提供元:遠藤隆尚
地図を見るニャチャン市街から国道1号線を1キロメートルほど北上し、人気の温泉リゾート「タップバー温泉」の道中にある「ポーナガール遺跡(Po Nagar)」は、かつてチャンパ王国を築いたチャム族が建設した遺跡群です。
小高い丘の上にそびえ立つ遺跡群は、チャム族の神話に出てくる女神ポーナガールを祀る祭壇として、8世紀頃から建設が始まったとされています。世界遺産「ミーソン聖域」を始めとするチャンパ王国の数多くの遺跡が歴史の中に忘れ去られていったのに対し、ここポーナガール遺跡は今なお人々の信仰を集める非常に珍しい「生きた遺跡」です。
入り口でチケットを購入し、ゲートをくぐりぬけて園内に入ってみましょう。
最初に目に入るのは丘の袂、本殿のちょうど真下に設えられた、赤レンガの柱が印象的な多柱殿です。かつては24本の柱に木造の船形屋根が乗っていたといわれています。今では屋根もなく柱も14本しか残っていませんが、ポーナガール遺跡の中でも最も古いといわれている多柱殿は、その歴史の重みが存在感となり見る者を圧倒させます。
多柱殿のわきの階段から丘の上へと登りましょう。
そこに現れるのは、手前から南副祠堂、南東副祠堂、主祠堂を含む5つの遺跡です。10世紀〜13世紀に渡って建設された遺跡は損傷が激く、現在も修復が進められています。
ひときわ大きく多柱殿から直線上にあたる主祠堂を参拝しましょう。
まずは入り口の破風に注目してください。艷やかに踊るシヴァ神の妻、ウマー像(パールヴァティー)が見られます。少しややこしいのですが、女神ポーナガールはヒンドゥー教のシヴァ神の妻であるウマー神と同一視されています。これもまた、土着の神々や崇拝様式を吸収しながら形成されていった、ヒンドゥー教ならではの特徴です。
靴を脱いで主祠堂の内部へと足を進めましょう。
線香の香りと煙で満たされた薄暗い室内には、ヒンドゥー教における女性器の象徴を意味するヨニの台座の上に、ウマー神と女神ポーナガールを一体化した、御本尊が安置されています。お顔は黒く金色の衣装と冠を纏った御本尊は、ヒンドゥー教というよりもベトナムの中華系の寺院に安置されていそうな出で立ちです。実は御本尊の頭部は破損してしまったため、ベトナム的な頭部を置いているのだそうです。このような頭部や衣装の「ベトナム化」によって、結果的に女神ポーナガールの信仰が守られ続けてきたのでしょう。とはいえ衣装の中にはウマー神の特徴ともいえる、10本の手が隠されています。
ウマー神の側に飾られた一対の木彫のゾウ(象)も見ておきましょう。
長年線香の煙を浴びてきたせいか黒い石のようにも見えるゾウの木彫は、7世紀以前ごろから9世紀のチャンパ王国時代のもので、現存する最古のものだともいわれています。
*祠堂内部は土足厳禁です。
主祠堂裏手に回ってみましょう。
ちょっとした広場に休憩所や売店、そしてとても小さな博物館があります。
展示数は非常に少ないですが、ハヌマーンやガネーシャなどの象も安置されています。小さな帽子のようなものを頭にちょこん、と乗せた神像はどことなく愛嬌があり、かわらいらしくもあります。
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地図を見る広場へと目を移してみましょう。
音楽隊に踊り子さんがダンスや工芸品の制作風景を披露しています。青空の下、ベトナムの民族衣装アオザイや、チャム族の民族衣装と思わえる出で立ちの人々が華やかに踊る風景が、赤レンガの遺跡群に色を添えています。
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地図を見るベトナムの宗教の歴史が垣間見れるポーナガール遺跡。規模は小さいですが、ニャチャンを訪れた際には是非立ち寄ってみてください。
また、ニャチャンはビーチリゾート以外にも、ベトナム国内でも有名な泥温泉「タップバー温泉」や、ビーチサイドで飲めるクラフトビールの生が人気の「ルイジアナ・ブリューハウス」など、楽しみ方も千差万別。数あるベトナムの観光スポットの中でも、イチオシ!です。
■ポーナガール遺跡(Po Nagar)
住所:Thap Po Na Gar, Nha Trang
アクセス:ニャチャン市街より国道1号線を北上、ソムボン橋を渡って左手。橋付近から遺跡を確認できます。ダム市場より徒歩20〜30分程度。
■ニャチャンへのアクセス
ホーチミンより:列車で約9時間、バスで約10時間
ホイアンより:バスで約12時間
ダナンより:バスで約13時間
フエより:バスで約15時間
*ホーチミン-ニャチャンの寝台列車は非常に人気があります。特に週末に移動する場合は、早めの予約をお薦めします。
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