ダムの底へ沈む温泉街…川原湯温泉と八ッ場ダムの「いま」を訪ねて

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ダムの底へ沈む温泉街…川原湯温泉と八ッ場ダムの「いま」を訪ねて

ダムの底へ沈む温泉街…川原湯温泉と八ッ場ダムの「いま」を訪ねて

更新日:2015/09/29 14:54

下川 尚子のプロフィール写真 下川 尚子 ライター

八ッ場(やんば)ダム建設によって、水底へ沈む温泉街。それが、川原湯温泉。鄙びた歴史ある温泉は源頼朝が開いたといわれ、長く人々を楽しませてきました。そんな川原湯温泉街ですが、現在はダム事業にともない、高台の代替地へと移転を進めている真っ最中。
ここでは、変わりゆく温泉街と、八ッ場ダム周辺をめぐる旅をご提案します。ダム事業は、誰にとっても他人事ではない公共事業。きっと、貴重な時間になるはずです。

八ッ場ダムの歴史と川原湯温泉街

八ッ場ダムの歴史と川原湯温泉街

写真:下川 尚子

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まずは簡単に、八ッ場ダムと川原湯温泉街の歴史を。

名勝・吾妻渓谷のすぐそばにある温泉街。川原湯温泉の歴史は古く、源頼朝が発見したのが起源とされます。独特の硫黄臭ただようお湯は多くの温泉ファンにも愛されてきました。

川原湯温泉と八ッ場ダムの歴史は切っても切り離せません。というのも、この温泉街は八ッ場ダムの建設予定地にあり、ダムが完成すると温泉街はすべて水没することになるからです。ダムの建設は、2009年の政権交代によりいったんストップされました。ですが、現在は再び事業再開され、ダム本体工事がすすめられています。それに伴い、川原湯温泉街は水没予定地区から高台の代替地へ移転をすすめ、新温泉街としてスタートを切っています。

写真は、旧温泉街の共同浴場「王湯」。いかにも歴史あるたたずまいですが、現在は代替地へ移転し、こちらでの営業は2014年で終了しています。なお、今も旧温泉街で暮らす住民の方がいらっしゃるため旧温泉街へ降りることができますが、今後いつ道が閉鎖されるかは決定していません。

新しい温泉街。川原湯温泉のシンボル「王湯」へ

新しい温泉街。川原湯温泉のシンボル「王湯」へ

写真:下川 尚子

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さて、では現在の川原湯温泉街と八ッ場ダム周辺の主要な見所をご紹介します。

新しい川原湯温泉街でぜひ立ち寄りたいのが、移転した「王湯」。川原湯温泉駅から約1kmほど歩くと着きます。真新しいきれいな建物で、気軽に日帰り入浴できますので、ぜひ寄ってみましょう。源頼朝が発見したという歴史にちなんで、源氏の家紋「笹竜胆」が掲げられているのは、以前の王湯と同じです。

中は、一階が浴場、二階が休憩室。男湯・女湯が分かれ、それぞれに内湯と露天風呂が一つずつあります。ダムが完成すると、露天風呂からダム湖が見えるようになるそう。温泉街の移転に伴って、現在は新しく掘った新泉源を利用しています。

まだまだ途上…真新しい温泉街

まだまだ途上…真新しい温泉街

写真:下川 尚子

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写真は、川原湯温泉街で代表的な旅館のひとつ「丸木屋」系列のカフェ「お福」。焼き立てのパンの販売や、カフェ営業がされています。

かつては20軒ほどの旅館があった川原湯温泉街ですが、新温泉街で営業している旅館・民宿は数軒。今後も2軒ほどの移転があるそうで、ご覧の通り、現在の「新」川原湯温泉街はまだまだ「途上」といったところ。あちこちで建設中のコーンやロープ、出来上がったばかりの真新しい建物が見られます。

数年後、もしかすると数か月後でも、見える景色は全く異なるのかもしれません。

「川原畑地区」の美味しいお店と、展望台「やんば見放台」

「川原畑地区」の美味しいお店と、展望台「やんば見放台」

写真:下川 尚子

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川原湯温泉街を散策したら、八ッ場大橋を渡って、対岸へ。対岸は、川原湯地区と同様、水没予定地区である「川原畑地区」の代替地。

国道145号線沿いには、「そば処やんば」と「うどん専科 麦の香り」という新しい二つの食事処があります。「そば処やんば」は水没予定地区で営業していたお店を移転したもの。「うどん専科 麦の香り」は同じくこの地区の方が新しくオープンさせたお店なのだとか。どちらも美味しくリーズナブル。筆者個人的にもオススメしたい食事処です。

二つの食事処の裏手にあるのが、2015年に新しくオープンしたばかりの展望台「やんば見放台(みほうだい)」。ここは建設中の八ッ場ダム本体の様子や、水没予定地区が見渡せるビュースポット。時間によっては「発破」の様子も見られます。

現在は、里山ののどかな風景とダム建設の様子が混在した景色が見られます。あと少しで、この景観もどんどん変わっていくことでしょう。何度も訪れ、変わりゆく風景を目に焼きつけておきたい…そんな展望台です。

情報収集にも便利!道の駅「八ッ場ふるさと館」

情報収集にも便利!道の駅「八ッ場ふるさと館」

写真:下川 尚子

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展望台と食事処のある場所から国道145号線を3kmほど進むと、道の駅「八ッ場ふるさと館」に着きます。ここは、この周辺で一番の賑わいを見せるスポット。産直品が並ぶ直売所や、名物が食べられるレストラン、無料の足湯、美味しいと評判のパンなど、様々なものが揃っている楽しい場所です。写真は、ここで提供されている八ッ場ダムカレー。

川原湯温泉街周辺のマップや、八ッ場ダム周辺・吾妻渓谷の見所ガイド、ハイキングマップなども多数揃っています。情報収集にも便利で、レンタサイクルの貸し出しもあります。ですので、ルートによっては、最初にこちらを訪れるのが便利かもしれません。

八ッ場ふるさと館の目の前には「不動大橋」があり、これを対岸へ渡ってしばらく進むと、川原湯温泉街。最初にご紹介した「王湯」の場所へ戻ります。ここでご紹介した、川原湯温泉駅〜川原湯温泉街〜川原畑地区(展望台・食事処)〜道の駅八ッ場ふるさと館というコースで、約6kmほど。マイカーならあちこち見ながら回っても、2〜3時間あれば大丈夫です。公共交通機関をご利用の方は、レンタサイクルを借りると効率的でしょう。

もちろん、じっくり温泉を楽しんだり、吾妻渓谷へ出かけたりする方は、旅館に泊まって一泊二日で回ってみてくださいね。

温泉を楽しみながら、ちょっと考えてみよう…

ここでご紹介したのは、2015年時点の風景や見どころ。ダム建設にしたがって変わっていく場所ですので、数年たつと、風景は大きく変化しているのかもしれません。

八ッ場ダムの建設計画が決まったのは、もう半世紀以上も前のこと。この地域は、ダム計画によって様々な影響を受けてきた地域です。

名勝・吾妻渓谷や、川原湯温泉はそれ自体が魅力的な場所。ですが、ここを訪れたなら観光を楽しむだけではなく、変わりゆく景色やそこで暮らす人々のこと、ダムを取り巻く歴史についても、考えてみてはいかがでしょう。きっと、見えるものは違ってくるはずです。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/11/16−2015/09/22 訪問

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