写真:まつり はるこ
地図を見るその昔、新庄市周辺では養鶏が盛んだった時期があり、鶏のモツ煮込みなどが日常的に食べられていました。中華そばに鶏モツをのせてみたら意外と美味い!……この自然すぎる成り行きが名物「とりもつラーメン」の始まりとされています。
お店によって特徴はありますが、鶏ガラベースの醤油スープに、細くて白いストレート麺が基本です。ラーメン自体は昔ながらの中華そばで、各店に共通して入っている具はネギのみと、いたってシンプル。その上にたっぷりと鶏モツがのっています。
写真は、地元人気ナンバー1「末広」の一品。末広では、とりもつラーメンのことを「スタミナラーメン」と呼んでいます。人気の秘訣は、この澄みきった黄金色のスープ。アッサリしているのに他店にはない独特のコクがあり、肝心の鶏モツもレバーからキンカンまでさまざまな部位が楽しめます。
写真:まつり はるこ
地図を見る来客時「ラーメンでも食っていがっせ」「ラーメン取っから食べで行け」とお客様を引き留める――これは新庄市に限らず、山形県全域でお昼時に家主と来客の間で繰り広げられる光景です。そう、ラーメンが大好きな山形県の人にとっては、お客様にラーメンをふるまうことが心からのおもてなしなのです。
そのためラーメンの出前も非常に盛んで、各家庭や職場ごとに「ウチはここ!」というお店が必ず決まっているほど。そんな“ラーメン出前シーン”で人気を誇るのが、新庄市役所の目の前にある「一心亭」です。市の中心部にありメニューも豊富なため、職場からの出前の注文も少なくありません。
そんな一心亭のとりもつラーメンがこちら。青ネギとわかめの青味でキリリと締まった印象です。丁寧に下処理された鶏モツは1つ1つが小さ目にカットされているので、「あまりデカいモツはちょっと苦手」という方におすすめです。
写真:まつり はるこ
地図を見る山形県のご当地ラーメンといえば、夏の風物詩「冷しラーメン」が有名です。また、ラーメンではありませんが、さくらんぼの名産地として知られる河北町谷地が発祥の「冷たい肉そば」も根強い人気。東北でありながら暑い土地柄が、冷たい麺文化を育んだといえるでしょう。
新庄市にはもともと、冷しらーめんが食べられるお店はほとんどありませんでしたが、近年では一心亭にて「冷たいぶっかけもつ」が年間を通して提供されています。そばつゆベースの冷たいスープに絡みやすいよう、ほんの少し太めの麺を使用。衣をつけて揚げた鶏モツがたっぷりのっています。まさに、とりもつラーメン界の変わり種。先のご紹介した温かいとりもつラーメンとは全く違う味わいなので、ぜひ両方を楽しんでみて下さい。
写真:まつり はるこ
地図を見る新庄名物とりもつラーメンは、もともと長い間、新庄を中心とした最上地方で地元の人に愛されていたラーメン。それが、山形新幹線の新庄延伸を機に“愛をとりもつラーメン”というキャッチコピーのもと、ご当地ラーメンとしてPRに一役買ったという経緯があります。なので、にわか作りの観光ご当地ラーメンのような派手さは一切なく、少々素朴過ぎでは……という印象すらありますが、この味を求めて、県内外から多くの人が訪れます。
観光資源豊かな山形県にあって、驚くほど観光資源に乏しい新庄市の観光大使的な役割を担っているのが、とりもつラーメンなのです。新庄市内にはとりもつラーメン提供店が何軒かあり、店先には写真のノボリが目印として立っています。しかし、このノボリがない多くのお店でも食べられます。
ちなみに新庄市では「ラーメン屋」という感じのお店は多くありません。ほとんどの蕎麦屋、食堂でラーメンを提供しているので、フラリと入ったお店でとりもつラーメンに出会えることも。
※写真は「急行食堂」。新庄駅から徒歩すぐなので、旅行者にも利用しやすいお店です。
山形県は大きく分けて4つの地域に分かれており、それぞれに特徴的なご当地ラーメンがあることで知られています。米沢市を中心とした置賜地方には、細縮れ麺とあっさり醤油スープの「米沢ラーメン」や、全国的も知られる有名店・龍上海に代表される「赤湯ラーメン」。山形市を中心とした村山地方の「冷しラーメン」、日本海側の庄内地方では煮干しだしが効いた「酒田ラーメン」。そして県北部の新庄市を中心とした最上地方のご当地ラーメンが、今回ご紹介した「とりもつラーメン」です。
上で紹介した以外の注目店としては、とりもつラーメン発祥の店といわれる有名店「一茶庵支店」が挙げられます。(地元のネイティヴは「いっちゃあん」でも「いっさあん」でもなく、「いっちゃわん」と発音します)
「とりもつラーメン1つ、山田です」と、苗字も併せて注文するシステムに驚く人もいますが、混雑時でも注文を正確にさばくための生きた知恵だと、広い心で対応しましょう。
※山形名物「冷しラーメン」については別の記事に詳しくまとめています。記事下の関連MEMOよりリンクをご覧ください。
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(2024/12/6更新)
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