写真:鷹野 圭
地図を見る植物たちが軒並み葉を落とし、スッキリと開放的になった真冬の多々良沼。その畔に目を向けてみると、そこにいるのは数え切れないほどの渡りのカモたち……。写真を拡大してみるとよくわかると思いますが、手前の岸辺はほとんどカモやバンたちに埋め尽くされてしまっています。これが多々良沼の冬のスタンダードであり、その数の多さに初見ではびっくりさせられることでしょう。主に見られるのはマガモやコガモ、ヒドリガモ、オナガガモ、オオバンなどが主体。岸辺からやや離れたところにはカイツブリの姿も見られます。運が良ければ、パンダのような白黒模様で可愛らしいカモ ミコアイサが見られることもありますよ。
彼らがこれだけ多く岸辺に集まるのは、浅瀬の水底に生える藻などを食べることが目的です。そのため、時にはシンクロナイズドスイミングよろしく水面で逆立ちになることも! 都心の池ではあまりお目にかかれませんが、ここではそうした愉快な姿もごく当たり前のように目にします。
また、こうしたたくさんのカモたちを狙って、上空にはオオタカなどの猛禽類が頻繁に現れます。カモにとっては恐ろしい天敵である猛禽ですが、勇ましい顔つきと優雅に舞う姿はバードウォッチャーたちの憧れの的。ぜひ、双眼鏡持参でお楽しみください。
写真:鷹野 圭
地図を見るカモだらけの岸辺を歩いていると、さっそく白鳥たちが姿を現しました。写真に写っているのはコハクチョウ。「コ(小)」とはいったものの、その大きさは全長1メートルを優に越し、抜群の存在感で見落とすことはありません!
白鳥たちはカモと同じく、水底の藻などをクチバシで器用に削り取って食べます。そのため、上に挙げたカモたちのように岸辺に集まっていることが多く、水中に首だけを突っ込んで食事する光景が見られますよ。ですので、バードウォッチングでよく用いられる高価な望遠レンズなどはなくても大丈夫! コンパクトデジカメでも結構鮮明な画像が撮れるはずです。
また、白鳥は群れで行動することが多く、時には数十羽に及ぶこともあります。こうして集まっているシーンだけを切り取ると、到底関東地方の一角とは思えないかも? ちょっとした北国気分を堪能いただけることでしょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る多々良沼の西側に位置する浮島弁財天の近くでは、岸辺で休憩する白鳥の群れをよく見かけます。野鳥でありながら(あまり好ましくはないという意見もあるかと思いますが)エサやりなどによってすっかり人に慣れてしまった白鳥たちは、岸辺に人が大勢近づいても滅多に逃げることはありません。そのため、写真のように思い切り近くで観察できてしまうこともしばしば。ちなみに写真の個体はオオハクチョウで、そのサイズゆえに結構なインパクトがあります。
こうして間近で顔を観察していると、頭の形にしろクチバシにしろ、都内の公園などでも見るカルガモやマガモなんかとよく似ていることに気づくはずです。それもそのはず、実は白鳥は立派なカモ科の鳥。ゆえにオオハクチョウは“日本最大のカモ”ということになるわけです。図鑑などで普通に紹介されている話ではありますが、こうして至近距離から直接見てみるとより深く納得できます。
ちなみにオオハクチョウとコハクチョウの差は、名前の通り全体のサイズに差があるものの、メジャーで測れるわけでもないのでそれだけでは非常に判断が難しいです(汗)。識別のポイントは、クチバシの黄色い部分の形と大きさ。この黄色い部分がクチバシの先端に向かって鋭角状に大きく食い込んでいるのがオオハクチョウ、黄色が小さく尖っていないのがコハクチョウです。覚えておくと役立ちますよ。
それにしてもこのオオハクチョウの顔……一見ひょうきんなように見えてちょっと怖いカモ? 実際、近付き過ぎて噛まれた観光客もいるそうですので、刺激しないように一定の距離を保ち、手を出したりはしないでそっと観察するように心がけましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真は陸に上がったオナガガモの大群。沼の北西側にある草原で撮影したものです。この辺りは冬場になると白鳥を見るために多くの人が集まり、エサをもらえるためかごく近くまで寄ってきます。手を伸ばせば容易に触れられそうなほどの至近距離。気づけば、四方八方をカモに囲まれているなんていうことも……! とはいえそこは野鳥ですので、追いかけたりすると写真のように一斉に飛び立ってしまいます。しかし、よほどここがお気に入りなのか、別の場所に逃げることはなく再びここに戻ってきます。そして、老若男女を問わず人を見つけてはエサをねだるように近づいてくるのです。
野鳥のエサやりは衛生面や生態系の面から、問題点が多いのは間違いないところです。一方で、首都圏在住の方がここまで近くで野生のカモを見る機会はそうそう無く、自然を身近で体感するには良い機会といえるでしょう。特に、一斉に羽ばたき上空へと舞い上がる姿は、その羽音の大きさもあって迫力満点! はるばる遠い北国からやってくる、渡りのカモの力強さに驚かされることでしょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る白鳥を含めて水鳥の飛来地として有名な多々良沼ですが、岸辺には広いヨシ原やススキの原っぱ、森林が広がり、写真のような小鳥も冬場になるとかなり多く見られます。ちなみに写真の鳥はシメ。スズメより少し大きいくらいで、首都圏でも自然度の高い公園ではそれなりに姿を見かける小鳥。大きく太いクチバシでエノキなどの種子を割って食べます。顔の模様が泥棒のようだとまれに言われますが(笑)羽の色合いは美しく、バードウォッチャーにはなかなか人気の冬鳥です。
このほか、沼の南東側にあるススキの多い乾燥した草原には、ほのかな桃色が美しいベニマシコや、スズメと見間違えそうなほど大きな群れを作って移動するホオジロが。東側の小さな池のあるスペースには頻繁にカワセミが現れます。沼と公園の広さもさることながら、暮らしている鳥の種類も小鳥から水鳥、猛禽類に至るまで大変幅広く、生物多様性の豊かさを深く実感します。
白鳥の観察・撮影が済んだら、沼をぐるりと一周しつつ色々な鳥を探してみましょう。
多々良沼は面積約40ヘクタール、周囲約6キロにおよぶとても広い水場です。徒歩ですと1周するだけでも1時間以上は優にかかりますし、足腰にも結構な負担がかかります。もちろん徒歩だからこそ見えてくる面白さもありますが、体力に自信がない方は自家用車を有効に利用したり、随所にあるベンチや東屋などで適宜休憩をはさみつつ、ゆっくり見て回るといいでしょう(無理は禁物です)。
水辺を中心にヨシ原あり、背丈の低い草原あり、森林ありと色々な環境がありますので、時間をかけてでも極力全体を見て回り、それぞれの環境ごとに暮らす鳥たちの姿を観察・撮影してみましょう。どうしても難しい、時間がないという場合には、せめて白鳥だけでも見ておきましょう。歩道から沼までの距離が近い、沼の北東側がおススメ! 小さなカモたちと一緒に食事をする白鳥が見られますよ。
【アクセス】
東武伊勢崎線「館林駅」より徒歩約50分
東武伊勢崎線「多々良駅」より徒歩約30分
この記事の関連MEMO
- PR -
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2024/10/9更新)
- 広告 -