写真:Lady Masala
地図を見る1976年にオープンしたという比較的新しいロンドン博物館ですが、ここには、旧石器時代から、2012年に開催されたロンドンオリンピックに関する展示まで、ロンドンの歴史を知る上では欠くことのできない貴重な資料が収蔵されています。
中世ロンドンを焼き尽くしたという大火を体験できるスライドショーや、ファッショナブルな百貨店として知られる「セルフリッジ」に初めて設置されたというアール・デコのエレベーターなど、興味深い展示が盛りだくさん。見ていて飽きることはないでしょう。
数多くの展示のなかでも特に目を引くのは、黄金の馬車。金融街としても知られるロンドンの特別区、シティ・オブ・ロンドンでは、毎年11月の第2土曜日に「ロード・メイヤーズ・ショー」が行われます。このショーのハイライトは、黄金の馬車に乗った新市長のパレード。伝統的な衣装に身を包んだギルド関係者らも繰り出して、その行列はとても華やか。
このメイヤー(市長)とは、ロンドン市長のことではありません。伝統を重んじるシティでは、名誉職としてのメイヤーを年に一度選出するのだとか。博物館には、その就任パレードで実際に使われるという馬車が展示されています。一見の価値があることは間違いないでしょう。
写真:Lady Masala
地図を見る博物館には、ヴィクトリア朝の街並を再現した 「Victorian Walk(ヴィクトリアン・ウォーク)」という展示がありますが、ここで、ヴィクトリア朝について少しおさらいしてみましょう。ヴィクトリア朝とは、ヴィクトリア女王がイギリスを統治していた1837年から1901年の期間を示します。産業革命によって経済が発展し、優れた芸術、文学作品が描かれた時代でもありました。また、大英帝国の絶頂期であるとみなされていることから、大多数のイギリス人は、郷愁とロマン、悪と矛盾とをはらむ特別な時代として認識しているそうです。
「シャーロック・ホームズ」シリーズでお馴染みのコナン・ドイル、「クリスマス・キャロル」で知られるチャールズ・ディケンズは、この時代を代表する作家です。彼らはヴィクトリア朝のロンドンを活き活きと描いています。
霧のたちこめる薄暗い夕闇に燈るオレンジ色のガス灯。キャブとよばれる二輪馬車で事件現場へと急ぐホームズ。ドイルが描くのは、中産階級の贅沢で優雅な生活。
一方で、産業革命により農村から労働者として都会に出てきた人々の、貧しく過酷な生活を力強く描くディケンズ。このように相反する価値観が交錯した時代、それがヴィクトリア朝なのです。
このような時代背景を思い描きながら展示を見学すると、感激もよりいっそう深まるのではないでしょうか。
写真:Lady Masala
地図を見るさぁ、ヴィクトリア朝の街並みを歩いてみましょう。街の入り口には「Toyshop(おもちゃ屋)」のショーウィンドーが見えます。おままごと用のティーセットがありますが、この時代の子どもたちは、本物そっくりな磁器のおもちゃで遊んでいたようです。
お隣の「Tobacconist(タバコ屋)」の前には、キルトで正装したスコットランド人の男性が立っているではありませんか。この人形はタバコ屋の看板。スコットランド人、とくにハイランド出身者は嗅ぎ煙草を好むそうで、人形は、左手に煙草入れを持ち、右手で粉を掴むポーズをとっているのだとか。
「Pharmacy(薬局)」のカウンターには、薬のビンがたくさん。アンティーク好きなら思わず手を伸ばしたくなるようなヴィクトリアンボトルの数々に、つい、うっとりとしてしまいそうです。
街角の「Public urinal(公衆トイレ)」まで再現してあるという凝りようですが、ひときわ目を引くのは「Pawnbroker(質屋)」のショーウィンドー。ティーセットやシルバーのカトラリーなどが美しくディスプレーされています。一瞬、雑貨屋の店先かと見まごうほどですが、日用品を質に入れなくては、その日を過ごすことのできなかった貧しい人々が存在したということを、心に留めておきたいものです。
ヴィクトリアン・ウォークには、今回ご紹介した以外にも、時代を象徴するお店がまだまだたくさん並んでいます。そこを歩いていると、雑踏の音や人々の話し声までもが聞こえてきそうです。
ヴィクトリア朝にロマンを感じる人、アンティークを愛する人、歴史が好きな人、そして、ロンドンに興味がある人なら、この博物館を満喫することができるでしょう。
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(2025/1/20更新)
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