太古から続く生命の営み「世界遺産・白神山地」の見えざる価値を求めて

太古から続く生命の営み「世界遺産・白神山地」の見えざる価値を求めて

更新日:2015/07/09 10:24

青森県と秋田県にまたがる白神山地は、世界最大級のブナの原生林が広がる世界自然遺産です。その歴史は古く縄文時代あたりに誕生したといわれています。豊かなブナの森は動植物のみならず、人々の生活と文化に欠かすことのできない恵みをもたらしてきました。

世界遺産の専門機関から「かつて北日本を覆っていたブナ林の最後で最良の遺物」と評されるほどの高い評価を受けている、白神山地のすばらしい価値に迫ってみましょう。

「白神山地ビジターセンター」で世界遺産の価値を学ぼう

「白神山地ビジターセンター」で世界遺産の価値を学ぼう
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青森県南西部と秋田県北西部の県境にまたがる、標高200メートルから1,250メートルの低地帯から山地帯に位置する白神山地は、13万ヘクタールの世界最大級・東アジアでは1番大きく豊かなブナの原生林が広がる森です。自然災害や人などの影響をほとんど受けずに成長した森は、500種もの植物、97種類もの鳥類など多種多様な動植物が生息・自生し、貴重な生態系が保たれています。

さっそく白神山地を訪ねたいところですが、ここはまず「白神山地ビジターセンター」で基礎知識を身につけておきましょう。何も情報がないと白神山地の単なるトレッキングとなってしまい、自然に隠された価値を見逃してしまうかもしれません。「白神山地ビジターセンター」は青森県側の西目屋と秋田県側の藤里、そして白神山地の中でも有名な十二湖の側にありますので、旅程計画に合わせて選ぶとよいでしょう。

*ビジターセンターの詳細は、関連MEMOの「白神山地世界遺産センター」「白神山地ビジターセンター(西目屋館)」「十二湖info」をそれぞれ参照してください。

多彩なルートが整備されている白神山地の森の路

多彩なルートが整備されている白神山地の森の路

提供元:遠藤隆尚

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世界自然遺産・白神山地の核心地域(生物多様性を保全する一番重要な区域)は、現在でも林道もトレッキングルートも建物もなく、人の立ち入りも制限された動植物の聖域となっています。核心地域にあった27の指定ルートは自然環境の保全から歩道整備は行われず、道標や案内板もありません。したがってかなりの登山上級者でないと非常に危険だと言われています。

登山上級者でないと白神山地に行けない、ということはありません。
核心地域より外側の周辺(緩衝地帯)では、暗門の滝歩道や十二湖散策コース、マザーツリーなどの30分から4時間程度の散策コースや、白神岳登山道蟶山コースなど5時間から8時間の本格的な登山ルートなどが整備され、入山手続きなどの届出もなく訪れられます。

*大雨や台風などで一部通行止めになっている場合があります。ビジターセンターで直前の情報を確認してから訪れるとよいでしょう。
*散策・登山コースの詳細は関連MEMO「白神山地ビジターセンター(西目屋館)」の「コース案内」を参照してください。
*核心地域への入山について詳細は、関連MEMOの「白神山地世界遺産センター」の「白神山地への入山について」を参照してください。

白神山地の自然遺産の価値は「ブナ」そして「原生林」

白神山地の自然遺産の価値は「ブナ」そして「原生林」
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いよいよ白神山地に足を踏み入れてみましょう。
緑深く木々が生い茂り、日中でも薄暗く木漏れ日がスポットライトのようにも見えます。足元はやわらかくふかふかの腐葉土が敷き詰められ、ともすれば雨の次の日はぬかるみとなって私達の足を絡めとります。冷たくひんやりとした空気は、マイナスイオンと天然の木の香りをともない、私達を心安らかに癒やしのひとときを与えてくれるはずです。

この自然豊かな森の世界遺産としての価値は、ブナそして原生林がキーワードです。

北半球のみ12種類生息し、日本に分布する2種のブナは日本固有種と、実は世界的に見ても貴重な植物といえるブナ。そしてブナは自然の生態系のみならず、私達人間にとっても大きな役割を果たしてきました。ブナの実は栄養価が高く、多くの動植物がブナを中心として生態系を築きます。また天然の貯水機能としても優れ、大量の雪や雨を貯めこみつつ温度が上がれば葉から水蒸気を発し、恵みの雨をもたらすという循環作用をもたらしました。「大きなブナの木1本で、田んぼ1枚まかなえる」と言い伝えられてきたブナは、縄文時代から稲作などの農耕に収穫・狩猟など、人々の暮らしにも大きく貢献してきたのです。

そしてもう1つのキーワードが原生林です。
人の影響をほとんど受けていない原生林は、ブナのみならず世界で減少傾向にあります。多くの森は木材や炭などとして伐採され、人工林や二次林へと姿を変えてしまいました。しかし白神山地では、地形の複雑さや集落から遠く離れていたこともあり、これら人為的災害から免れてきたのです。そして白神山地のブナ林は実に8000年もの長い間、自然災害からも免れてきました。ブナ林が生育を始めた時期は温暖期で、北半球に広く分布していました。氷期に入り寒くなるとブナ林もまた南下をしますが、ヨーロッパや北アメリカの多くは大陸氷河に覆われたためブナ林は減少してしまいましたが、日本は氷河に覆われることなく残ったのです。

豊かな森の豊かな生態系。ブナの森にしかいない「フジミドリシジミ」

豊かな森の豊かな生態系。ブナの森にしかいない「フジミドリシジミ」

提供元:遠藤隆尚

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確認されているだけでも約500種類の植物が生息する豊かな森、白神山地。当然そこにはたくさんの哺乳類や鳥類、昆虫に両生類、爬虫類が生息しています。絶滅危惧種で天然記念物のクマゲラやイヌワシ、ニホンカモシカにモモンガやニホンザルなど、日本を代表する動物も少なくはありません。

白神山地を訪れたら探してみたいのが「フジミドリシジミ」です。日本全国に生息するシジミ蝶の中でも、この「フジミドリシジミ」は羽の表側が特に青く光沢がある小さな蝶で、幼虫がブナの葉しか食べられないので、ブナ林以外では見られません。森のなかをひらひらと飛び回る小さな蝶は、ここでしか見られない幻の蝶なのかもしれませんよ!

*写真の蝶はアサギマダラです。

天然のマイナスイオンをたくさん浴びてリフレッシュ!

いかがでしょうか?
世界遺産・白神山地の価値を学んだら、今年の夏はぜひ白神山地に訪れてみてください。
太古から続く森の息遣いが天然のマイナスイオンとなって、癒やしとリフレッシュをもたらしてくれる、最高の夏休みが待っていますよ!

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/08/09 訪問

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