写真:竹内 あや
地図を見る「はじめは4本足、のちに2本になり、最後には3本になるもの、なーんだ?」
これはギリシャ神話に登場する、体はライオンで頭は女性の怪物スフィンクスが、山道を行くオイディプスに出した謎かけです。これを軽々と解かれたスフィンクスは、ショックで谷底へと身を投じたのだとか――。こうして怪物を見事退治したオイディプスは、王としてテーバイの国に迎えられたのでした。
――と、ここまでの話は、“めでたし、めでたし”なのですが、実はその後、最大の悲劇が彼を待っていました。それが、古代ギリシャを代表する悲劇としても知られる有名な物語。心理学者フロイトが定義した「オイディプス・コンプレックス」も、このギリシャ神話が由来です。
“アポロンの神託”どおり、オイディプスは何も知らないまま実父を殺し、実母と結婚してしまいます。しかし、それに気づいたときはすでに遅く、母は自殺し、オイディプスは自ら目をえぐって盲目となり、自身を戒めるべくさ迷い歩き続けることとなったのです。
このように一個人だけでなく、一国もの運命を左右していたのが、“世界の中心”デルフィで行われていた、“アポロンの神託”でした。古代ギリシャにおいて、ギリシャ全土の人々の信仰を集めていたデルフィ。長年を経た今でも、数々の遺跡が点在する険しい山の斜面に立つと、ひしひしと身を包み込んでいくような神々しさを感じずにはいられません。
写真:竹内 あや
地図を見るデルフィは、ギリシャの首都アテネから北西へ約178km。冬にはスキーエリアとしても知られ、標高2000m級の山々が連なるパルナッソス連山の麓にあります。古代遺跡があるのは、町の東600mほどの山の斜面。アテネから日帰りで訪れられる観光スポットとしても人気を集めています。
遺跡は、当時の参拝と同じルートで回れるようになっています。まずは各国からの奉納物を納めた宝庫などが並ぶ参道を抜け、大地の女神ガイアの神域へ。さらに階段を上ると、大祭壇の先に一番の見どころであるアポロン神殿が建っています。
今は一部の柱と土台しか残っていませんが、当時はこの内部にアポロン像があり、地下にあるオンファロス(世界のへそ)と呼ばれる神聖な石の上で、神託が行われていたのだとか――。実物は残っていませんが、その複製を隣接のデルフィ博物館で見ることができます。古文書などによると、当時はアグレノスと呼ばれる綱で石は覆われ、その上に黄金のワシが2羽乗っていたといわれています。
写真:竹内 あや
地図を見るアポロン神殿を通り過ぎ、さらに斜面を上っていくと、現在でも夏に古代劇の公演が行われている古代劇場にたどり着きます。デルフィでは、ピューティア祭と呼ばれるオリンピックと同様の競技が4年ごとに行われていましたが、その際にここで演劇も上演されていました。
古代劇場の300mほど先にあるのは、ピューティア祭の競技が行われたスタジアム。長さ178m、幅26mの広さで、今もトラックの両端に設置されたスタートとゴールの石板が見てとれます。大勢の観客たちで埋まっていただろう客席も、当時のまま残っています。
ここから眼下に広がる風景は、実に荘厳。斜面に沿って、周囲の険しい山々に抱かれるようにデルフィの聖域が広がり、同時に神秘的な雰囲気を醸し出しています。
写真:竹内 あや
地図を見るさて、冒頭で触れたスフィンクスがオイディプスに出したという謎、あなたは解けましたか? 答えは「人間」。生まれてしばらくは四つん這いで、その後は2本の足で歩き、高齢になると杖をつくようになるからだそうです。
ギリシャ神話がどこまで事実で、どこまでが作り話なのかは定かではありません。しかし、ここデルフィが、古代ギリシャにおいていかに重大な場所であったのかは、今も残る遺跡から伺い知ることができます。
遺跡群を目の前に山の斜面に立つと、今もパワーを感じるのは気のせいでしょうか。アポロンの神託が行われていた当時、巫女は大地の裂け目が吐き出す白い煙を吸ってトランス状態になり、神との交信を図っていたとも伝えられています。ここは私たちには見えない何か――、古代の英知のみぞ知る、エネルギーがみなぎっている場所なのかもしれません。
古代ギリシャにおいて、“世界の中心”と考えられ、多くの人々の信仰を集めていたデルフィ。今も姿をとどめる数々の遺跡が、当時の様子を物語っています。古代ギリシャを知るうえで欠かせない聖域のひとつ、デルフィで、古代の人々が崇めたエネルギーを全身で感じてみませんか?
■アクセス:ギリシャの首都アテネからバスで約2時間30分。アテネ拠点の日帰りツアーも催行されています。
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(2023/12/6更新)
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