写真:藤谷 愛
地図を見る北朝鮮にキム親子の巨大彫刻があるように、ハンガリーにも「レーニン」や「マルクス」など、社会主義国家のヒーロー達の巨像がいたるところに鎮座していました。しかし、1989年に国家が崩壊を始めると、それらの像は破壊される代わりに、ここ「メメント・パーク(Memento Park)」に集められたのです。現在、42の彫像の他、スパイ活動の歴史など、興味深い展示を多数見ることができます。
写真は「スターリンのブーツ」と呼ばれる、メメント・パークの巨像群の一つで、かつてはブダペストの人気観光地、英雄広場に隣接する「56年革命広場」にありました。1956年、社会主義体制に対して蜂起した民衆によって切り倒されたのですが、元は8メートルもあった巨大像。民衆の怒りも想像に難くありません。
写真:藤谷 愛
地図を見るかつてはブダ側のヴェールメゾ公園にあった記念碑。クン・ベラは第一次世界大戦時にソビエトの捕虜となり、共産主義の影響を受けた政治家。釈放後、1919年にハンガリー革命を起こし政権をとったものの、長くは続かず、亡命先のソビエトでスターリンの粛清にあって処刑されました。スターリン政権後、名誉を回復し、彼の記念碑もブダペストの公園に建てられることになったのです。
クン・ベラ像の下にいるたくさんの人たちは、左側のブルジョワ階級から次第に国家の兵士へと変貌を遂げていきます。「人民を理想の共産主義へ導く指導者、クン・ベラ」といった構図の記念碑となっています。
写真:藤谷 愛
地図を見るメメント・パークで一番印象の残る像といえば、写真の「ハンガリー評議会共和国記念碑」。勢いよくタオルを持って走るおじさんのように見えますが、これも共産主義のプロパガンダの一つなのです。
前述のクン・ベラを中心とするハンガリー共産党が実権を握った1919年に、20世紀初頭を代表するハンガリーの芸術家、ロバート・ベレーニによって描かれたプロパガンダポスターをベースにして作られた作品です。
「共産主義の実現の為に、国を守る兵隊(=英雄)になろう!」と赤い旗をもって入隊を呼び掛ける人民を表現しています。
大きさもかなりのもので、この像の股下には160センチ程度の身長の観光客が同じポーズでスッポリと収まるくらいの大きさです。こちらも元は「56年革命広場」に設置されていました。
写真:藤谷 愛
地図を見る1957年から1991年まで旧東ドイツで生産された「段ボールで作られた自動車」とも言われている遺物「トラバント」がメメント・パークには展示されています。
1957年にソ連が打ち上げた人工衛星「スプートニク(「仲間」という意味)」は、社会主義国家の科学技術力を世界に示す宣伝材料となりました。旧東ドイツでは同じ年にザクセンリンク社が新型自動車を生産し、スプートニクをドイツ語訳した「トラバント」をそのまま商品名にしました。しかし、デザイン性も技術力も自動車に関してはアメリカのレベルを下回り、車体も軽量だった為「走る段ボール」と言われてしまうことに。
現在でも本当に段ボールで作られていると勘違いしている人もいるほど、ある意味人気の自動車なのです。
実際に乗って写真を撮ることも可能なので、ぜひ試乗して乗り心地を体感してみてください。
屋内展示のミニシアターでは、スパイの生活をビデオで垣間見ることができます!
当時の社会主義国家では隣人が隣人を見張る、という恐ろしい監視システムがあったのですが、それ以外に、スパイが隠しカメラや暗号を駆使して行う諜報活動も当然ながらありました。ここで放映されるフィルムは実際に秘密警察の研修で用いられたもので、映画の007に比べると地味な感じの諜報活動ですが、盗聴装置の隠し方やスパイのリクルート方法など興味深い内容です。ハンガリー語の放映ですが、英語の字幕が付きます。
いかがでしたか?ちょっと笑ってしまいそうな遺物も集まるメメント・パークですが、ハンガリーでは自由の素晴らしさを学ぶため、小学生も社会見学でも訪れる場です。
外国人旅行客には物珍しさでいっぱいの施設ですが、お土産ショップのグッズも共産主義のカラーが色濃く出たものがたくさんあり、当時のポスターのコピーや、ソ連のパスポートのレプリカまで販売されています。
旅ネタにもなり、社会主義国家を疑似体験するにも興味深いメメント・パーク、ぜひ訪れてみてくださいね。
【アクセス】
地下鉄1,2,3番線の交差駅Deak Ferenc ter(デアーク・フェレンツ・テール、省略してデアーク・テールとも呼ばれます)の広場バス停から往復直行バスが運行。バス停には「Memento Park」という時刻表示があり、ブダペストの観光バス「Hop-on, Hop-off」の停留所の隣になります。
11:00デアーク広場発、11:30メメント・パーク着
13:00メメント・パーク発、13:30デアーク広場着
料金などの詳細は記事下の【MEMO】にある公式サイト(英語)で確認のこと。
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この記事を書いたナビゲーター
藤谷 愛
初めまして!ビンテージ食器、古い建物、美味しいものが大好きな多業種運営者です。事業の一つ「ケレシュ雑貨部 」で扱うビンテージ雑貨の買い付けで訪れる国の美味しいものや観光スポットについて書いています。ま…
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