写真:乾口 達司
地図を見る古代中国では、霊獣は吉兆を呼ぶ動物として篤く信仰されていました。そのため、霊獣は中国でめでたいことを示す「瑞」という字を当てて「瑞獣」とも呼ばれています。その代表格といえば、風水でもお馴染みの四神こと、東の青龍、南の朱雀、西の白虎、北の玄武。なかでも、私たちにとって馴染みがあるのは、やはり青龍(龍)でしょう。
写真は「蟠龍文盤」と呼ばれている青銅器。直径は34センチメートルで西周時代(紀元前1046年頃から紀元前771年)前期の作と考えられています。殷(商)や周の時代は鬼神が畏れられ、その姿は獣面を表わした饕餮文(とうてつもん)の形でさまざまな青銅器に描かれました。龍もそのなかで描かれましたが、いまから3千年も前にすでに中国で龍が描かれていたことには驚かされますね。
写真:乾口 達司
地図を見る霊獣がしばしば表現されるものに「鎮墓獣」(ちんぼじゅう)があります。「鎮墓獣」とは、お墓を守護する霊獣のこと。悪霊の侵入を防ぎ、その退散を願って、お墓の内部に安置されました。戦国時代の楚の墓から出土するものが鎮墓獣の初期の事例であると考えられていますが、当初、長い舌を持つ木彫りの姿だったものが、時代を経て、さらに空想豊かな怪物へと生成変化していきました。
たとえば、写真の鎮墓獣は唐代の作。ご覧のように、犬のような四つ足の動物に人の顔がついています。日本で人面犬が話題になるはるか昔から、中国ではこんな奇妙な霊獣が作られていたのです。どこかしらユーモアさえ感じられるこの人面犬もどき、必見です。
写真:乾口 達司
地図を見る写真の2体もやはり唐代の加彩鎮墓獣。左側は高さ34.2センチメートル、右側は35.4センチメートル。ご覧のように怖い表情をしており、悪霊を追い払うのに格好の存在感をただよわせています。造形性も上で紹介した人面犬もどきよりさらに奇抜。いったい、どのような想像力を働かせれば、こんな奇妙な造形を思いつくのでしょうか。古代の中国人の想像力には脱帽ですね。
写真:乾口 達司
地図を見るこちらは「三彩釉角端坐像」(さんさいゆうかくたんざぞう)と呼ばれているもの。高さは40センチメートルで、その表面には緑・褐・白の釉薬(三彩)がほどこされています。唐代に入り、この「三彩」の技法が発明され、大流行したことからもわかるように「三彩釉角端」は唐代に作られたもの。岩座の上にすわるその姿は、一見、牛を連想させますが、角が彎曲している点や鼻が象のように長い点など、牛とは異なる霊獣であることがおわかりになることでしょう。その造形は類を見ないものであり、ぜひ、じっくりご覧ください。
写真:乾口 達司
地図を見るキリンといえば、あの首の長い動物園の人気者を思い浮かべる方も多いはず。実は中国では、キリンも霊獣の一種に数えられていたのです。しかし、キリンはキリンでも、霊獣としての「麒麟」(きりん)は、私たちに馴染みのあるキリンとは似ても似つかない姿をしています。
写真はその麒麟をモチーフにした石造物。「麒麟画像石」と呼ばれ、やはり唐代の作です。麒麟は龍や鳳凰、亀とともに四霊と呼ばれ、霊獣たちの長と見なされており、燐光を発する鹿という意味で「麒麟」と名付けられました。麒麟の身体は鹿に似ていますが、その表面には鱗があり、頭には角が生えています。馬のひづめや牛の尻尾もあり、私たちがよく知るキリンとはまったく異なる姿であることが、ここからはうかがえるでしょう。
企画展『中国の霊獣百態』の魅力、おわかりいただけたでしょうか。奇妙な霊獣たちを描いたものはまだまだたくさん展示されており、その不思議な造形に魅了される人も多いはず。11月30日まで開催されているため、奈良観光のついでに足を運び、古代中国の神秘に触れてみてください。
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(2024/9/16更新)
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