立山信仰の里!厳粛な気配漂う富山県「雄山神社祈願殿」

立山信仰の里!厳粛な気配漂う富山県「雄山神社祈願殿」

更新日:2016/07/20 09:34

井伊 たびをのプロフィール写真 井伊 たびを 社寺ナビゲーター、狛犬愛好家
霊峰「立山」を神の山として祀られている富山県「雄山神社」は、立山頂上にある「峰本社」と芦峅中宮にある「祈願殿」、岩峅の「前立社壇」の三社殿から成り立っています。立山信仰の里、山麓芦峅寺に鎮座する、ここ「雄山神社祈願殿」は、樹齢約500年の杉木立に抱かれ神気に満ち厳粛な気配が漂っています。訪れる人々の心身を清浄化させるこの静寂に浸れば、昔から立山を尊んだ先人たちの信仰心に一歩近づくことができます。

大きな石鳥居は、聖なる時空への入口

大きな石鳥居は、聖なる時空への入口

写真:井伊 たびを

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こちらの神社は、日本三霊山のひとつ「立山」を神の山と仰ぐ、三社殿からなる「雄山神社」のひとつ「雄山神社祈願殿」です。社格としては、「延喜式内国幣小社」であり、鎌倉時代の「神道集」によれば、越中一の宮とされています。

鎌倉幕府、室町幕府の金沢藩主に特別な崇敬保護を受け、中宮寺塔中の衆徒社人38戸軒を列ねて、奉仕し全国に「立山の霊験」を布教したという史実があります。

総拝殿を「祈願殿」と呼び、2万余坪ある境内は、樹齢500年を超える樹林で覆われています。そしてこの樹林群は、富山県天然記念物に指定されております。

この「祈願殿」は、かつて「神仏習合」の施設であり、中宮寺(芦峅寺)と呼ばれていました。当時より、霊峰「立山連峰」への玄関口であり、芦峅寺(あしくらじ)における立山信仰の拠点でもありました。この「祈願殿」は、立山連峰の主峰「雄山」を正面に頂く位置にあり、開祖である「佐伯有頼(さえき の ありより)」は、この地で晩年を過ごしました。

清々しい参道は、樹齢500年あまりの杉木立に見守られている

清々しい参道は、樹齢500年あまりの杉木立に見守られている

写真:井伊 たびを

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樹齢500年あまりの杉木立の中の散策は清々しい。特に朝方に訪れるのがオススメです。木立の隙間からときおり、差し込んでくる朝日は、まるで高級なレースのカーテンのようで、社の厳粛さをより一層演出しています。

向かう「祈願殿」には、古来より武将や公家の信仰も篤く「ウバ様」への献上品が多く奉納されました。 周辺には宿坊や、女人救済のための行事を行なう「布橋」なども現存しています。 ここは、かつて「女人禁制の立山信仰」において、女性が立ち入る事が出来た最終地でもありました。

当時、芦峅寺の信徒は、「一山会」と呼ばれる独自の組織を作り上げていました。彼らは16世紀以降、諸国廻りを行い、立山の「縁起図」や「立山牛王紙」、そして薬草や薬紛などを配置し、翌年にその代金を受け取っていました。これが後に「越中売薬」とも呼ばれるシステムの起源だとされています。

祈願殿(拝殿)は諸祭礼、諸祈願を執り行う中心

祈願殿(拝殿)は諸祭礼、諸祈願を執り行う中心

写真:井伊 たびを

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「祈願殿」は、諸祭礼、諸祈願を執り行う中心で、江戸時代までは「芦峅大講堂」と呼ばれていた建物。こちらには、「雄山の大神」を始めとする立山全山中36社末社の神々が合祀されています。

例大祭は、毎年7月25日、26日に執り行われております。

西本殿「立山大宮」は、立山信仰の中心的社殿

西本殿「立山大宮」は、立山信仰の中心的社殿

写真:井伊 たびを

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境内奥に西本殿(立山大宮)と、東本殿(立山若宮)があります。
その西本殿「立山大宮」の御祭神は、「立山権現伊弉那岐大神(たてやまごんげんいざなぎおおかみ)」であり、相殿神として「 文武天皇(もんむてんのう)・佐伯宿祢有若公(さえきすくねありわかこう)」が、祀られております。

「立山大宮」は、立山権現麓芦峅中宮の末社で、ウバ堂と並び立山信仰の中心的社殿でありました。ところが、かつてその偉容を誇っていた本殿、大拝殿とも明治初年、山中よりの落石の災害に合い、残念ながら両殿とも破壊されました。

東本殿「立山若宮」は、映画「劒岳 点の記」の舞台

東本殿「立山若宮」は、映画「劒岳 点の記」の舞台

写真:井伊 たびを

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東本殿「立山若宮」の御祭神は、天手力雄命(あめのたじからおのみこと)・稲背入彦命(いなせいりひこのみこと)・佐伯有頼命(さえきありよりのみこと)です。

ところで、「祈願殿」の境内は、名キャメラマン木村大作の初監督映画「劒岳 点の記」(2009年公開)のロケ地でもあります。「剱岳測量隊」の出発地として使われました。

この映画をご覧になられた方は、この「立山若宮」の場面を思い出されることでしょう。この作品の主人公である・浅野忠信演じる「柴崎芳太郎」が率いる測量隊を、サポートする劒岳の山案内人・香川照之演じる「宇治長次郎」が、村人たちと登山の準備をしている緊迫したシーンがこの「立山若宮」の前で撮られました。

「雄山神社祈願殿」には、多くの摂末社がある

「雄山神社祈願殿」には、芦峅寺の産土鎮守である「神明宮」をはじめ、子育ての守り神として信仰が篤く、首から上の病気の守護神としての「宝童社」や、芦峅寺各所の水源地に祀られていた水神石堂を合祀した「水神社」、五穀豊穣・商売繁盛の神「稲荷社」、通称山神様と呼ばれ、特に山仕事に関わる人々の崇敬が篤い「神秘社」など、多くの摂末社があります。

こちらの境内に佇めば、「清々しさ」とは、こういう感じなのだ!と体感でき、「心の温泉」とでも呼べるお社です。

また、隣接する「立山博物館」は、是非立ち寄っていただきたい施設です。立山信仰に関するテーマパークとされる、この「たてはく」では「立山の成り立ち」から学べ、お子様にもお勧めできる博物館です。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/08/16 訪問

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