ある「恋しき」での結婚の宴は生涯忘れえないものとなるでしょう。詳しくは、下記MEMOをご覧下さい。

重ねられた歴史と柔軟なリノベーション

「恋しき」を訪問した方が出会えるのは、何気なく置かれていたり、佇んでいる見過ごしそうな小さな歴史的価値のあるものたち。
登録有形文化財の範囲で、可能な限りリノベーションされてきた建物も、重ねられた歴史を感じさせてくれます。

後世に残すために、文化財でありながら素敵に再生を重ね、上手に活用されている「恋しき」は、登録有形文化財の保存活用法の1つのあり方でしょう。

また、観光客の方にとっても、魅惑的な空間で過ごすひと時は、至極の時になるのではないでしょうか・・。
石州街道を行き来した旅人気分で、府中の町を「恋しき」を堪能して下さいね。

◆参考文献:『中国総研・地域再発見BOOKS(2)よみがえる建築遺産』(公益社団法人中国地方総合研究センター)

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/06/01 訪問

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