まるで建物博物館!サンクトペテルブルグのネフスキー大通り

まるで建物博物館!サンクトペテルブルグのネフスキー大通り

更新日:2015/11/02 14:47

かつてのロシア帝国の都サンクトペテルブルグ。その中心部をほぼ東西に通るネフスキー大通りには帝政ロシア時代を彷彿とさせる美しい建物が建ち並んでいます。
歩くだけでわくわくするようなこの通り、実は18世紀から20世紀初頭にかけてのさまざまな建築様式を一度に見ることができる、まるで建物博物館のような通りでもあるのです。
今回はその中でも特に有名な歴史的建物をピックアップしてご紹介しましょう。

文豪や芸術家が集ったサロン、ベナルダキ邸

文豪や芸術家が集ったサロン、ベナルダキ邸
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モスクワ駅を背に西に向かってしばらく歩いていくと、右側に黄色い外壁にローマ風の列柱が並ぶ豪華な建物が見えてきます。これはベナルダキ邸。

ローマ風の列柱や壁に装飾をつけるのは、クラシック様式の特徴です。クラシック様式はサンクトペテルブルグでは18世紀後半、エカテリーナ2世の時代から19世紀にかけて流行しました。

ベナルダキ邸は、現在はホテルなどの入った複合施設となっていますが、かつてここはロシア有数の文学サロンとして知られていました。ロシアの文豪ドストエフスキーやトルストイもこの邸宅で開かれた朗読会で新作を発表しています。
さまざまな絵画の展覧会も開かれていて、現在、モスクワのトレチャコフ美術館にあるレーピンの代表作「イワン雷帝とその息子イワン」、この絵が初めて公開されたのもこの邸宅でした。怒りのあまり息子イワンを殴り殺してしまったイワン雷帝。自らの所行に畏れおののく表情は衝撃的で大きな反響を呼び、展覧会には4万5千人もの人びとが詰めかけたといいます。

日本と意外なご縁があるエリセーエフ商店

日本と意外なご縁があるエリセーエフ商店
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さらに西へ向かって、フォンタンカ運河にかかるアルチニコフ橋を渡ると見えてくるのが、エリセーエフ商店(エリセエフスキー)です。
ガラス窓が高く伸びた重厚な印象の建物で、正面を飾る彫像は「産業」「貿易」「芸術」「科学」の象徴。こちらは20世紀初頭のアール・ヌーヴォー、モダン建築を代表する建物として知られています。

エリセーエフ商店を経営していたのはロシア屈指の富豪として知られたエリセーエフ家。実は日本と意外なつながりがあります。
19世紀末、サンクトペテルブルグのエリセーエフ家に一人の男の子が生まれました。名前はセルゲイ・エリセーエフ。彼はパリ万博をきっかけに東洋へ強い関心を持つようになり、やがて明治時代の日本に渡って東京帝国大学に入学。その後、欧米における日本研究の基礎を築きました。夏目漱石の門下でもあり、漱石からは「紅毛三四郎」と呼ばれたそうです。元駐日アメリカ大使のライシャワー氏や、日本文学の研究者として知られるドナルド・キーン氏も彼の教えを受けているそうですよ。

エリセーエフ商店は高級食料品店。ショーウインドウにはかわいらしいお人形が並んでいます。豪華な内装も見ものですから、ぜひ中に入って雰囲気を楽しんでみて下さい。

願いが叶う? 猫の像

願いが叶う? 猫の像
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エリセーエフ商店の横は歩行者天国となっていてカフェなどが続いています。 建物ではありませんが、 この歩行者天国に入って右手の壁の上方に小さな猫の像があります。
猫の名前はワセリサ。

第二次世界大戦中、当時レニングラードと呼ばれていたサンクトペテルブルグはナチスドイツの軍隊に抱囲されます。その期間は900日にもおよび、爆撃や飢餓によって多くの市民が犠牲となりました。その数は70万とも100万ともいわれます。人びとは生き抜くために、犬や猫を含めたあらゆる動物を食料としました。
1944年1月、ようやく抱囲は解かれましたが、猫さえも食べ尽くされた街にはネズミが大発生し、人びとを困らせました。そこで近郊の村からネズミ駆除のために猫が送り込まれました。
ワセリサはこの出来事を記念した像。

街の悲しい記憶と、二度と悲惨な戦争がおこらないようにとの願いが込められているのでしょう。

ワセリサの像の下では、像に向かってコインを投げる人の光景がよく見かけられます。
ワセリサの乗っている台にコインが乗ると願いが叶うのだとか。
サンクトペテルブルグを訪れた時は挑戦してみて下さいね。

地球儀の塔が印象的な旧シンガー商会(ドーム・クニーギ)

地球儀の塔が印象的な旧シンガー商会(ドーム・クニーギ)
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エリセーエフ商店の左手にはやがてカザン聖堂が見えてきます。その向かいにあるのが、旧シンガー商会の建物。てっぺんに地球儀のついた塔が印象的な建物です。建築は1904年、エリセーエフ商店と並ぶモダン建築の代表作として知られています。

この建物は、現在は市内でも有数の大型書店ドーム・クニーギとなっています。1階には絵はがきやチョコレートなどのお土産やかわいらしいロシアンテイストの文具も売っていて、お土産探しにもいいかも。
また、ロシアは児童書が充実していて、きれいな挿絵の絵本がたくさんあります。眺めるだけでも楽しいので、絵本好きな人にはオススメです。

華麗なロシア・バロック様式の典型、ストロガノフ宮殿

華麗なロシア・バロック様式の典型、ストロガノフ宮殿
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さらに通りを進んでネフスキー大通りの終点も近づいてきたあたり、モイカ川の手前左側にストロガノフ宮殿があります。ここまで来れば、エルミタージュ美術館もすぐ近くです。

ピンク色の外壁をした、宮殿のような建物はストロガノフ邸。この家を建てたストロガノフ伯爵家は帝政ロシア時代の大富豪。有名なロシア料理、ビーフ・ストロガノフはこの伯爵の名前にちなんでいます。

建物は18世紀半ばの建設。華麗なロシア・バロック様式の好例として知られています。
柱の下に見える人物像はギリシア神話に登場するアトラス神をモチーフにしたもの。同じようなアトラスの装飾は冬宮(エルミタージュ美術館)やツァールスコエ・セローのエカテリーナ宮殿にもみられます。実はこれらは同じイタリア人建築家ラストレッリの手によるもの。
ストロガノフ邸は、現在はロシア美術館の分館となっていて、内部も見学することができます。

おわりに

ネフスキ−大通りはロシアで最も愛されている通りの一つといわれます。
通りはたくさんの人が行き交い、いつもにぎやか。ウィンドウショッピングや街行く人のファッション観察も楽しめます。まっすぐな道ですから迷う心配もありません。
ヨーロッパ風でありながら、さまざまな時代様式が入り交じり、ヨーロッパのどこかにあるようでどこにもない不思議な街並み。サンクトペテルブルグ独特の景観を満喫できる通りです。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/08/01−2015/08/06 訪問

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