「鳥獣人物戯画」は「高山寺」に伝わる紙本墨絵の絵巻物。現在の構成は、甲・乙・丙・丁の全4巻から成り、動物や人物を戯画的に描き、内容は描かれた当時の世相を反映しています。特にウサギやカエル、サルなどが水遊びや相撲などの遊戯、法要や喧嘩をしている場面を描いた甲巻は有名で、一部の場面には現在の漫画に用いる手法も見られることなどから、「日本最古の漫画」と称されています。
甲乙巻が平安時代後期、丙丁巻は鎌倉時代の制作と考えられていますが、誰が何の目的で描いたのか、いつの時代に、どうやって高山寺に伝えられたのかも分かっていません。分からないことだらけ、謎多き絵巻、というところがまた魅力の「鳥獣人物戯画」です。
現在は甲丙巻が東京国立博物館、乙丁巻が京都国立博物館に寄託保管されていますが、高山寺ではその模本を見ることができるほか、小さなレプリカの絵巻や鳥獣戯画のTシャツや皿、湯飲みなどのグッズを購入することもできますよ♪
平成6年に世界文化遺産に登録された、栂尾山(とがのをさん)「高山寺」は、創建は奈良時代に遡るとも言われていますが、鎌倉時代に明恵(みょうえ)上人によって再建されました。「鳥獣人物戯画」の他にも、「明恵上人樹上座禅像」「仏眼仏母像」などの国宝・重要文化財、約一万点が収蔵されています。
お父さんお母さん世代の人なら、デュークエイセスの唄「女ひとり」の歌詞の中にも高山寺が登場しているのをご存知かもしれませんね。
女がひとりで訪ねるには寂しすぎるほど、森閑とした高山寺ですが、この辺りは川端康成の小説「古都」の舞台にもなっており、山口百恵の最後の映画『古都』のロケ地にもなりました。北山杉の産地でもあるこの辺り、国道162号(周山街道)沿いの集落では秋から冬にかけて北山杉の丸太磨きが見られます。
駐車場やJRバス「栂尾」停留所のある国道162号(周山街道)から裏参道を上がると、まず見えてくるのが国宝「石水院」です。
明恵上人が後鳥羽院から学問所として賜った建物で、鎌倉時代当時の唯一の遺構です。明恵上人の遺訓に、「阿留辺幾夜宇和(あるべきようわ)」の7文字があるのですが、これは人間日常の簡短にして深奥なる教えです。この厳しく合理的な精神が「石水院」によく表れていて、簡素な中に優美さがあり、とても機能的な構造をもっています。
住宅建築の傑作と言われるだけあって、まさに「生活の知恵の結晶」です。
可愛らしい「善財童子像」が石水院から庭を眺めるように収められているのですが、ここから見る庭は深い山の借景もあり、現実から隔絶されたように神秘的で、苔むした木々の間から今にもシカやイノシシが顔を出しそうな気がします。ウサギやカエルが庭で相撲をとっていてもおかしくない、とさえ思えてきますよ♪
古くから明恵上人は茶祖、栂尾山は茶の発祥地と言われています。ここ高山寺には、栄西禅師が中国より茶種を持ち帰り、明恵上人が植えたという「日本最古の茶園」があるんですよ♪
京都では「宇治」が茶の産地として有名ですが、宇治の茶はここ栂尾の茶を移し植えられたものです。鎌倉時代、室町時代を通して、栂尾は茶の本園、その茶は本茶と言われ、天皇への献茶も毎年行われてきました。宇治の茶業家は古くから、新茶を明恵上人の廟前にお供えすることを、今でも続けているそうです。
静けさと豊かな自然に囲まれた栂尾(とがのを)の地に位置する「高山寺」は、「もしかしたら、あの幻想的な『鳥獣戯画』はここで生まれたのかも‥‥」と思ってしまうほど、現実から隔絶されたような神秘的な場所です。
また「高山寺」は、紅葉の名所としても大変有名で、市街地からバスで40分ほど北西に行った山間部にあり、洛中とは全く違った顔の京都を見せてくれます。清滝川沿いのこの辺りは、紅葉の時期はもちろん、春は桜、夏は濃い緑と渓谷美を楽しむことができます。都会の雑踏を離れ、ゆっくり散策してみてはいかがですか!?
そして参拝や散策の後は、清滝川沿いの茶屋などに立ち寄り、絶好のロケーションで山川の幸や甘味を楽しむのもおすすめです♪
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