自然護岸が美しい横浜・いたち川沿いを歩き、四季を楽しもう

自然護岸が美しい横浜・いたち川沿いを歩き、四季を楽しもう

更新日:2015/09/26 17:28

鷹野 圭のプロフィール写真 鷹野 圭 首都圏自然ライター
かつて首都圏の川はコンクリート護岸で固められ、殺風景で見栄えのしない景観が当たり前でした。しかし近年は生物多様性への関心の高まりや心地よさの重視を反映してか、護岸部分に植物の多く生えたナチュラルな川が増えてきています。今回ご紹介する神奈川県のいたち川(鼬川)も、植物のふんだんに生えた河川敷の間を清流が流れる美しい川。積極的な多自然型護岸が評価され、2011年には土木学会デザイン賞を受賞しています。

“散歩したくなる”いたち川

“散歩したくなる”いたち川

写真:鷹野 圭

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横浜市栄区を流れるいたち川は、昭和末期に国土交通省が定める「ふるさとの川整備モデル河川」に指定され、地域の環境と調和した緑あふれる美しい河原づくりが進められてきました。ご覧の通り外側にコンクリートはあるものの、川と接する部分には自然護岸を採用。背の高いヨシが茂り、コイなどの魚が泳ぎ、サギやバンなどの水鳥が生息できる自然公園さながらの河原となりました。ちなみに写真の中央付近にアオサギが立っているのがわかりますでしょうか? サギの仲間だけでもアオサギを始め、コサギ、ゴイサギなど複数の種が暮らしています。冬場にはマガモやコガモなどが北国から渡ってきて賑わいを見せます。逆に夏場にはオニユリやミソハギなどの山野草が見られますので、散策がてら探してみるといいでしょう。

昭和時代と比べてずいぶんと水質も改善され、今では川底が透けて見えるほど美しくなったいたち川。これに緑の潤いが加わることによって、散策にピッタリの水辺環境となっています。地元の方は犬の散歩やジョギングなどに利用しているようですね。

“紅葉のトンネルをくぐる”いたち川

“紅葉のトンネルをくぐる”いたち川

写真:鷹野 圭

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植物に包まれるいたち川は、植物を通じて四季の移り変わりをハッキリと実感できるスポットでもあります。晩秋のいたち川ではサクラやモミジの葉が赤く染まり、写真のように一面朱に染まります。自然護岸とは違いますが、こうして真っ赤に染まったトンネルをくぐっていると、これまた日本の自然の美しさに魅了されます。この時期になると河原のススキやヨシからも緑が薄らいでいき、河原の姿はガラリと変貌します。

当然春にはサクラが咲き、澄んだ水や河原の新緑とのコントラストは一見の価値あり。さすがに敷物を敷くようなスペースはあまりありませんが、河原を歩きながら春の訪れを体感いただけるはずです。

炎のように鮮やかな紅か、それとも華やかなサクラの花か……。
あなたはどちらの“トンネル”がお好みですか?

“ガーデニングも美しい”いたち川

“ガーデニングも美しい”いたち川

写真:鷹野 圭

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いたち川沿いを散策していると、遊歩道に沿うように色々な花が植えられているのがわかるかと思います。これはもちろん自生しているものではなく、地域のボランティアの方が植栽・管理をしているもの。どうしても殺風景になりがちな晩秋から冬場にかけても何かしらの花を楽しめるようにと、色々な工夫が凝らされており、遊歩道のよいアクセントとなっています。

一番見頃なのは、やはり晩春から夏にかけてでしょう。シラン(紫蘭)に始まり、バラが咲き、アザミやギボウシ、キキョウやオミナエシなどの人気の花が次から次へと咲き、いつ歩いてみても飽きがきません。縦に長〜く伸びたオープンガーデンを見学するような感覚で、河原景観と一緒にお楽しみください。

“源流を目指す”いたち川

“源流を目指す”いたち川

写真:鷹野 圭

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いたち川の源流があるのは、奥多摩から三浦半島にかけて弓なりに続く巨大丘陵の一角に位置する「横浜自然観察の森」。川沿いを遡っていけばやがて写真のように深い緑地にたどり着くことでしょう。写真の中では向かって右側、木の柵の向こう側にいたち川が流れています。ここまで来ると湧水のような細くて少々頼りない小川ですが、流れる水は透明度も高く、涼しげな水音が森の中に優しく響きます。

源流は、この園路の先にある「ミズキの池」です。頻繁にカワセミが飛来するスポットで、観察小屋から中を覗くことができます。バードウォッチングにはピッタリです。そのほかに池までの道中には、夏場は美しいハンミョウやカワトンボが、冬場は可愛らしいジョウビタキやアオジなどの小鳥が姿を現します。生きものを探しながらゆっくり森林浴をお楽しみください。

“生きものと出会う”いたち川

“生きものと出会う”いたち川

写真:鷹野 圭

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たっぷりとススキやヨシが生えるいたち川の畔は、野鳥や小動物にとっては格好の隠れ家です。カモやバンが暮らしていることはもちろん、冬場ならアオジやシジュウカラ、ジョウビタキなどの小鳥が飛来します。器用にススキの茎に掴まり、クチバシで茎を千切って中の虫を探す姿はとても可愛らしいです。アオダイショウ(ヘビ)などのちょっと驚かされる生きものも暮らしていますが、それもまた豊かな生態系があることの証といえるでしょう。

そして何より見逃せないのが、このいたち川では下流域から上流域にかけてよくカワセミ(写真)が見られるということです。葉が少なくなって河原の見通しが利きやすくなる冬場になると、カワセミ目当てにたくさんのバードウォッチャーが集まります。特に観察しやすいポイントは、バス停「山手学院入口」から程近い芝生広場のある河原。中州近くに止まり木が設けられており、ここを足場にして魚を捕らえる姿が頻繁に見られます(写真参照)。

ここ数年、水質が良くなってきたためか、カワセミは都心部の河川でも見かけられるほど数が増えてきています。とはいえ、これほど高確率で出会えるのは横浜市内でもいたち川だけ! まだ一度もカワセミを見たことがないという方は、ぜひアクセスしてみてくださいね。

大船駅方面から源流まで、ゆったり歩いてみませんか?

いたち川はJR大船駅前を流れる柏尾川(この川もカワセミの出現率が高めです)と繋がっており、駅から柏尾川を溯って道なりに行くと、やがて自然護岸の美しいいたち川が見えてきます。ここからはしばらく川沿いの道が続きますが、基本的に平坦で一本道。迷うことはありません。源流のある横浜自然観察の森までは、JR京浜東北線で2駅分と少し歩く計算となり、所要時間は徒歩で約3時間。日陰が少ないのでさすがに夏場などは大変ですが、体力に自信がある方ならウォーキングにはピッタリのスポットです。

カワセミをはじめとした野鳥やトンボ、チョウなどの昆虫も多いいたち川。緑や紅葉、サクラの花と流水のコントラストも見所です。日本国内でも有数の高い評価を受けている、これからの時代にふさわしい河川の景観をお楽しみください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/12/07 訪問

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