観光だけではない草津温泉。悲しい過去を知る「重監房資料館」

観光だけではない草津温泉。悲しい過去を知る「重監房資料館」

更新日:2017/01/12 09:16

高橋 しゅうのプロフィール写真 高橋 しゅう 総合旅行業務取扱管理者、総合旅程管理主任者
観光地として有名な草津温泉ですが、そこには広く知られていませんが、ハンセン病患者の方の療養所があります。その敷地内に、かつて、重監房と呼ばれた患者への懲罰の為の施設が存在していました。そこでは現代では想像できない人権を無視した重い懲罰が行われていた過去があり、その事実とハンセン病問題への理解促進の為の施設として平成26年に開館したのが重監房資料館です。今回、その全国的にも希少な資料館を紹介します。

収監された方々の証言から知る、知られざる過去の歴史

収監された方々の証言から知る、知られざる過去の歴史

写真:高橋 しゅう

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重監房資料館は、草津温泉の中心地から約3km程離れた国立療養所栗生楽泉園の敷地内にあり、観光客で賑わう中心部とは、異なる木々に囲まれた閑静な場所に建っています。

今回紹介する重監房とは、かつてハンセン病の患者は国の隔離政策により、半ば強制的に療養所に収容されていた過去がありましたが、その療養所内での反抗者や逃亡者を収監する目的で建てられた特別病室の通称で、昭和13年から昭和22年までの9年間にわたり草津の地に存在していました。

その資料館内では、現代では確実に治るようになったハンセン病についての解説や、患者の隔離政策についてのこと、そして重監房における収監者の証言の映像やパネルによる展示、発掘調査による出土品、さらにリアルに造られた実寸大の監房の再現展示がされています。それらの展示、映像を見ながらの見学により、ハンセン病患者の差別や偏見の苦悩、そして重監房に収監された方々が、いかに過酷な環境の中での日々であったかを、見て体感することができます。

写真は、収容者の方々の名前(一部伏せられています)と、収容理由及び、過酷な日々の証言がパネルで展示されています。そこは、日本のアウシュビッツとも称される人権を無視した劣悪な環境で、多くの方々は大した理由もなく収監されていたそうです。そして、ここは多くの方々が亡くなった施設でもありました。資料館を見ることにより、このような場所が国内に存在していた事実を知るとともに、悲しい過去ではありますが、事実を知る大切な場所であると感じることができます。

高い塀と何重もの扉で閉ざされた特別病室と言う名の監獄

高い塀と何重もの扉で閉ざされた特別病室と言う名の監獄

写真:高橋 しゅう

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館内のメインの展示ともなっているのが、重監房と呼ばれた特別病室の再現展示です。ここでは重厚な高い塀で囲まれた監房の様子が、リアルに再現されています。塀の中を進みながら見学すると、高い塀に囲まれ、さらに何重もの厚い鉄の扉をくぐった中にある特別病室の内部の様子を見ることができます。

実際に塀の中に入ってみると厳重に囲まれた中と外は簡単に人の出入りは出来ず、病室と言うには程遠い、正に監獄そのものであると実感できます。また当時、患者に提供されていた食事の様子も再現・展示されていますが、それはとても質素で、しかも懲罰の意味も含めて食事1回分は抜かれ、1日2食しか提供されていなかったとのことです。

冬には氷点下20度にもなる過酷な環境

冬には氷点下20度にもなる過酷な環境

写真:高橋 しゅう

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厚い扉で閉ざされた監房には、僅かな外光の入る窓と、食事を出し入れする小さな取り出し口だけしかなく、室内には電球も無く昼間でも薄暗い空間となっています。

ここでは冬の時期の様子も再現されています。この写真のように監房内は雪が吹き溜まり、冬の草津は時に氷点下20度にもなるほどの厳寒の地でもありました。監房には日差しも殆ど入らず、さらに窓にはガラスもありませんので外気がそのまま入ってくる構造です。暖房も無い病室では、証言によると布団が凍るほどの寒さであったとのことです。そしてこの過酷な環境の中で多くの方々が、亡くなられた事実があります。

重監房跡地の出土品から知る痕跡

重監房跡地の出土品から知る痕跡

写真:高橋 しゅう

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資料館内では、重監房跡地の発掘調査により出土した遺物や発掘調査の様子が展示されています。実際の監房で使われた建材、監房で使われていた南京錠、そして収監者が使っていた食器、出土した個人のものと思われる眼鏡などがパネルでの解説とともに見ることができ、それらの展示品からも、過酷で劣悪であった環境を想像することができます。

また、展示室内ではハンセン病患者の方の隔離政策や、重監房の建設から廃止に至るまでの事、各地の療養所内でのこと等、ハンセン病と療養所に関する歴史についても解説されており、現在に至るまでの国の政策や、各地であった環境改善運動の流れについても知ることができます。その他、収監者の証言映像等もモニターで見ることができ、よりリアルにその過去を知ることができます。

実在した重監房跡地の見学も必見です。

実在した重監房跡地の見学も必見です。

写真:高橋 しゅう

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資料館を見学した後には、実在した重監房跡地の見学もされることをお勧めします。資料館も跡地も栗生療養所の敷地内にありますが、少し離れた場所に位置していますので徒歩での移動となります。

かつて実在した重監房は、過去に人知れず取り壊され、現在はその基礎部分を残すのみとなっています。資料館を見学してその概要を知った上で、実際その現場を見学すると、館内で再現されていた建物の様子と、跡地に残る基礎部分の様子を重ね合わせ見ることができ、よりわかりやすく、より深くそのことを理解できることと思います。

そして、木々に囲まれた寂しくひっそりとした場所に、かつての悲しい過去があったことを改めて感じることができると思います。その過去の遺構を発掘、保存して広く公開した施設が今回紹介致しました重監房資料館です。

華やかな観光地だけでない草津。訪れる価値のあるスポットです。

重監房資料館は、草津温泉の中心地から少し離れた場所に位置していますが車やタクシーで、温泉街から5〜10分程度と簡単にアクセスできます。

温泉地の賑わいも楽しい草津温泉ですが、少し違った角度から草津を知り、広く知られていなかった事実に触れて見るのも旅の想い出になることと思います。ここでしか見ることのできない希少な施設は、時間をとって訪ねてみる価値があります。無料で見学できますので気軽に訪ねてみてはいかがでしょうか。

尚、重監房資料館及び重監房跡地は、個人の見学は4月26日〜11月14日までとなります。それ以外の冬期間は団体予約のみとなります。また毎週月・火曜日(祝日の場合は翌日)及びその他祝日の翌日は休館日等見学出来ない日もありますので、詳細はMEMO欄の重監房資料館サイトより確認してお出かけ下さい。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/10/02 訪問

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