メインストリートとも言える石段街には、多くの老舗旅館やお土産店、お食事処などが軒を連ねています。その石段の真下には『黄金の湯』と呼ばれる、伊香保を代表するカルシウム・ナトリウム・硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉が絶え間なく流れており、周辺にはそんな茶褐色に濁る伊香保本線源泉を引く老舗旅館が何軒も存在しております。
その内、加水も加温もしていない、まさに『生』な温泉を掛け流している場所が数軒あります。
石段街をほぼ昇り切った突き当たり、たこ焼き、蕎麦、うどんの店『処々や・睦庵』があります。なんと、このお店で食事をすれば良質な温泉に入れるのです。
たこ焼きを注文する人は一階の此処屋、蕎麦うどんを注文する人は睦庵という店名の二〜三階へと通されます。蕎麦、うどん、ともに国産粉を使った手打ちで、季節によって変わる山の幸の天ぷらを添えた天ザルが絶品。また、伊香保焼きという名のたこ焼きも中がトロトロで美味しい。因みに睦庵ではたこ焼きも注文できます。
此処屋でもお風呂を利用させて頂けるそうですが、ここは是非二階三階の睦庵に上がるべき。『かのう屋』という旅館だった建物は、古き良き温泉旅館の面影をそのまま残しており、かつて客室だった部屋でゆっくりと休憩できます。部屋から窓の外を眺めれば伊香保の石段が真っ直ぐ一望できる素晴らしいロケーション。
温泉についてはお店の人にお風呂に入らせて頂きたいとお願いすれば快く案内して下さいます。お湯は古くから宿を営む老舗旅館しか使用する権利を持っていない黄金の湯。源泉から二軒目に引いているため鮮度も良く、その貴重な湯を加温も加水もせずにダバダバと掛け流しております。
浴槽の周りには酸化した鉄分のせいで茶色のオリ物がビッシリ。ボイラーが無いためぬるいままなのでゆっくり浸かってって下さいと女将さん。浸かればとても濃いお湯に包まれ全身から浸透して来るのが分かります。
ただし、ここは廊下の小さな張り紙に入浴できますと書いてあるだけで大々的に日帰り入浴可と謳っている訳ではありません。タオルの貸し出しや販売もしていないしアメニティーも一切ありませんので各自持参で。営業時間は午前11時から午後3時までとなりますので、早めに行きましょう。また、貸し切り風呂となりますので、先客が利用していたら待たなければなりません。
もう一軒紹介させていただきたいのは、此処から石段を少し下った右手奥にある吉田屋旅館。こちらもかなり昭和の雰囲気を残す老舗旅館です。日帰り入浴については看板も出ていませんが、宿のご主人に声を掛ければ500円で利用させて貰えます。ただしタオルなどは用意されてないので、各自持参で。
建物の脇の路地に男湯女湯、それぞれ入り口があります。なぜこんな造りかと言うと実はここのお風呂、地元の方々の共同浴場としても使われているのです。つまり入っていると地元の方が洗面器抱えて入ってくる事も。この生活に根付いた温泉というのも、普段なかなか体験できない物かと思います。
さらにお湯は伊香保本線源泉からダイレクトに引いた貴重な金泉。石段の中腹くらいで源泉温度も下がっていると思いきや、浴槽が狭いため加温せずとも丁度よい湯加減です。
浴槽奥の木戸の中では、源泉がダバダバと滝のように流れ落ちています。このお湯も睦庵に負けず劣らず加水加温循環濾過無しの素晴らしいお湯です。
石段街周辺には巨大で豪華な老舗旅館も多く、同じように『黄金の湯』を堪能出来ます。対して今回紹介した二軒には露天も無く浴槽も狭いです。しかし、お湯の濃さや鮮度で言えばトップクラスで、伊香保本来の湯を堪能出来る貴重なお風呂です。
伊香保は桜やツツジ、カエデなどが多く植えられており、さらに夏は涼しく冬は鉄分の豊富なお湯の保温効果でとても温まるので、四季を通してお勧めできる温泉街と言えます。
都心からも近い人気の観光スポットなので訪れる観光客も多いのですが、以上のような穴場スポットを巡れば、新たな伊香保の魅力に触れる事ができますでしょう。
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