霊場・出羽三山を巡り、山岳信仰の歴史と神秘にふれる旅

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霊場・出羽三山を巡り、山岳信仰の歴史と神秘にふれる旅

霊場・出羽三山を巡り、山岳信仰の歴史と神秘にふれる旅

更新日:2017/05/10 13:11

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー

日本各地を守護するように点在する山岳霊場の中で、山形県の中央部に位置する月山を主峰とする羽黒山、湯殿山の出羽三山は、今も山の霊場の雰囲気を残しています。1400年以上前、崇峻天皇の第一皇子で聖徳太子の従兄弟である蜂子皇子によって開山したとされ、熊野と並ぶ修験道の霊場を巡ることで死と再生を体験できるという出羽三山。羽黒修験がつくりあげた東北の異空間に、見と心をゆだねる旅に出かけてみましょう。

出羽三山参詣の入口、羽黒山の麓に残る宿坊街「手向」から羽黒山を目指す

出羽三山参詣の入口、羽黒山の麓に残る宿坊街「手向」から羽黒山を目指す

写真:和山 光一

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鶴岡市街を抜けると、田園を貫くように500m程の直線道路の先に赤く巨大な鳥居を見ることができます。羽黒山の入口にそびえる高さ20m、幅15mの東北最大の大鳥居です。その鳥居をくぐると坂道にかかり、メインの道路を左折すると宿坊街・手向の集落。手向は「トウゲ」と読み、本来山道を歩いていて、道祖神に手向けをすることから転じているものと考えられています。宿坊は寺社参詣の際、信者が宿泊して精進潔斎するための施設で、出羽三山にはその集落が数カ所ありますが、なかでも手向は羽黒山の入口に位置し、規模も大きいのです。

出羽三山参詣の入口、羽黒山の麓に残る宿坊街「手向」から羽黒山を目指す

写真:和山 光一

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道路を挟んだ左右に「○○坊」「××坊」と大書した看板と、門柱と門柱のあいだや軒先に注連縄を張った家々が並んでいて、建物は一種独特な構えで、神社のようでもあり、寺のようにも見え、旅館のようでも、あるいは普通の民家のようでもあります。宿坊と呼ばれる宿泊施設はもともと修験道の講を取り仕切る神官や修験者の家だったものが、現在は旅館業に近い営業形態になっているらしいのです。路地、松、黒塀、鳥居、宿坊、そして清々しい空気と、手向には独特の空気が流れています。

祓川に架かる神橋を渡って俗界から羽黒山の神聖な世界への石段を上る

祓川に架かる神橋を渡って俗界から羽黒山の神聖な世界への石段を上る

写真:和山 光一

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いよいよ出羽三山の入口である羽黒山に向かいます。西の伊勢参りに対して東の奥参りと称された出羽三山参りの礎を築いたのが、江戸時代の傑僧第50代別当の天宥法印です。天宥の整備した2446段もの石段を上って山頂を目指します。

まずは山麓の随神門から五重塔を目指します。ここから先は神域となり、山に入った瞬間凛とした空気が身を包み、心身が引き締まる気がします。しばらくは急な下りが続き、下りきったところに祓川が流れ、朱色の神橋が架かっています。右手に天宥の造った須賀の滝が見えてきます。

祓川に架かる神橋を渡って俗界から羽黒山の神聖な世界への石段を上る

写真:和山 光一

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天宥が植えた杉並木の参詣路の半ば辺りには、高さ42m、樹齢千年以上と言われる天然記念物「爺杉」が天に届けとばかりに真っ直ぐに伸びています。そのすぐ近くには杉の巨木に囲まれた国宝・「羽黒山五重塔」の姿が。風雨にさらされた色合いが、杉の木肌に似て木立に溶け込むような佇んでいます。承平年間(約1070年前)に平将門が創建したと伝えられ、約650年前に再建された東北最古の塔です。

祓川に架かる神橋を渡って俗界から羽黒山の神聖な世界への石段を上る

写真:和山 光一

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五重塔の前から一の坂、二の坂、三の坂と石段が続きます。石段の左右に林立する樹齢三百年から五百年もの杉並木を仰ぎながら上る雰囲気は霊山を巡るスタートにもっともふさわしく、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン三ツ星に認定されています。

祓川から上りに転じた石段は、二の坂で急に勾配を増します。別名「弁慶の油こぼし坂」といわれ、かの弁慶ですら勾配のきつさに体を傾け、油をこぼしてしまったと伝えられています。

三の坂上り切れば、いよいよ出羽三山神社がある山頂

三の坂上り切れば、いよいよ出羽三山神社がある山頂

写真:和山 光一

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清涼な森の空気の中、息を整えて三の坂を上り切った先にある赤い鳥居をくぐれば、左手に開祖・蜂子皇子を祀る蜂子神社が見えます。そして、山上の中心には、羽黒山、月山、湯殿山の三神を合祭した三神合祭殿が堂々とし佇まいが。こちらは杉材を主に使用しており、内部は総朱塗り。厚さ2mもある巨大な茅葺き屋根には、圧倒されるほどの迫力があり、茅葺木造建造物としては日本最大の大きさを誇っています。

三の坂上り切れば、いよいよ出羽三山神社がある山頂

写真:和山 光一

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社殿の前には、神意を映す霊池として古くから信仰を集める御手洗池があります。鏡池とも言われ池の中から平安時代から鎌倉時代にかけての銅鏡が数多く発見されています。

また境内には、蒙古襲来の折に鎌倉幕府が撃退を祈願したところ、神風が吹いて蒙古軍が壊滅したことから、祈願成就に対して鎌倉幕府が奉納した大鐘があります。芭蕉の句碑もあり、「涼しさや ほの三か月の 羽黒山」と詠まれています。

月山の神秘的な湖沼と霊山の生命エネルギーを全身に浴びる

月山の神秘的な湖沼と霊山の生命エネルギーを全身に浴びる

写真:和山 光一

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月山は標高1984m、出羽三山の主峰として秀麗な姿で聳え立っています。月山で最もやさしい登山道のスタート地点となる弥陀ヶ原湿原(八合目)まで車で上っていくことができます。ここから山頂までの距離は約5km、時間にして片道2時間半から3時間程です。

標高1400m前後にある弥陀ヶ原湿原は、傾斜がなだらかな湿原地帯で、「いろは48沼」といわれるように、湿原の中には大小さまざまの沼が散らばっています。ミニ尾瀬といったふうの約2kmの木道を、40分程度でゆっくり楽しんで一周することができ、木道をたどるだけでも高山気分を満喫できます。山頂を目指すため一周はせず、視界が開けた登山道を進んでいきましょう。

月山の神秘的な湖沼と霊山の生命エネルギーを全身に浴びる

写真:和山 光一

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仏生池小屋のわきを抜けると、標高1800m辺りで唯一の急な上り坂である「行者返し」があります。といっても高低差は15mほどで、伝説によるとここで修験道の開祖、役行者小角が、足を滑らせて月山大神からまだ修行が足らぬといわれ、引き返させられたという所です。

坂を登りきると再びなだらかな草原が続き、やがて一番のみどころの360度の大パノラマが広がるお花畑の大峰に出ます。鳥海山や朝日連峰も見渡せるベストビューポイントです。

月山の神秘的な湖沼と霊山の生命エネルギーを全身に浴びる

写真:和山 光一

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大峰を過ぎれば頂上まで約300mほどです。頂上は台地になっていて、周囲は石垣で囲まれ、冷たい季節風を避ける造り。そこにある月山神社本宮には、海上の守護神でもある月読命が祀られています。参拝料500円を払い、お祓いを受けてお参りすると登拝認定書がいただけます。月山で芭蕉は「雪の峰 幾つ崩れて 月の山」と詠んでいます。

出羽三山の奥宮・湯殿山神社で神秘の世界を体験する

出羽三山の奥宮・湯殿山神社で神秘の世界を体験する

写真:和山 光一

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湯殿山有料道路(400円)を登った先が「湯殿山神社」です。湯殿山本宮入口までは大鳥居から徒歩で30分ほど登るか、バス(片道200円往復300円)を利用するかなのですが、行きは登りがきつくバス利用をお勧めします。古来湯殿山は出羽三山の奥宮とされ、特に神秘的な山であり、修験道の霊地です。湯殿山神社本宮は、月山より南西に下ること約5Km、清冽なる梵字川の流れのほとり、幽玄の峡谷中に鎮座しています。

出羽三山の奥宮・湯殿山神社で神秘の世界を体験する

写真:和山 光一

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湯殿山神社本宮の参拝に際しては、現在でも履物を脱ぎ、裸足になってお祓い(500円)を受けてからでなければお参りすることはできない、俗界とは切り離された神域なのです。湯殿山神社に神殿はなく、御身体は湯殿山山腹の仙人沢にある、今も湯滝の吹き流れる茶褐色の大岩で、女陰に似た形の岩の上を、絶えず温泉が流れ潤しています。湯殿山を再生(蘇り)の出口とするのは、この湯滝の形状から発生したとも言われています。お祓いを受け、素足になって岩を登って御参りしますが、「語ることなかれ、聞くなかれ」と戒められた場所であり、撮影はもちろん禁止です。芭蕉が湯殿山を詠んだ句が「語られぬ 湯殿にぬらす 快かな」なのです。

出羽三山巡りの修行の果て「即身仏」に会う

出羽三山に参拝することを「三関三渡」といい、現在、過去、未来の三つの関を乗り越えて、生きたまま悟りを得られるという巡礼の旅です。羽黒山で現在の幸せを祈った後、過去を表す月山に登って死後の世界を体験します。そして未来を象徴する湯殿山で新たな命を宿して甦るのです。訪れる信者が身に着ける白い装束は、死装束と産着を意味しています。

この思想が即身成仏につながり、特に湯殿山ではかつて一期千日の行人修行が行われていて、三千日、五千日の厳しい行を積む者もいたといいます。想像を絶する苦行を続け、自らの穢れを祓い、他人の苦しみを代わって受けようとしたのです。湯殿山には、大日坊瀧水寺の真如海上人や注連寺の鉄門海上人といった衣におおわれたミイラ仏を拝することができますので、是非寄り道をしてみてください。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/08/03−2015/08/05 訪問

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