長崎・上五島の聖地「キリシタンワンド」「ハリのメンド」を見ずしてキリシタン史跡は語れない

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長崎・上五島の聖地「キリシタンワンド」「ハリのメンド」を見ずしてキリシタン史跡は語れない

長崎・上五島の聖地「キリシタンワンド」「ハリのメンド」を見ずしてキリシタン史跡は語れない

更新日:2015/10/19 11:27

世界遺産の暫定リストに掲載されたものだけが価値あるキリスト教関連遺産というではありません。
上五島の聖地「キリシタンワンド(洞窟)」と「ハリのメンド」もその一つ。小型船をチャーターしない限り、見ることもたどり着くこともできない岬の先端にある貴重な聖地です。

信仰を守るため、岬の洞窟に隠れ住んだ3家族12名を襲った悲劇

信仰を守るため、岬の洞窟に隠れ住んだ3家族12名を襲った悲劇
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長崎・五島列島の北側に位置する上五島。7つの有人島と60の無人島からなるコバルトブルーの海と岬が印象的な美しい島です。
五島におけるキリシタン信仰はイエズス会のルイス・デ・アルメイダを招いたことから始まりますが、江戸幕府の禁教令に基づく弾圧から逃れるため、カクレキリシタン(潜伏キリシタン)として信仰を守り続けていました。

慶応2年(1866年)にプチジャン神父が大浦天主堂で信徒たちにミサを始めたというニュースが五島の各地に伝わると信仰を明らかにする人たちが現れますが、明治政府は禁教令を継承していたため、過酷な弾圧を強化。

若松島の白浜にいた山下与之助をリーダーとする3家族は弾圧から逃れるため、岬の突端にある小さな洞窟に隠れ住むことを決めます。
彼らが洞窟内に潜伏できた期間はわずか四ヶ月。寒さの厳しい早朝、煮炊きしていた一筋の煙を通りがかりの船が気付き、すぐに捕縛されて自白と信仰の破棄を強要されます。

拷問に用いられた算木責め(三角に削った木の上に正座させ、板石を抱かせるもの)は過酷さを極め、生き残った信者たちの足にも重度の障害が残りました。

「キリシタンワンド」へは、今も容易に近づくことはできません

「キリシタンワンド」へは、今も容易に近づくことはできません
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「キリシタンワンド」へは「中通島」南西部・桐古里郷にある深浦港から「せと志お」「明日香」「祥福丸」等の釣り船をチャーターして向かいます。港を出て「中通島」と「若松島」間の水道を南下すると「若松島」の険しい岩壁が見えてきます。
白崎という大きな岬を抜けてしばらく進むと洞窟のシルエットが幼きイエスを抱く聖母マリアに見える「ハリのメンド」と呼ばれている岬が見えてきます。
「キリシタンワンド」はその岬の裏側にあり、漁船から陸地への上陸も海が荒れていれば不可能です。

「キリシタンワンド」の上には苦しみに耐え、信仰を守り抜いてきた先達をしのび、鎮魂の願いを込めて「平和キリスト像」が町の協力より、1967年(昭和42年)に建てられています。

洞窟内は薄暗いものの広さは幅5m×高さ5m×奥行50mほど。奥には平たい場所があり、ここが寝起きに使われた空間と思われます。

今でも毎年、潜伏していた人達の信仰をたたえるミサが毎年11月、近くの「土井ノ浦教会」の信者たちが集まり、祈りを捧げています。

上五島で唯一、潜伏キリシタン時代からの組織が残る集落「深浦」

上五島で唯一、潜伏キリシタン時代からの組織が残る集落「深浦」
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長崎・平戸や生月には潜伏キリシタン時代から信仰を守り続けている人たち(カクレキリシタン)がいると言われているものの、今も組織を守り継いでいる集落は数えるほどしかありません。
「キリシタンワンド」と「ハリのメンド」見学の出発地となる「深浦」には今も14軒(筆者訪問時)の方々が9代目の大将(最高責任者)のもと、潜伏期からの信仰を組織として続けています。

大将の方は「キリシタンワンド」の案内をしている船長の一人ですから縁があればお会いすることができるかもしれませんし、真摯な姿勢が伝わればご自宅で詳しい話やオラショ等をお聞かせいただけるかもしれません。

ちなみに若松島の「土井浦教会」横にはカクレキリシタン関係の資料を納めたカリスト資料館があります。福江島の「堂崎天主堂」キリシタン資料館とともに五島観光の際にはぜひお立寄りください。

「中通島」には3つの大きな港があり、長崎、佐世保、福岡からも訪れることができます

「中通島」には3つの大きな港があり、長崎、佐世保、福岡からも訪れることができます
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上五島の中心である「中通島」には北東部の有川港、北西部の青方港、南東部の奈良尾港と3つの大きな港があり、長崎や佐世保、五島南部の「福江島」から訪れることができます。また、博多港を23時45分に出発して翌朝5時40分に青方港に着くフェリーもあります。

船の便数や種類も多く、島内にレンタカー会社やタクシー会社も複数あるため、比較的旅程が立てやすい島といえます。

「キリシタンワンド」以外にも国の重要文化財である「頭ヶ島教会」や「青砂ヶ浦教会」、木造平屋の「江袋教会」など30以上のカトリック教会と史跡がたくさんあり、変わったところではクジラの骨が鳥居となっている「海童神社」などもあります。

起伏に富んだ島内の景色はもちろん、南の島々でも味わえない美しい浜辺が魅力的。たっぷり時間をとって訪れてみてはいかがでしょうか。

みなさまへのお願い

教会や聖地は信者の皆さんにとって大切な祈りの場です。お祈りされている方の邪魔にならないよう静かにご見学ください。特に長崎の教会は過酷な弾圧を耐え、信仰を守り続けた歴史に対する配慮が必要です。くれぐれもマナーを守って見学してください。

祭壇はもっとも神聖な場所です。絶対に立ち入らないようにしましょう。教会後ろの二階部分も立ち入り禁止です。
また、祭壇はもちろん、ミサの撮影はNGです。司祭等のお許しがない限り、撮影・公開するのはマナー違反です。

また、潜伏キリシタン時代からの信仰を守り続けている方々(カクレキリシタン)について、誰彼かまわず聞き出すようなことはおやめください。

※ 見学マナーについては「長崎の教会群インフォメーションセンター」のWEBサイトもご覧ください。

参考文献
長崎游学(2) 長崎文献社
カクレキリシタン オラショ-魂の通奏低音 宮崎 賢太郎/長崎新聞新書
カクレキリシタンの信仰世界 宮崎 賢太郎/東京大学出版会
五島キリシタン史 浦川和三郎/国書刊行会
五島のキリシタン 若松島 古野清人/至文堂

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/10/12 訪問

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