アートを見るナラ!奈良県立美術館「田中一光 美の軌跡」モダンから日本の伝統美を味わい尽くす!

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アートを見るナラ!奈良県立美術館「田中一光 美の軌跡」モダンから日本の伝統美を味わい尽くす!

アートを見るナラ!奈良県立美術館「田中一光 美の軌跡」モダンから日本の伝統美を味わい尽くす!

更新日:2015/07/02 19:31

いずみ ゆかのプロフィール写真 いずみ ゆか ライター

無印良品のアートディレクターとしても知られる世界的グラフィックデザイナー、田中一光氏。
LOFTのロゴや東京五輪の競技マークデザイン等で作品を目にした事があるのでは?
実は幼少から興福寺を遊び場に、春日大社の雅楽や薪能と触れ合って育った奈良市出身者。奈良県立美術館では、2015年7月20日まで「田中一光 美の軌跡」が開催中です。モダンな作品の根底にある日本の伝統美を古都奈良の地で味わいませんか?

第1展示室【舞台】代表作のひとつ「産経観世能」シリーズは必見!

第1展示室【舞台】代表作のひとつ「産経観世能」シリーズは必見!

写真:いずみ ゆか

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紫綬褒章や文化功労者表彰を受賞し、「世界のタナカ」と呼ばれるほど、20世紀の日本グラフィックデザイン界を代表する巨匠・田中一光氏。

出生の地にある奈良県立美術館は、氏の作品を多数所蔵しており、田中一光展の開催は今回が3回目です。

中でも今回の最大の見どころは、一光氏が幼少期から親しんだ能・舞台・書・茶道といった日本の伝統的美術が創作の原典にある事に迫り、作品テーマと関連する伝統美術品を合わせて展示している点。

「奈良の伝統、日本美術の伝統を一光デザインが受け継いで、現代デザインとして表現された日本の美的感覚をこの奈良の地で是非、ご覧になって下さい」
と話すのは担当学芸員の深谷聡さん。

古都奈良であえてアート!実は、そこに本展覧会の魅力があるのです。

第1展示室では、一光氏が美術の道へ進む事を決意した旧制中学時代のエピソードや青年期に多大な影響を受けた二人の芸術家(画家の吉原治良、デザイナーの早川良雄)の紹介と共に「舞台」をキーワードにした展示。

特に、一光氏が約30年に渡って手掛けた「産経観世能」公演ポスターは必見!同列展示されている能面(小面)や装束と見比べると、伝統をどのように現代アートとして昇華し、表現したか良く分かります。
大和猿楽四座で知られる奈良は、能と縁が深い地でもあるので見逃せない作品ばかりです。

第2展示室【花】・第3展示室【田中一光エピソード】タイトル不明!?

第2展示室【花】・第3展示室【田中一光エピソード】タイトル不明!?

写真:いずみ ゆか

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日本の伝統美術各分野でモチーフとして多用されてきた植物。特に「花」を一光氏はどのようにとらえていたのか第2展示室へ向かいましょう。

面白いのは、写真の二作品。
成田空港第2ターミナル到着ロビーを飾る壁画の原画で、海外から日本に来た方をお迎えするために制作された作品です。展示解説には「ぼたん」と「あやめ」と書かれていますが、良く見ると作品下に”タイトル不明”の文字が。
一体どういう事でしょうか?

写真左は、展示解説に「あやめ」とありますが、しかし作品のルーツは、かの有名な尾形光琳「燕子花(かきつばた)」。
写真右に関しては、一光氏は、『この絵はボタンという題になっているが、けっして牡丹ではない。芍薬でもない。椿かもしれない。ただ、一輪の大輪に咲き誇る花が描きたかったまでのことである。』と書き残してるそうです。でも実際は、江戸時代の園芸図鑑「本草図譜」の椿がモチーフ。

なんとも”あいまい”ではありますが、一つの花のモチーフが私達に様々な情感を与えてくれて、実に日本的でもありますね。

著書も多い一光氏は、印象深い言葉をたくさん残しています。
本展覧会は、展示解説で一光氏の”言葉”を多く紹介している点が特徴。特に第3展示室で、様々な言葉からエピソードを知る事が出来ます。

第4展示室【文字】田中一光オリジナル書体”光朝体”&墨戯

第4展示室【文字】田中一光オリジナル書体”光朝体”&墨戯

写真:いずみ ゆか

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『文字をどれだけ使いこなせるかで、デザインの何パーセントかが決定する』

という一光氏の言葉からも分かるように、グラフィックデザインの様々な要素の中で、氏が特に探究し続けたのが「文字」。

その探究心と情熱は、”田中一光明朝体”とも呼ばれるオリジナル書体「光朝」を生み出したほど。
”強さと品格”という相反する二面性を兼ね備えたデザインとして、写植メーカー協力のもと生まれました。現代でも使用されている書体なので、日常で目にした事があるのでは?

また一光氏は、幼少期に書道を習い、賞を取るほどの腕前であったそうです。ごまかしのきかない、一度きりの実直な筆跡を作品にも取り入れています。

写真の「墨戯」シリーズは、シルクスクリーンの幾何学なパーツに墨で大胆な手書きの筆触を組み合わせた作品。解説の「情報伝達という文字の機能と真逆の発想」という言葉に思わず頷けます。
先ほどの深谷さんによると「一光さんの手の跡が残る作品」なのだとか。

日本の伝統産業である墨作りは、奈良の興福寺と関係が深く、現在も奈良は墨の主要産地。また奈良筆で知られるように、筆作りも盛んな地です。
もしかすると「墨戯」創作は、一光氏が奈良出身だった事も関係してるのでは?と想像するのも楽しいかもしれません。

第5展示室【日本のデザイン】日本の美は琳派だ!

第5展示室【日本のデザイン】日本の美は琳派だ!

写真:いずみ ゆか

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2015年、「琳派400年記念祭」で盛り上がりをみせている京都。一光氏は京都市立美術専門学校(現・京都市立芸術大学)を卒業しており、氏の作品は、琳派に大きな影響を受けていると言われています。

実際に『日本の美は琳派だ』という言葉を残しているほど。
是非、琳派との関係を直接的に示す作品「JAPAN」(写真参照)を現地でご覧になってみて下さい。

また、同じ第4展示室の作品「Ikko Tanaka at Cooper Union」に代表される、一光氏のポスターやグラフィックアートに繰り返し現れる”雲のような、煙のようなもやもやした形態”にご注目を。
これは、尾形光琳(琳派)の「紅白梅図屏風」の川面をイメージさせる事でよく知られています。

「原典と似ているようで似ていない”あいまいな形”、これは作品の隣に展示している洛中洛外図の金雲の切れ間にある町並みや市井の人々のイメージにも重なり、一光さんは”あいまいな形”そのものに”日本のかたち”として美を見出していたのではないでしょうか」(深谷さん)。
 
■ギャラリートークは7月4日・18日(いずれも土曜日)、午後2時から予定されています。

第6展示室【顔】〜デザイナーの個性〜。浮世絵にも通じる特徴的な顔

第6展示室【顔】〜デザイナーの個性〜。浮世絵にも通じる特徴的な顔

提供元:提供:奈良県立美術館  © Ikko Tanaka1981/Iicen…

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丸・三角・四角の幾何学形態で構成された「顔」は、公演ポスターやアメリカの大学で日本を紹介する際に制作されたもの。
浮世絵にも通じる部分があり、日本文化の代表として「顔」を登場させ、一瞬で人の眼を奪う効果を狙ったようです。

写真は、代表作の「Nihon Buyo」。(田中一光「Nihon Buyo」©Ikko Tanaka/1981 licensed by DNPartcom 奈良県立美術館蔵)
これには、面白いエピソードがあり、一度別の案で夜の9時に完成したと思ったら、休憩中に一光氏が色紙を切り出してパタパタと並べ出し、一瞬の発想でこの作品になったそうです。
同じ第6展示室には、一光氏の「写楽二百年」という作品と写楽の浮世絵が展示されていますが、役者の一瞬のしぐさや個性を捉え、デフォルメして表現した写楽と似通った部分も感じられますね。
(一光氏は、写楽の”人を見る視線”に魅力を感じ、写楽のイメージを一度分解し、再構築したとのこと)

田中一光氏の目線で奈良を楽しもう!一光氏ゆかりのお店「魚万」さんも!

本展覧会を楽しんだら、日本の伝統美術が集結している街といっても過言では無い奈良を散策しに出かけてみませんか?

奈良国立博物館や寺社仏閣、古美術店を巡れば、あなたも一光氏の様に、伝統的な日本美術の神髄に触れることが出来るかもしれません!

実は、奈良市もちいどの商店街には一光氏のお母さんのご実家である「魚万」さんがあります。この展覧会中は、店内で一光氏が魚万さんに送った作品を展示しているので、是非、併せて訪れてみて下さい。

日本の伝統美術を新旧で楽しめる奈良!たまには、こんなアートな奈良もいかがですか?

●「田中一光 美の軌跡」に関する詳細は、MEMO欄の公式HPでご確認下さい。
※一部展示室のみ、全体撮影は可能。一般観覧者の方は、作品の個別撮影は出来ませんのでご注意下さい。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/06/13 訪問

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