写真:Saito Junso
地図を見る中国・重慶市にある大足石刻は、唐代末期から五代、宋代、そして明・清代という長い時間をかけて刻まれました。大足は「仏像の故郷」とも呼ばれ、その多くは1万体の彫像を有する「宝頂山」と「北山」で見ることができます。
その宝頂山の中で有名な彫像のひとつに「千手千眼観音」があります。通常千手観音像は手が10本ほどあればそう呼ばれるのですが、ここの千手観音像は何と1007本!文字通りの千手観音です。
千本は無限をあらわし、どんな群衆も観音の手によって救われるとされています。ひとつひとつ丁寧に彫られた観音様の手を見ていると、本当に救われるように気持ちになってくるようです。
写真:Saito Junso
地図を見る「大足石刻」と言えば必ず写真で紹介されるのがこの「釈迦涅槃像」で、全長31mをほこる中国最大級の涅槃仏です。彫られているのはお釈迦さまの菩提樹の木の下での涅槃の場面。その前方にはお釈迦様の入没を悲しむ弟子たちが彫られ、石刻右上部にはお釈迦さまの一族が天から降りて来ている姿が彫られていると言います。
ここ大足石刻では仏教の物語や、道徳、庶民の生活などが生き生きと描かれ、それが大きな特徴となっています。この釈迦涅槃像も仏教の大切な一場面を何とも豪快に描いていますね。
写真:Saito Junso
地図を見る仏教の世界では死後、前世の行いによって六道のいずれかに生まれ変わるとされています。六道とは最上の者が住む「天界道」、現世の「人間道」、争いの絶えない「修羅道」、妬み苦しみの多い「餓鬼道」、人間以外が住む「畜生道」、そして最も苦しい「地獄道」とされます。そしてそれを表したのがこの六道輪廻図です。絵で描かれたものはよく見かけますが、このように石刻として彫られたものは珍しく大変見応えがあります。
仏教や儒教、道教などが混在した大足石刻ならではの作品です。
写真:Saito Junso
地図を見る先にも書きましたがこの大足石刻では、中国発祥の文化である儒教、道教の仏像が多く彫られています。そして民間の文化を表したものも多く残っており、地獄の裁判の様子が彫られたこの「地獄経変像」もそのひとつです。
中央の閻魔様の両隣りに12人の審判がいて、地獄に落ちて来た者を裁きます。前世の罪の重さで刑が決まり、針山・油・氷・弓矢・火炎・毒蛇等、18種の残酷な刑に処せられます。物語の様子を美しい色彩やひとりひとりの細かな表情まで表現されているのは見事です。当時ここで世の教えを説いていた光景が目に浮かぶようです。
写真:Saito Junso
地図を見る唐の時代、都での混乱から安住の地を求めて人々が移住したのが、ここ当時の四川の地でした。その際に優秀な技巧を持った職人も一緒に移り住んだため、大足や安岳などで優れた仏像がたくさん彫られたとされています。
これまで紹介してきた「宝頂山」と同様に有名なのが「北山石刻」です。こちらは規模では宝頂山には劣りますが、繊細な彫刻が多く見応えがあります。ただ宝頂山に比べて街に近かったため、文化大革命の際に多くが破壊されてしまいました。難を逃れて残された彫刻には当時の技術の高さがうかがえますし、現在もその修復作業は続けられています。
今回は中国にある大足石刻をご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。
当時の高い技術を用いて彫られた庶民の文化は、現代の我々が見ても非常に興味深いものです。単に彫刻の美しさだけではなく、その背景を知ることでもっとこの石刻が身近に感じるようになるでしょう。
中国には各地に石窟がありますが、大足石刻はそれに勝るとも劣らない素晴らしい場所です。是非一度、この美しい彫刻を見に大足を訪れてみませんか。
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この記事を書いたナビゲーター
Saito Junso
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(2025/2/10更新)
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