写真:井伊 たびを
地図を見るJR常磐線・馬橋駅より徒歩5分。千葉県松戸市馬橋に鎌倉時代に創建されたとされる、水戸街道きっての古刹、法王山萬満寺(まんまんじ)がある。この寺は全国で唯一の中気除けの不動尊として、また痘瘡除け(とうそうよけ)の寺として、古くから人々の信仰をあつめている。
ところで、「中気」とは、今でいう「脳卒中」のことである。脳卒中は、ガン、心臓病についで死因の第3位でもある誰にとっても恐ろしい病のひとつだ。一方「痘瘡(とうそう)」とは、「天然痘」のことである。今ではその病名を耳にすることもなくなったが、江戸時代には幼少時に誰もがかかる病といわれ、死亡率も高かったことから、当時の人々は麻疹(はしか)と同じほど、この病も恐れていたようだ。
こちらの寺では、毎年2回の祭礼時と正月の三が日には仁王門が開帳され、「仁王さまの股くぐり」という珍しい行事が行われている。仁王さまとは仁王門に安置され、運慶作とも伝えられる「阿(あ)」「吽(うん)」2体の金剛力士像のこと。この勇壮な立像のしっかりふんばった両足の間をくぐり抜けると、むこう1年病魔や災難も除け、子どもはすくすく育つといい伝えられてきた。
この萬満寺の厄除け信仰がいつごろ生まれたのか、はっきりとしたことはわからないようだが、江戸時代の紀行文『成田の道の記』<寛政10年(1798年)>には、「道の折れ曲がる角に萬満寺あり。参詣す。これ世にしれる痘瘡(当時は「もがさ」)の願に、江戸よりも参詣の人、草鞋(わらじ)を借りて御礼にまた草鞋を添へ参る由、此の仁王尊霊験いちじるしとぞ」という一節があるとか。このころすでに遠方よりの参詣者で賑わっていた様子がうかがえる。
また、地元では「土地の権力者であった千葉家系某家の娘が痘瘡にかかったが、仁王さまの股くぐりで御利益を得て助かった」などという言い伝えも残っているとか。
ところで、萬満寺の「草鞋参り」は昭和40年代まで続いていたようだが、防火上の理由からとり止めとなっている。今日では毎年3月、10月の27、28、29日の祭礼時と、正月三が日に「仁王さまの股くぐり」が行われ参詣者で賑わっている。
写真:井伊 たびを
地図を見る萬満寺は建長8年(1256年)、小金城主千葉頼胤により大日寺として創建された。その後将軍足利義満の時代に、関東管領足利氏満が堂宇を建立。臨済宗に改宗し、義満と氏満のそれぞれの“満”をとり、萬満寺と改称された。
写真:井伊 たびを
地図を見る水掛不動尊像は、仁王門をくぐりぬけ、すぐ左手に建つお堂に安置されている。
写真:井伊 たびを
地図を見る「仁王門」の左右に、国指定重要文化財の木造金剛力士像が安置されている。運慶作とも伝えられているが、真贋のほどは定かでないようだ。
写真:井伊 たびを
地図を見る仁王さまの股をぐれば、むこう1年病魔や災難も除け、子どもはすくすく育つといい伝えられている。
「仁王さまの股くぐり」とは、まことに珍しい風習だ。
さしたる治療法も特効薬もなかった時代には、難病に対して藁にもすがる思いで神頼み。何とか無事を得ようとしたのだろう。
ところで、「脳卒中」の予防のひとつとして「運動をすること」がある。秋口から春にかけて、誰しも屋内で過ごしがち。ちょうど、そのころ戸外へ出て身体を動かせば、万病予防にもなる。
10月から3月にかけて、お寺へ参詣して、「仁王さまの股くぐり」することで、血のめぐりも少しはよくなる。これは、医学的に見て理にかなっているともいえそうだ。
ぜひ、来る年の「初詣」に「仁王さまの股くぐり」はいかがだろう。
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(2024/12/12更新)
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