謎の楼閣?奈良県「唐古・鍵遺跡」は畿内を代表する弥生遺跡

謎の楼閣?奈良県「唐古・鍵遺跡」は畿内を代表する弥生遺跡

更新日:2015/09/04 14:30

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員
奈良県田原本町の「唐古・鍵遺跡」は畿内を代表する弥生時代の遺跡。弥生時代についての考古学研究の出発点になったといってよい重要な古代遺跡であり、しかも、そこには謎の楼閣までそなわっています。今回は畿内屈指の規模を誇る「唐古・鍵遺跡」をご紹介しましょう。

これは何!?不思議な形の楼閣を有する唐古・鍵遺跡

これは何!?不思議な形の楼閣を有する唐古・鍵遺跡

写真:乾口 達司

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唐古・鍵遺跡(からこ・かぎいせき)は、その名のとおり、田原本町の唐古および鍵地区に広がる大規模遺跡。その面積は42万平方メートルにもおよびます。発掘調査の結果、高床式の建物や竪穴式住居、貯蔵穴、井戸などの遺構のほか、土器や木製品、農工具、石器類、祭祀関連器具、銅鐸の鋳型、勾玉など、多種多様な遺物が発見されました。その多様性などから、畿内を代表する盟主的なクニの一つであったと考える向きもあります。

国道24号線を奈良市方面から南下すると、車窓の左手に写真のような建物が見えてまいります。これが唐古・鍵遺跡のシンボルである楼閣。建物自体は近年に復元されたものですが、唐古・鍵遺跡からは実は写真にあるような楼閣を描いた土器も出土しているのです。その不思議な造形からも唐古・鍵遺跡の謎めいた存在感が伝わってきませんか?

多環濠集落であったことを指し示す案内板

多環濠集落であったことを指し示す案内板

写真:乾口 達司

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写真は唐古・鍵について紹介した現地の案内板。ご覧のように、遺跡の俯瞰図が示されていますが、注目したいのは、当時の集落が自然の河川を半ば利用しながら周囲に環濠をめぐらせていたことです。発掘調査の結果、居住区域をとりかこむように幅8メートルにもおよぶ大環濠が設けられており、さらにその大環濠をかこむように何重にも環濠がめぐらされていました。集落のまわりを環濠が幾重にもとりかこんでいることからも、唐古・鍵遺跡が周辺地域でもひときわ特権的な集落であったことが推察できますよね。

弥生研究の基礎を作った唐古池

弥生研究の基礎を作った唐古池

写真:乾口 達司

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写真は唐古池。唐古池が作られたのは後世のことであり、池自体は遺跡ではありませんが、上で紹介した大環濠はちょうどこのあたりにありました。直接的な因果関係はないにしても、大環濠が、後世、溜め池に変わったというのは不思議な縁を感じさせます。

それともう一つお伝えしておきたいのは、唐古池の存在が唐古・鍵遺跡の発見に大きく寄与していること。実は、戦前、国道敷設のために唐古池の池底の調査がおこなわれました。そして、そこから出土した遺物の研究成果が弥生時代の研究の基礎を築いたのです。唐古池にそのような歴史があったこと、驚きですね。

弥生時代の遺跡に古墳!?古墳の痕跡が発見された中心地区

弥生時代の遺跡に古墳!?古墳の痕跡が発見された中心地区

写真:乾口 達司

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写真は唐古池の南方付近。弥生時代、このあたりは集落の中心地でした。興味深いのは、そこから前方後円墳の痕跡が発見されていることです。もちろん、古墳は弥生時代の後に来る古墳時代のお墓。つまり、古墳時代になると、唐古・鍵遺跡には古墳が築かれているのです。唐古・鍵遺跡では居住区域が古墳時代前期にも存在したことがわかっていますが、古墳が築かれる頃(古墳時代後期)になると、集落は縮小していきます。もしかしたら、古墳の被葬者はかつて唐古・鍵遺跡に君臨した王の末裔だったかも知れませんね。

出土品も観覧しよう!唐古・鍵考古学ミュージアム

出土品も観覧しよう!唐古・鍵考古学ミュージアム

写真:乾口 達司

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唐古・鍵遺跡から発掘された出土品は、遺跡から南に数キロメートル離れた唐古・鍵考古学ミュージアムに展示されています。せっかくなので、そちらにも足を運び、唐古・鍵遺跡についての見識を深めましょう。

写真は唐古・鍵遺跡から発見された土器の破片。土器の表面に描かれた絵画、どこかで見たと思いませんか?そう、これは1枚目の写真に写っていた楼閣の手本になった絵なのです。土器に描かれた楼閣風の建造物は重層構造となっており、竪穴式住居や高床式倉庫が多かった当時としてはきわめて珍しい建造物。唐古・鍵遺跡が繁栄していた頃、中国大陸で普及していた楼閣とよく似かよっていることから、研究者のなかには、唐古・鍵遺跡が中国大陸と深いつながりを持っていたと考える向きもあるようです。いずれにせよ、珍しい絵画土器であるため、ぜひ、ご自身の目で実物をご覧になることをお勧めします。

おわりに

唐古・鍵遺跡がいかに貴重な遺跡であるか、おわかりいただけたでしょうか。現在、遺跡の大半は田畑や住宅地に変わっていますが、現地には専用の駐車場も設けられているため、アクセスも快適。ご自身で現地におもむき、弥生人たちの日常に思いを馳せてみてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/12/07 訪問

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