日本百名山「宮之浦岳」トレッキングと自然遺産ハイライト!

日本百名山「宮之浦岳」トレッキングと自然遺産ハイライト!

更新日:2015/07/29 10:41

鹿児島県の大隅半島の佐多岬から、南南西に約60キロメートルの海上に位置する「屋久島」。周囲130キロメートルの小さな島は、九州地方最高峰の宮之浦岳をはじめとして、1,000〜1,900メートル級の山々が連なる、登山者憧れの洋上のアルプスです。

日本百名山に名を連ねる宮之浦岳のトレッキングルートから、世界遺産にも登録された屋久島の美しい自然の魅力をハイライトでご紹介します!

苔むすもののけ姫の森「白谷雲水峡」

苔むすもののけ姫の森「白谷雲水峡」

提供元:遠藤隆尚

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宮之浦岳山頂を目指すトレッキングルートの入り口のひとつが、標高620メートル、白谷川の上流に位置する「白谷雲水峡」です。その名よりも映画「もののけ姫」の森として一躍有名になった場所、といった方が分かりやすいかもしれません。

「白谷雲水峡」は照葉樹林から針葉樹林への移行帯に位置しているので、照葉樹林帯を代表するイスノキ、ウラジロガシ、タブノキに、針葉樹林を代表するスギ、ツガ、モミなど実にさまざまな植物が見られるとても美しい森です。それらの森に加えてビロードのように敷き詰められた苔の絨毯やカーテンを舞台に、そして花崗岩の隙間をぬって流れる透明度の高く澄んだ川と滝を音楽に、ヤクシカやヤクシマザルに昆虫やカエルなどの爬虫類のたわむれる様子が見られます。

苔むす森はもちろん、標高1,050メートルに位置する太鼓岩、そして辻峠からトロッコ道側に少し下るとみられる辻の岩屋など、映画「もののけ姫」のモロー族の住処のモデルになったといわれる場所に、推定樹齢3000年の弥生杉、奉行杉、七本杉等なども見られる「白谷雲水峡」は、日帰りのトレッキングルートとしても人気があります。

*白谷雲水峡は自然遺産の登録範囲外です。
*晴れていれば太鼓岩から宮之浦岳を含む屋久島の山々を望めます。

「トロッコ道」は枕木に注意!

「トロッコ道」は枕木に注意!

提供元:遠藤隆尚

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白谷雲水峡に別れを告げて、辻峠から大林歩道をゆるやかに下ること約1時間。荒川登山口からのルートと合流する楠川分かれに到着です。ここから大株歩道入口までは、かつて伐採した屋久杉を麓まで運んでいたトロッコの路線跡である「トロッコ道」を歩きます。

大正12年から昭和44年まで運行していたトロッコですが、現在は登山道を維持するために必要な物資の輸送や、けが人、急患などの運搬のために時折走る姿を目にすることができます。トロッコ道は整備されているのでとても歩きやすいのですが、枕木は雨に濡れていると滑りやすいので注意が必要です。美しい川と湧き水で喉を潤しながら、小杉谷山荘跡、推定樹齢500年の三代杉や仁王杉などを眺めてさらに森の奥へと歩を進めましょう。

*トロッコ道は自然遺産の登録範囲外です。

世界自然遺産の森へ!有名な屋久杉を見に行こう

世界自然遺産の森へ!有名な屋久杉を見に行こう

提供元:屋久島 エコツアー ガイド YNAC

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トロッコ道の終点、大株歩道入口に到着します。歩きやすいトロッコ道とお別れし、急峻な山道がはじまりとなりますが、さまざまな屋久杉が見られるポイントでもあります。

大株歩道入口から歩いて約30分、翁杉(推定樹齢2000年)に到着です。残念ながら翁杉は2010年9月10日に幹折れにより倒木していますが、周辺に散らばる幹や枝からも、かつての勇姿が目に浮かびあがってきます。さらに翁杉から歩くこと約5分、ハートマークで有名な、ウィルソン株に到着です。畳10畳程もある切り株内部の右端に座り空を見上げれば、木々の緑で染め上げられたハートが見られます。

その先約45分で大王杉(樹齢3000年)が現れます。縄文杉が発見される前までは最大の屋久杉と見られていたため、大王の名が付いているのだそうです。さらに歩を進めると、ようやく世界遺産エリアに入ることを伝える看板が出てきます。今までも素晴らしい自然にあふれていましたが、実はここからようやく世界自然遺産「屋久島」なのです。

世界遺産エリアを示す看板のすぐそばに立つ、どちらか一方の脇枝が相手の幹に食い込んで、手をつないでいるように見えることからその名がついた、夫婦杉(樹齢2000年位)から約30分。この登山ルートのメインイベントともいえる縄文杉に到着です。樹齢は2000〜7200年とも言われ、生まれは縄文時代または幹が縄文土器に似ているなど、その名に諸説のある縄文杉。圧倒的な存在感と、溢れ出る生命のパワーが感じられるはずです。

ごつごつ岩場に笹原の海!「宮之浦岳山頂付近」は知床の情景?!

ごつごつ岩場に笹原の海!「宮之浦岳山頂付近」は知床の情景?!
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新高塚小屋で1泊したら、早朝から宮之浦岳山頂を目指します。標高が高くなるにつれ、周囲の景色も変化していきます。屋久杉は見えなくなり、次第に低木の木々が目立つようになってきます。山の中なのに砂浜のような美しい白い砂利石が敷き詰められた登山道を抜けると、ヤクシマダケの笹原が広がる標高1,700メートル世界に入ってきます。

坊主岩、平石岩屋などの巨石や奇岩を眺め焼野三叉路をすぎれば、九州最高峰、標高1,936mの宮之浦岳山頂に到着です。屋久島の自然は、海抜0メートルの海岸線から標高1,936mの宮之浦岳山頂まで、標高があがるごとに植生が変化し、実に北海道から九州までをもカバーしていると言われています。山頂に到着したらここに至るまでの森の景色が刻々と変わっていったことを思い出してみてください。それもまた、世界自然遺産「屋久島」の価値なのです。

日本最南端の湿原「花之江河」は幽玄の世界

日本最南端の湿原「花之江河」は幽玄の世界
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宮之浦岳山頂から栗生岳を抜け、翁岳や安房岳、黒味岳などを横目に時にやさしく、時に厳しくもほぼ垂直といって良いほどの岩のかべをロープで下りながら山を下ります。

日本最南端の高層湿原、標高1,630メートルに位置する花之江河(はなのえごう)と小花之江河(こはなのえごう)に到着です。枯存木(こそんぼく)といわれる、白く立ち枯れした木々に囲まえれた泥炭層の湿原では、ヤクシマホシクサやコケスミレなどの可憐な植物に、ミズゴケやスギゴケなどが一面を被って、侘び寂びの趣きのある情景を作り上げています。また天気がよければ標高1,831メートルの黒味岳も見られます。

ここから淀川小屋までは勾配もきつく今までの疲れもあることから、厳しい行程となるので、さらに慎重に歩きましょう。約5〜6時間で淀川小屋に到着です。淀川を流れる冷たい清流で、足の疲れと火照りを取ればもうひと頑張り。そこから約1時間で、1泊2日の宮之浦岳トレッキングの終点、淀川登山口に到着です。

日本百名山の「宮之浦岳」は大満足のトレッキングルート!

白谷雲水峡からトロッコ道を歩き、縄文杉をはじめとする屋久杉の森を抜け新高塚小屋にて1泊。翌日は宮之浦岳山頂を目指し、花之江河から淀川登山口へ下山する1泊2日のルートの中から、見どころをご紹介しました。そのほかにも宮之浦岳付近には、日帰りも含めた多彩なルートがあります。ご自分の経験と体力などから適切なルートを選択して、自然遺産、そして日本百名山の宮之浦岳のトレッキングを楽しんで下さい!

掲載内容は執筆時点のものです。 2012/07/12−2012/07/13 訪問

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