バラと野草に満ちた東京屈指の花の楽園「神代植物公園」へ!

バラと野草に満ちた東京屈指の花の楽園「神代植物公園」へ!

更新日:2015/09/01 11:19

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
昭和36年の開園以来、今でもなお都内最大級の規模を誇る神代植物公園。都会からやや離れた閑静な調布の町の一角に位置し、在りし日の武蔵野の景観を髣髴とさせる森林と水景に囲まれる中、四季を通じて季節の花が咲きます。ボタン・シャクヤク園にウメ園、ツツジ園、水生植物園のスイレンやミソハギなども人気ですが、特に定評あるのが春と秋に見頃を迎えるバラ園。サンクンガーデン内で約1万株のバラが花開く様は圧巻です。

シンメトリーの英国式バラ園で、優雅なひとときを

シンメトリーの英国式バラ園で、優雅なひとときを

写真:鷹野 圭

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公園の南西側に位置するバラ園は、春から初夏にかけてが見頃のピーク! 1輪だけでも抜群の存在感を誇る大輪咲きから、小さな花を無数に咲かせるつるバラまで、暖色系から寒色系まで大小さまざまなバラが一面に咲き乱れる様は、神代植物公園の象徴といえます。花数はやや減りますが、秋(9〜10月)も見頃。また写真は8月初頭に撮影したものですが、こういった夏真っ盛りでも花が絶えることはありません。むしろ真夏ならではの深緑とのコントラストをお楽しみいただけることでしょう。なお、バラ園は中央に向かって標高の低くなったサンクンガーデン(沈床式庭園)となっており、高台からは一面のバラ畑を眼下に見渡すことができます。中央には噴水があり、定期的に噴き上がる水しぶきとバラのコラボレーションは最高です。

バラ園を訪れたらもう一つチェックしていただきたいのが、隣接する大温室。熱帯系の植物を多数展示していますが、中でも世界中から集められたスイレンが見所。日頃公園などでよく見かけるパステル調のピンクや白のものとは全く違う、濃いブルーの花などは初めて見た時には驚かされることでしょう。

神代植物公園の“水景”を巡ろう

神代植物公園の“水景”を巡ろう

写真:鷹野 圭

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神代植物公園は季節の花が美しいスポットですが、延々とお花畑だけが広がっているわけではありません。大きな樹木が立ち並ぶ雑木林(春先は野生ラン、夏場はヤブミョウガがきれいです)の中を園路が通り、山野草園では一見ただの草原のような丘に貴重な山野草が数多く見られます。秋の七草、キキョウやカワラナデシコ、オミナエシなども花を咲かせ、大いに楽しませてくれることでしょう。そしてもう一つ見逃せないのが、園内に池や水路があり、さまざまな水景を楽しめること。スイレンやハスの花に、初見時には目を疑うほど大きな葉をつけるパラグアイオニバスの群落(期間限定で、体重20キロ未満の子どものみ葉の上に乗ることができるイベントも催されます)。夏から秋にかけて数多くのトンボが舞い、まれにカワセミが訪れることもあります。

湿地帯のような自然の緑あふれる景観をお求めなら、深大寺門から出て歩いていける分園 水生植物園に行ってみましょう(写真参照)。雑木林に囲まれた谷戸空間の中に池あり、小川あり、ヨシ原あり、水田ありと多様な水場環境が見られます。目玉は、夏場に花を咲かせるミソハギの大群落(中央のピンク色の花です)。潤いに満ちた水景に“彩り”がアクセントとして加わり、気持ちよく散策を楽しめます。その他にも春にはハナショウブ、夏にはハスやハンゲショウ、晩秋には首を垂れる稲穂などが見所です。

分園その2「植物多様性センター」で、東京の植物の豊かさを知ろう

分園その2「植物多様性センター」で、東京の植物の豊かさを知ろう

写真:鷹野 圭

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水生植物園とはちょうど反対側に位置する第二の分園『植物多様性センター』は、本園のような華やかな植物を見せるためではなく、地元すなわち東京都の植物環境を紹介するスポットとして2012年4月にオープンしました。花壇のような華やかさはありませんが、身近にありふれたものから最近あまり見かけなくなったものまで、東京都内に生えている野草がここに一挙終結! 「実は身近なところに、これだけたくさんの植物が生えている」ということを私たちに教えるための場所といえるでしょう。生物多様性や在来種(日本または地域に元から生息している生きもの。外来種の反対)という言葉が一般的になってきた近年の日本においては、特に注目すべきスポットといえるかもしれません。

この分園は3つのゾーンに分かれています。雑木林と草地や水辺を軸に内陸部の在りし日の自然環境を再現した『武蔵野ゾーン』、標高の高い山肌ならではの岩場のある環境に珍しい山野草が生える『奥多摩ゾーン』、火山地帯の荒れた環境でなお力強く生きる植物たちの姿を見られる『伊豆諸島ゾーン』と、特色のあるゾーニングがなされています。一般に東京の自然環境というと武蔵野の里山景観などをイメージされる方が多いようですが、こうして一通りセンターを巡ってみると、同じ都の中で随分色々な環境があるのだなと驚かされることでしょう。

ちなみに写真は、夏場に見頃を迎えるレンゲショウマ。山岳域を好む山野草で、ここのものはもちろん植栽された株ですが、実は東京都でも御岳山に大きな群生地があります。このように東京都内であれば小笠原であろうが奥多摩であろうが文字通り“多様”な植物を集めて展示していますので、ここを一周巡るだけでも東京の植物環境や現状が面白いようによくわかります。東京に在住されている方にこそ、自分の暮らす場所の“緑”を知ってもらうためにぜひ一度は訪れていただきたいところですね。

植物が多彩だからこそ、生きものの数も多い!

植物が多彩だからこそ、生きものの数も多い!

写真:鷹野 圭

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本園といい分園といい、植物の種類や数がこれだけ多いわけですから、当然それを糧とする昆虫や鳥の数も多くなってきます。東京・武蔵野の原風景を再現した公園だけあって、今は少なくなったものの元々東京に暮らしていたチョウやトンボが多く見られるのも、神代植物公園ならではの魅力。植物と一緒に観察してみるといいでしょう。どんな環境にどういった生きものが暮らすのか? 鳥の好む実は? 虫を呼ぶ花は? などなど、散策している内に自然と東京の生態系について詳しくなってしまうかも!

写真のトンボはミヤマアカネ。丘陵地や秩父などの山岳地帯に多いトンボで、23区内で見かけることはあまりないかもしれません。アカネという名前の通り、秋頃になると身体が赤く変色します。よく見るアキアカネなどとは、翅の先の方に帯があることで見分けられます。この他、スイレンやハスのある池ではシオカラトンボやイトトンボの仲間が、雑木林の中には暗がりを好むハグロトンボなどが暮らしています。また、本園や水生植物園の池はカワセミの出没するスポット。訪問した際にはよ〜くチェックしてみましょう。

お昼はやっぱり「深大寺そば」で!

お昼はやっぱり「深大寺そば」で!

写真:鷹野 圭

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公園に隣接する深大寺(しんだいじ)は、建立から約1300年とも伝えられる歴史ある寺社。その歴史の長さは、東京都では浅草寺に次いで2番目です。このお寺に隣接するようにして周辺には和の情緒あふれる街並が広がり、公園の「深大寺門」から一歩外に出ると、そこは東京都とは思えない異色の空間……タイムスリップしたかのような錯覚を起こすかもしれません。外国人観光客も多く、年間を通じて非常に栄えた空間でありながら、どこか落ち着ける癒しスポット。傍らに水路の流れる純和風の街並と、木々に囲まれた潤い溢れる環境が深い安らぎをもたらしてくれているのかもしれません。

ここの名物は何といっても深大寺そば。豊かな水を用いて地元で育てられた蕎麦粉を使用しており、歯触りの良さと香りの良さから全国的にも高い人気を誇ります。公園の深大寺門から出てすぐのところにも蕎麦屋が並んでおり、屋外席もありますので、夏は深緑、秋は紅葉に囲まれながらお食事を楽しめることでしょう。

余談ですが、水生植物園の一角に蕎麦を育てている畑があります。その他にも地元の子どもたちが育てる蕎麦などが見られる場所もあり、地域をあげて蕎麦で街を盛り立てていこうとしているのがよくわかります。食前・食後どちらでも、ぜひ一度チェックしてみてくださいね。

都内唯一の植物公園に、さあ出かけましょう!

東京都内で「植物公園」と謳っているのは、実はここだけ!
バラやボタンといった園芸種で花の可憐なものから、自然の野山に生える山野草、水際を彩る注水植物、たっぷりと葉を茂らせた雑木林……東京都内の植物景観のほぼすべてがここにあるといっても過言ではないでしょう。花好きの方はもちろんのこと、自然散策や森林浴をしたい方、植生について勉強したい方にもピッタリ。広くて見晴らしのよい芝生広場もありますので、ご家族みんなでのピクニックにも最適です。

調布駅からバスが出ていますので、自家用車のない方でもアクセスしやすい立地。ぜひ一度足を運んでみてくださいませ。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/08/08 訪問

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