玄関ホールから資料室に向かって歩いていく通路は、現代から藤原京の時代に向かうかのようにさまざまな資料が展示されています。その通路のつきあたりに、人形が展示されています。目の前に現れたその人形は、この奈良県に藤原京があった時代の女性を再現したもので、来場者を出迎えてくれます。古代衣装をまとった姿を見て、ここで一気に奈良時代にタイムスリップしたような気分になることができ、ここから一気に藤原京があったという7世紀の世界が広がります。
この衣装は、天武天皇の時代から、持統天皇の時代くらいに使用されていた衣装だといわれており、藤原京にはこのような女性の姿がたくさん見かけられたのでしょう。鮮やかな足元の裳が、いつの時代も女性は華やかなものが好きなのだと感慨深いものがあります。
ちなみに髪型は、この人形のように、長い髪を結い、さらに垂れた髪の先を上に結いあげるのが特徴的だったことが伺えます。これは、今でも使えそうなヘアスタイルです。
人形の前を通り、右手にあるのが基準資料室と呼ばれる場所です。
この場所は、年代の基準となる貴重な資料が展示されています。
その中でも、オススメなのが土器の展示です。ここの土器は、飛鳥時代から藤原京の時代に使われていたとされる土器が、その年代別に並べられています。器は、現代人も毎日のように使用しているものなので、その時の器の風合いを楽しみながら、時の流れを感じることができるでしょう。
土器の向こうには、その時代にあった出来事や、時代背景も展示されているので、その器がどのように使われていたのかなど、想像するのもとても楽しいですよ。
基準資料室から奥に進むと、そこには展示室があります。そこにはさまざまな資料が展示されており、どれも興味深いものばかりです。
まずは、日本最古のものといわれているカレンダーに注目したいと思います。
このカレンダーは5世紀に中国で誕生し、7世紀に日本で本格的に導入された「元嘉暦(げんかれき)」を取り入れたもので、実際に残っていることが確認されたのは、これが世界初なのだそう。
ここに書かれている文字は、上段が日程とその吉凶を、下段には現在でいう「大安」「仏滅」などを示すものが記載されています。
この時代の人が、カレンダーを使っていたなんて不思議な気がしますが、この当時、吉凶など占いが生活の中に身近に取り入れられていたことを知ることができる貴重な資料だと思います。
同じく展示室には、今の生活と、藤原京での生活の様子を見比べることができる展示資料があります。
生活で欠かせないもの、それは「食事」です。
この展示室では、当時の時代の人が食べていたであろう食事の様子が再現されています。
やはり一番気になるのは、豪華であってほしい貴族の食事です。
しかし、見た目はちょっと質素だなと感じてしまうのですが、良く見てみると豪華なのがわかります。
使われていた食材は、真鯛や鰒のウニあえなど、高価なものが使われています。
貴族の食事の横には、その下の階級の人たちの食事も再現されているので、見比べてみましょう。さらに、この時代の貴族の様子が楽しめますよ。
展示室には、今では考えられない生活の中の常識があったことを窺える資料がありました。
それは、病気を治す方法です。
展示されていたのは、薬に関する資料だけではなく、呪術に使われていたものも。なんと、この時代は病気になったら薬や診療だけではなく、呪術も使われており、それも立派な医療だったのです。
病気は、体の中に悪気があるとされ、それを人形や土馬などに移し、溝など水に流すことで病気を治せると信じられていたそうで、ここに展示されている土馬たちは、そのような状況が本当にあったことだったのだと教えてくれているようです。
藤原宮跡資料室は、近鉄・耳成駅かJR香具山駅から徒歩20分ほどの場所にあります。近鉄・大和八木駅からであれば、橿原市コミュニティバスが出ているので、それに乗って「別所町」というバス停で降りれば、そこから徒歩12分程度です。
ちょっとアクセスが不便だなと思うかもしれませんが、それでも藤原宮に足を運ぶのであれば、こちらの資料室にも寄って当時の様子を知ることができれば、さらに楽しめるでしょう。
定休日も展示替え期間中と年末年始以外はオープンしているので、旅の行程にぜひ加えてみてください。入館料も無料で、ここで紹介した資料以外にもまだまだ展示物があるので、かなり見ごたえがあります。
このような文化財が、数多く楽しめるのは、奈良を楽しむ醍醐味でもあります。特に、この藤原京近辺は飛鳥村からも近く、多くのミステリーが歴史ファンを引き寄せる魅力的な場所です。
奈良時代に興味がある方は、ぜひ一度足を運んでみてはいかがですか?
この記事の関連MEMO
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索