世界遺産登録目前!長崎県「久賀島」にある木造瓦葺き教会と潜伏キリシタンの史跡

世界遺産登録目前!長崎県「久賀島」にある木造瓦葺き教会と潜伏キリシタンの史跡

更新日:2015/09/28 17:52

明治14年(1881年)に建てられた貴重な木造瓦葺きの「旧五輪教会堂」(長崎県有形文化財・国の重要文化財)をはじめ、潜伏キリシタンの受難と信仰の歴史を伝える「久賀島(ひさかじま)」。今も往時を偲ぶ面影が島内に色濃く残されています。
日本政府は2016年の世界文化遺産登録を目指しており、認定後には数多くの方の訪問が予想されます。心静かに訪問できる今が絶好のタイミングと言えます。

禁教令が解かれた後に久賀島に建てられた信仰の証「浜脇教会」

禁教令が解かれた後に久賀島に建てられた信仰の証「浜脇教会」
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五島列島南部・福江島の北東に位置する人口365人(2015年版市政要覧)の「久賀島」。寛政年間(1789年〜1801年)、潜伏キリシタンの人たちは大村藩の迫害を逃れるため五島に渡り、「久賀島」にも多くの人たちが移住しました。

さて、「福江島」から定期船に乗って「久賀島」に近づくと沖合から目にするのが「浜脇教会」です。
明治政府は、明治6年(1873年)に禁教令を廃止し、キリスト教の信仰と布教を認めます。長きに渡った弾圧と迫害を乗り越えた信徒たちは、お金を出し合い自ら労働奉仕することで、明治14年(1881年)4月に念願の初代「浜脇教会」を完成させました。

現在、私たちが目にする教会は昭和6年(1931年)に建て替えられたもの。高台にある白亜の「浜脇教会」は遠くからもはっきりと目にすることができます。
※「浜脇教会」は常時見学可能(9:00〜17:00)。ただし、ミサの時間は見学を遠慮しましょう。

五島崩れと呼ばれる過酷で残酷な弾圧の舞台となった「牢屋の窄」

五島崩れと呼ばれる過酷で残酷な弾圧の舞台となった「牢屋の窄」
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「浜脇教会」から島の中心部に向かうと「牢屋の窄」という史跡があります。
慶応2年(1866年)、プチジャン神父が大浦天主堂で信徒たちにミサを始めたという知らせが「久賀島」に伝わると、信仰を明らかにする信徒たちが現れます。

しかし、禁教令は継承されていたため、明治元年(1868年)、政府は信徒たちを捕え、信仰の破棄を強要します。信徒たちはこれを拒み、12畳ほどの狭い牢に約200名が押し込められ、残酷な責め苦を受けます。
横になることはもちろん、排泄もままならず、飢えと病、激しい拷問のために42名が命を落としました。ある幼い女の子は内臓を蛆虫に喰われ絶命したと伝わっています。

「牢屋の窄」には信仰の強さと信教の自由を守り抜いた信徒たちを讃える「信仰の碑」が建てられ、迫害を受けた人々の遺骨が納められています。
また、「牢屋の窄殉教記念教会」内部のじゅうたんは色分けされており、牢の広さが一目でわかるようになっています。

「世界遺産」構成資産候補の木造瓦葺き教会「旧五輪教会堂」は必見

「世界遺産」構成資産候補の木造瓦葺き教会「旧五輪教会堂」は必見
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昭和6年(1931年)、前述した初代「浜脇教会」を五輪・蕨地区信徒のために移築したのが「旧五輪教会堂」です。

この「旧五輪教会堂」は木造平屋瓦葺き、リブ・ヴォールト(かまぼこ型のアーチ)天井で作られており、現存する教会としては「大浦天主堂」(国宝)に次ぐ古い教会です。
ユネスコの世界遺産暫定リスト/「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を構成する教会の一つであり、国の重要文化材、長崎県指定有形文化財の大変貴重な教会です。
入口には天主堂と筆書きされた額が掲げられており、創建当時の名称を残しています。

老朽化のため、昭和60年(1985年)に現「五輪教会」が建設され、ミサは新しい教会で行われています。

「旧五輪教会堂」は久賀島の東端。アクセスは非常に不便ですが、訪れる価値はあります。

「旧五輪教会堂」は久賀島の東端。アクセスは非常に不便ですが、訪れる価値はあります。
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「旧五輪教会堂」へのアクセスは非常に不便です。途中の「蕨」集落まで車で行き、駐車場となる場所から15分程険しい山道を歩いて行くか、久賀町の中心部から折紙峠を抜ける遊歩道を歩いて行くか、海上タクシーをチャーターして五輪の港に乗り付ける以外ありません。

険しい山々を越えてようやくたどり着く孤立した集落という立地は、禁教時に本土から移住した方々が置かれた厳しい立場をうかがい知ることができます。

この秋から「旧五輪教会堂」の見学は「長崎の教会群インフォメーションセンター」への事前申込が必要となりました。世界遺産認定となれば、人数制限も予想され、たやすく見られないようになるかもしれません。

「久賀島」へのアクセスは福江島からのフェリーと高速船が基本。

「久賀島」へのアクセスは福江島からのフェリーと高速船が基本。
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「福江島」の福江港、または奥浦港からフェリー、高速船を利用するか、海上タクシーをチャーターして「久賀島」の田ノ浦港へアクセスすることとなります。
また、島内にレンタカーはなく、公共交通機関は久賀タクシー(1台)のみ。事前の予約は必須です。

みなさまへのお願い

教会は信者の皆さんにとって大切な祈りの場です。お祈りされている方の邪魔にならないよう静かにご見学ください。特に長崎の教会は過酷な弾圧を耐え、信仰を守り続けた歴史に対する配慮が必要です。くれぐれもマナーを守って見学してください。

祭壇はもっとも神聖な場所です。絶対に立ち入らないようにしましょう。教会後ろの二階部分も立ち入り禁止です。
また、祭壇はもちろん、ミサの撮影はNGです。司祭等のお許しがない限り、撮影・公開するのはマナー違反です。

くれぐれも教会や史跡を毀損することはお止めください。撮影しようとして、墓所に立ち入るなどの行為はもちろん、木々や草花を折ったり、抜いたり、モノを移動することは慎みましょう。
※ 見学マナーについては「長崎の教会群インフォメーションセンター」のWEBサイトもご覧ください。

参考文献
長崎游学(2) 長崎文献社
カクレキリシタン オラショ-魂の通奏低音 宮崎 賢太郎/長崎新聞新書
カクレキリシタンの信仰世界 宮崎 賢太郎/東京大学出版会
五島キリシタン史 浦川和三郎著/国書刊行会

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/10/10 訪問

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