1100年以上の歴史を持つ祇園祭。主役である33基の山鉾は「鉾」と「山」の2種類に分類されます。ご紹介する岩戸山が組み立てられる場所は、京都市下京区新町通仏光寺下ル。岩戸山は文字通り「山」。車を持つ曳山です。組み立てていく木には、写真のように接合する場所がわかるようにきちんと文字が書かれています。ずっと使い続けられてきた部材は年季を感じさせます。
山鉾には釘は一切使われていません。理由は釘の穴や鉄の錆が原因で木材が傷んでしまうから。長く使い続けられるよう、街中を順行できるよう、大切に保存され、組み立てられてきたのです。写真のように凸凹によって木と木を接合する仕組み。男衆が縄で部材を引き上げながら手を添えて組み上げていきます。
釘を使わず、縄で強く結ぶことでしっかりとした骨組みを作る。これも山鉾の特徴です。1基あたりに用いる縄は約5キログラム。「縄がらみ」と呼ばれる伝統的な手法が用いられます。動かしたときの衝撃や鉾の歪みをうまく吸収することができるそうです。緩みが出ないように結ぶのもなかなかの力仕事です。
機能性を追求しながらも、縄の回し方、結び方の美しいこと! 鉾を組み立てる男衆のこだわり、美意識が現れるところでもあります。岩戸山に使われているのは比較的新しそうな縄なので、木の部材とは異なり、時々新品に交換しているのかもしれません。
こうして組み立てられた鉾の重さは約10〜12トン。屋根までの高さは約8mで、屋根の上に飾られている木の先端までが約25mです。岩戸山には背の高い真松(松の木)が取りつけられますが、
祇園祭の山鉾33基のうち、屋根の上の鉾頭に装飾があるのは長刀鉾、函谷鉾、鶏鉾、月鉾、菊水鉾、放下鉾、船鉾の7基。お稚児さんが乗るのは長刀鉾です。
組み立てられた鉾にはさまざまな装飾が施されていきます。岩戸山の屋根裏には金地著彩草花図、下水引には鳳凰瑞華彩雲岩に波文様紋織(平成15年復元新調)、二番水引は緋羅紗地宝相華文様刺繍、三番水引は紺金地雲三ツ巴五瓜唐花文様綴織(共に平成17年復元新調)、前懸は玉取獅子図中国絨毯、胴懸は唐草文様インド絨毯という具合に美しい絨毯がかけられていくのです。
これらとは別に、旧前懸として17世紀李朝製で描絵玉取獅子、鳳凰、虎、鶴文様の朝鮮毛綴のものも保存されています。見送は日月龍唐子嬉遊図の綴織(一部刺繍)です。
山鉾の装飾の中でひと際目を惹くのが絨毯には、ペルシア絨毯やベルギー絨毯、インド更紗など、エスニックな異国のものが使用されています。それはまるで美術館で眺める絵のよう。シルクロードを通ってもたらされた物たちが装飾品として使われる祇園祭。実は、日本古来の手法で組み立てられる祇園祭の山鉾は国際色豊かなアートでもあるのです。
美術品でもある懸装品は、それぞれの鉾町が大切に保存し続けています。実は、実際に山鉾に装飾されるのはレプリカで、本物は保存会の建物で展示されています。
岩戸山は天照大御神がお隠れになった天岩戸に由来する物語を持つ山鉾です。室町時代に狩野永徳が描いた「洛中格外屏風」にも描かれています。とても古い山鉾ですが、装飾品である水引きなどは新調されています。コンコンチキチン、コンチキチン♪ 前祭から後祭まで、期間が長くなった祇園祭。街中にゆったりと佇む山鉾を一つ一つ観賞して過ごす。とても贅沢な時間です。
世界中から観光客を集める祇園祭。平成26年から前祭(さきまつり)と後祭(あとまつり)の2コースに分かれました。これが祇園祭の本来の姿。ご紹介した鉾の組み立て鑑賞では、それぞれの町の高揚感を味わうことができます。
祇園祭は、クライマックスの巡行だけでなく、鉾町を訪ね歩き、鉾の組み立てから鉾町自慢の美術品の鑑賞まで、たっぷり時間をかけて楽しむ価値があるお祭りです。ちなみに、後祭10基の山鉾は、17日午後から21日にかけて建てられます。
祇園祭の日程
■前祭 宵山 7月14日〜16日 巡行 17日 午前9時〜
■後祭 宵山 7月21日〜23日 巡行 24日 午前9時30分〜
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