写真:Hiroko Oji
地図を見るイギリス湖水地方の中心地となるのはウィンダミア(Windermere)の町。鉄道やバスでのアクセスが便利で、宿泊施設も多く、美しい石造りの町並みでも人気がある所です。そのウィンダミアから路線バスに乗ること15分でアンブルサイド(Ambleside)に到着します。
アンブルサイドはウィンダミア湖北岸の町。通り沿いに石造りの建物が並び、お花で溢れる町並みが美しい所で、バカンスを楽しむ人で溢れています。ワーズワースが「文学芸術の題材の宝庫」と詩に書いたほど!湖畔沿いの風景を始め、トレッキングも楽しめ、川沿いの風景に心癒されるものがあります。中でも、17世紀に造られた切石造りの小さな小さな家が橋の上に建ち、ナショナル・トラストのショップが入る一軒家「ブリッジ・ハウス」が観光客を集めています。
写真:Hiroko Oji
地図を見るひっそりと緑の中に佇むのはグラスミア(Grasmere)湖。その湖畔にワーズワースが最も愛したグラスミアの村があり、村の南側には彼が住んでいたダヴ・コテージ(Dove Cottage)が建っています。
村の中央にはグラスミア湖から流れ出した川が流れ、川に架かる橋の袂にはオズワルド教会が静かに建っています。この教会にはワーズワースと妻のメアリーや妹のドロシーが眠る広い墓地があります。敷地内のイチイの木は彼が植えたもので、緑豊かな庭園のようになっており、静けさに包まれて散策するのにピッタリ。村外れには長閑な田園風景が広がります。
写真:Hiroko Oji
地図を見るアンブルサイドとグラスミアの間、勾配のきつい坂道の上にあるのが、ライダル・マウント(Rydal Mount)。1813年、ワーズワースが家族と共にこの地にやってきて、亡くなるまでの37年間を過ごしたお屋敷です。彼が自らデザインしたという広大な庭は風景を楽しむための工夫が盛りだくさんの庭園。散策路が設けられ、途中には屋根付きの東屋もあり、時折ライダル湖も見え隠れしています。風情ある見事な庭を散策するだけでも来てよかったと思えることでしょう。
庭に囲まれて建つ家の中には、彼の遺品や肖像画、彼自ら描いた絵画などが置かれ、テラスからの眺めは見事なもの。お天気が良い日の眺めも良いのですが、雨が降ってしっとりした風景もまた乙なものです。ワーズワースの著名な詩の多くはここで改訂され、代表作『水仙』が生まれたのは、この場所だったのです。
写真:Hiroko Oji
地図を見るグラスミア村の南側にあるダヴ・コテージは、おそらく17世紀初期に建てられたものと推測され、18世紀後半にはダヴ・アンド・オリーヴという旅籠として利用されていたもの。この白塗りの壁や石畳の床といった特徴の建物は、1799年から1808年の間、ワーズワースが妹ドロシーと共に過ごしたお屋敷です。この間に、彼の最盛期の作品が書かれ、後に一級重要文化財に指定されました。現在、彼のトランクやパスポートなどをはじめ、調度品や他の所有物、肖像画など、数多くの遺品が展示される博物館として一般公開されています。
裏庭は、彼が地元で調達した植物や素材で造り上げたもので、彼自身が"敷地内にある小さな丘"と言ったように、ほとんど自然の状態に保たれています。裏庭から丘に上っていくと、緑に囲まれた周辺の風景を見渡せ、ここで心穏やかに作品を作り続けたワーズワースの姿に出会えそうな気がしてきます。
写真:Hiroko Oji
地図を見るワーズワースゆかりの地として、もう一つ忘れてならないのが、ホークスヘッド(Hawkshead)村に残るワーズワース・グラマー・スクール。1585年、ヨーク大司教が開校したものです。
ワーズワースは、1779〜1787年までの9年間、ここに通ったのです。当時は男子学生のみで、月曜から土曜日の朝7:00〜夕方17:00まで、昼休みは2時間もあったとか。内容は数学、ラテン語、ギリシャ語。その頃、飲み水としての水が衛生的によくなかったため、ビールを飲んでいたというのも興味をそそられます。今じゃ考えられないことですね。また、木の机にカッターで傷をつけて落書きするのもおとがめなし!何とも言えずほのぼのした気持ちにさせてくれます。実際、ワーズワースと彼の弟ジョンが彫った落書きも残されていますよ。
1階に当時の教室風景が残されており、2階部分が博物館になっています
豊かな自然が育てたワーズワースの世界!長閑な田園風景の中で育まれる人間性と才能は、現代でも大切に守っていきたいものです。世知辛い今の時代こそ、もう一度原点にたちかえって、人間本来の素晴らしさを実感できたらいいですね。
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(2024/11/7更新)
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