写真:沢木 慎太郎
地図を見るタイの純白寺院「ワットロンクン(Wat Rong Khun)」があるのは、タイ北部のチェンラーイ。“タイの京都”と呼ばれるチェンマイよりも、さらに北東へ約200キロメートル離れた街がチェンラーイです。バンコクから直接チェンラーイに行くよりも、チェンマイに滞在して黄金に輝く寺院「ドイ・ステープ」などの寺院観光を楽しみ、“チェンマイの郊外オプションツアー”の一つとして訪ねるのが良いでしょう。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るチェンマイ市街地の北東にアーケードバスターミナル(第2バスターミナル)があり、ここからチェンラーイ行きの長距離バスが出ています(所要時間は約3時間)。早く安く行くには長距離バスがおすすめ。
「ワットロンクン」は、チェンラーイ市街地の約14キロメートル手前にあり、チェンラーイ直行のバスであっても、あらかじめ運転手さんに「ワットロンクンで降りたい」と伝えれば途中でバスから降ろしてもらえます(運転手さんが忘れていなければ)。チェンラーイはタイ最北の県都で、チェンラーイの第1バスターミナルからも「ワットロンクン」行きのバスが出ています(約20分)。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るこちらが、さきほどからご紹介しているタイの純白寺院「ワットロンクン」。別名、ホワイトテンプル(White Temple)。寺院にはいちめんに微妙に色が異なるキラキラした銀色のガラスタイルがはめこまれ、光の角度によってさまざまな光を放ち、美しく神秘的な世界観を構築しています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る写真は、「ワットロンクン」の本堂を真横から見た風景。タイで一般的に見られる寺院や仏像は黄金の輝きがありますが、「黄金」は人々を喜ばせた結果の色で、「輝き」は迷いを除いて願いをかなえるという意味があるかららです。しかし、真夏に降った雪のように純白に輝く寺院が「ワットロンクン」。このため、別名「ホワイト・テンプル」(白龍寺)と呼ばれています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る実は「ワット・ロンクン」は、現代的なアートを取り入れた新しい寺院。1997年から建てられている寺院で歴史が浅く、仏教画家でヴィジュアルアーティストのチャルムチャイ・コーシッピパットさんがデザイン。タイの伝統的な芸術・文化を取り入れつつ、“既成の枠組みに対する破壊(シュールレアリズム)”が「ワット・ロンクン」に込めれたメッセージ。因習にとらわれない仏教寺院は、見る者を圧倒させる強烈なパワーを秘めています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る「ワットロンクン」は、タイ全土でもここでしか見られない壮麗で、美しすぎる純白の寺院。この白さは、仏教の開祖ブッダの清浄さ、宇宙をくまなく照らす光をイメージしています。「真の光」(仏の光)は、まったく影を作らない。宇宙いっぱいに広がり、すべての人々に平等に降りそそぐ。“奈良の大仏さま”で知られる東大寺の「華厳経(けごんきょう)」の教えに通じる仏教観が、タイの純白寺院「ワットロンクン」にも見られます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るそれでは、純白寺院「ワットロンクン」の見どころをご紹介しましょう。「ワットロンクン」はそれほど大きくない寺院ですが、美しい西洋式の庭園や池が取り囲み、まるで雪の風紋のよう。オシャレな西洋風の宮殿のような格調高い寺院です。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る庭園をぐるりと回り、こちらは「ワットロンクン」を正面から見た写真。入り口には二対の悪魔の化身が立ちはだかっています。冒頭でもご紹介しましたが、巨大な太刀を振りあげ、訪れる者の首をはねるような、おどろおどしい殺気。まるで「風神」「雷神」の像のよう。これは、“死と闇”を支配するヒンドゥー教の魔神。ここは、天国へ進むための門です。
ところで、この寺院の手前にあるものは何だかおわかりでしょうか?こちらを、ズームアップしてみると……。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る純白の寺院「ワット・ロンクン」。その最大の見どころは、無数に伸びる手、手、手。「ワット・ロンクン」の本堂に行くには、寺院正面に“輪廻転生の橋”があり、「血の池」地獄をイメージした池があります。池の中からは、救いを求めて虚空をつかむ手が。これは、成仏できずに、さまよい続ける魂。金銭や物欲、色欲に憑りつかれ、地獄に落ちた人々の苦しみ、うめき声です。この前に立つと、そのおぞましさに足がすくんでしまうことでしょう。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る「血の池地獄」の上を一本の道が通り、これが“輪廻転生の橋”。仏教の世界観を織り込んだ橋をまっすぐ進むと、「ワット・ロンクン」の本堂(写真奥の建物)に突き当たります。地獄から、神聖な世界へと進んでいく様子は、魂のレベルを上げて浄土に行こうとする姿をイメージ。地獄から天国へと昇天していく姿。抑制のきかない欲望から解脱し、ブッダの教えを学び、心を静めて無心になることを伝えようとしています。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るおぞましいのは無数の手だけではありません。「天国への門」に至る“輪廻転生の橋”のまわりには、苦悶に満ち、鬼のような形相をした顔、顔、顔。苦しそうに顔をゆがめる者。目玉が飛び出すくらいに恐怖におののいている者。口や目から奇怪な生き物が飛び出している彫刻も。地獄の苦しみにのたうちまわる人間の姿。ぞっと背筋が凍り、体温が一気に下がります。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る目をむき、鼻から牛乳を噴き出したような凄まじい顔。恐怖と不安におののいた悲痛な表情に、胸がかきむしらされそうになります。これは、タイ版の「ムンクの叫び」。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る巨大な木の根っこが炎のように地表を覆い、人間や動物の頭が植物に飲み込まれるかのように並べられています。口や目からも、木の根が突き出し、なんともおぞましく不気味な光景。まさしく、“生き地獄”。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る苦しみだけでなく、苦難を乗り越えた者を受け入れてくれる優しい観音さまの姿もあります。不気味で、おぞましい彫刻であっても、暴力的なものを感じないところが不思議。それは細かいガラスの装飾の一つひとつにまで気を配り、仏の心を宿した作品だからなのでしょう。
不安と苦しみ。愛と死がもたらす感情をデフォルメされた独特のタッチで描いた絵画「叫び」。人間の弱さ、悲しみ、寂しさ。心にひそむ情感を、静謐なタッチで描き出しているムンクの絵にも通じる世界観。“地獄を見た者でないとわからない美しさ”を描き出す、白き微笑。それが、どこにも見られないタイの純白寺院「ワットロンクン」の魅力であり、美しさです。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る最後のご紹介は、「黄金のトイレ」。この黄金は「身体」を表し、金銭欲や物欲、色欲など煩悩を意味しています。寺院の純白は「心」で、身体の欲望にとらわれない精神性を表現しています。
「ワット・ロンクン」は現在も建築中で、塔や庵などを含めて9つの建物を建設する予定ですが、完成予定は実質的に未定。というのも、本堂の壁画(寺院内部は撮影禁止)にはバッドマンやスーパーマン、プレデター、マトリックス、さらにはウルトラマン、ドラえもん、悟空、セーラームーンなども描かれ、その芸術魂は尽きることがないからです。
人間の一生は苦しみであり、それは永遠に続く輪廻の中で終わりのない苦しみであり、苦しみから抜け出すことが解脱。ブッダは、そう説きました。しかし、執着心にとらわれてはいつまでも苦しいまま。地獄から抜け出すには、執着という悪魔の化身と戦い、それに勝利した者だけに天国への白い扉が開かれているのでしょう。
まさに異彩を放つ純白寺院「ワットロンクン」。これほどまでに華麗で美しい寺院でありながら入場料が無料というのも驚き(任意で募金を受け付け)です。“北方の薔薇”と言われる古都チェンマイに行かれたら、一足伸ばして、壮麗で美しい純白の寺院「ワット・ロンクン」を訪ねてみてはいかがでしょうか?
なお、チェンマイの見どころについては別途、記事にまとめていますので、ご興味のある方は関連MEMOに貼り付けたリンクからのぞいてみて下さい。
この記事の関連MEMO
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(2023/12/5更新)
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