仏像が目的とはいえ、境内に入ったらまずは本堂へ参りましょう。こちらの本堂は落雷や戦火のために焼失しており、現在は慶長8(1603)年に豊臣秀頼が再建を指図し、その2年後の慶長10(1605)年に完成した建物です。
寄棟造り。ずらりと並ぶ釣り灯籠は勿論寄進された物です。凝った彫刻は特に見られませんが、鮮やかな極彩色の施された姿に桃山建築らしさを感じます。
本堂の右手には護摩堂があります。桃山時代の僧堂様式が残された貴重な建築で、本尊・不動明王を中心にして右に降三世(ごうざんぜ)明王、金剛夜叉明王。左に軍荼利(ぐんだり)明王、大威徳明王が並び、五大明王の形式をとっています。
右隣の降三世明王は過去・現在・未来の三つの世界を収める神であり、ヒンドゥー教の最高神とその妃を踏みつける姿が異彩を放っています。その隣、金剛夜叉明王は悪を呑み尽くす神で「戦勝祈願の仏」としても有名です。正面の顔は5つの目を持ち、五鈷杵と金剛鈴、弓矢、宝剣と宝輪を手にしています。
左隣の軍荼利明王は外敵から仏教信者を守る役割を担っているとされ、手足に多くの蛇を巻きつけているのが特徴です。その隣、大威徳明王は神の使いである水牛にまたがっている姿が特徴で、こちらも戦勝祈願の仏です。
本来、明王とは密教によって生まれた仏敵と戦う像ですが、それぞれ個性を持った姿で面白いです。
境内のひときわ高い場所に建立されているのが大師堂です。この中では、真言宗の宗祖である弘法大師が祀られています。すなわち、弘法大師像がこちらで拝めます。
また、堂内には西国三十三か所の砂を安置しており、笈摺(おいずる、巡礼の際に着用する衣)を身に着けて、一踏み三礼しながらお参りすれば、西国三十三か所観音巡礼をしたことに等しい功徳を得られるとされています。
本堂から階段を下りて右。本尊は、司妙(しみょう)・司録(しろく)の両脇侍を従えたあの閻魔大王です。地獄界と飢餓界の王であり、よく知られているように冥土の裁判官でもあります。
色彩鮮やかな建物の最も奥で、厳めしい表情をしながら参拝者を凝視しており、心を見透かされているような心地になります。こちらも見逃せません。
最後は閻魔堂から東、本堂から階段を下りて左にある五百羅漢堂です。お堂自体は平成9(1997)年建立の新しいものですが、五百羅漢像は「親兄弟の 顔がみたくば 中山寺の 五百らかんの 堂にござる」と古歌に詠まれるほど知られた存在のようです。
開創1400年記念事業の一環で造られた堂内には、釈迦如来を本尊として、その弟子である羅漢像700体以上を祀り、如来の説法を聴聞するような姿で再現しています。天井には金剛界五仏と釈迦如来の曼荼羅が、床には蓮華の陶板が敷かれ、異彩を放っています。
五大明王像、弘法大師像、閻魔大王像、釈迦如来像に五百羅漢像…。
中山寺は素人目でも個性の感じられる仏像が比較的近くで見られ、これが魅力です。双眼鏡があるとなお良いでしょう。知識が無くても面白いはずですが、知識を入れることでなお感慨深くなるはずです。
中山寺から奥深い仏像の世界を開いてみてはいかがでしょうか。
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(2024/10/13更新)
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