「大蛇ぐら」に息を飲む!日本百名山「大台ケ原」東大台コースを歩く

「大蛇ぐら」に息を飲む!日本百名山「大台ケ原」東大台コースを歩く

更新日:2021/06/12 11:03

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
紀伊半島の南東、吉野熊野国立公園に属する日本百名山「大台ヶ原」は、200万年以上前にできた最高峰を「日出ヶ岳」とする台地状の山岳地帯です。日本有数の多雨地帯で、周囲は豪雨に削られた『ー(くら)』と呼ばれる切り立った断崖や深い谷に囲まれています。「東大台コース」は、登山としては比較的緩やかな起伏が続く台地のてっぺんを歩く初心者向けで見どころの多いコースです。静寂の森の中、絶景を目指して歩きませんか。

大展望の大台ケ原最高峰「日出ヶ岳」山頂に立つ

大展望の大台ケ原最高峰「日出ヶ岳」山頂に立つ

写真:和山 光一

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大台ヶ原は東大台と西大台に大別され、原生的な森林が広がる西大台は利用調整地区のため、入山には事前申請が必要です。今回は、大台ケ原のメジャースポットが目白押しの「東大台コース」をご紹介します。

まずは大台ケ原ビジターセンター横の登山口から、大台ケ原の主峰・日出ヶ岳山頂(1695m)を目指します。ビジターセンターでは大台の自然や文化、森が抱える課題を紹介し、また登山の情報ももらえるので是非立ち寄ってください。

大展望の大台ケ原最高峰「日出ヶ岳」山頂に立つ

写真:和山 光一

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苔探勝路といいますが笹の多くなった苔むす遊歩道は、鹿の進入を防ぐ柵が設置され、その中を歩きます。分岐から中道の木漏れ日射す静かな森の中を歩くこと40分ほどで日出ヶ岳鞍部に出る。正面に木製のテラスがあり、眺めも素晴らしいのですがさらに眺望を堪能するため、さらに山頂への急な木の階段を上ること15分で山頂に到着します。

大展望の大台ケ原最高峰「日出ヶ岳」山頂に立つ

写真:和山 光一

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視界を遮るものがない丸太を組んだ山頂展望台からは、雲が間近に感じられ、雲海ごしの大峯連山や白く波立つ熊野灘を一望できる360度の大パノラマが楽しめます。天気のよい早朝には、遥か彼方に富士山が見えることもありますよ。

ただし、“1年400日雨が降る”といわれている大台ケ原は、海からわずか20KMで急に切り立ち、その斜面を太平洋の湿った空気が吹き上がって急激に冷やされて雲になり、大雨を降らせます。その為、雨や霧の日が多いので、晴天でも霧で見えないこともしばしばといいますので海が見えたらラッキーと思って下さい。

幻想的なトウヒの立ち枯れが続く「正木峠」や「正木ヶ原」

幻想的なトウヒの立ち枯れが続く「正木峠」や「正木ヶ原」

写真:和山 光一

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シロヤシオの木立の間の緩やかな木の階段を上がり、日出ヶ岳に次いで標高が高い「正木峠」へ。峠から木道を下ると、左右の笹原一帯に白い立ち枯れの木々が目立ちます。正木峠は、大台ケ原で最も神秘的なムードが漂うエリアです。

大台ケ原のイメージとしてあるこの光景は、昭和34年(1959)の伊勢湾台風の直撃で、かつての美しいトウヒ林の多くの木が倒れ、原生林の地面を覆っていた苔が笹に変わってしまいました。その笹を食べるために集まってきた鹿が、笹だけでなく木の皮もはがして食べてしまい、一面トウヒの立ち枯れた樹木や倒木が広がる荒野になってしまったのです。

幻想的なトウヒの立ち枯れが続く「正木峠」や「正木ヶ原」

写真:和山 光一

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ここからトウヒの枯木立にはさまれた坂道を下って「正木ヶ原」へ。トウヒの枯木立と倒木は、まさしく森の墓場『白骨林』です。大台ヶ原の象徴ともいえるトウヒ林の真中に広がる草原で、緑のじゅうたんを敷きつめたようなミヤコザサと白亜の支柱のような枯木立が織り成す景観はミステリアスに感じます。

意を決して鎖で囲われた「大蛇ぐら」の先端に立つ

意を決して鎖で囲われた「大蛇ぐら」の先端に立つ

写真:和山 光一

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正木ヶ原から先は平坦な道が続き、尾鷲辻には東屋が立っているので昼食休憩を摂ることもできます。さらに緩やかな上り下りを経て苔むした原生林が広がる牛石ヶ原に出ます。ここには、神武天皇像やミヤコザサの平原に魔物を封じ込めたという伝説の「牛石」があります。

意を決して鎖で囲われた「大蛇ぐら」の先端に立つ

写真:和山 光一

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尾鷲辻から30分、大蛇ぐらへの分岐から岩尾根の狭い道を10分ほど下るとコース中最大の見どころ、大台一の絶景ポイント「大蛇ぐら」にでます。大蛇ぐらは大峯山系の大パノラマも素晴らしいのですが、その名の通り、蛇の頭の形をした大岩とそれに連なる大蛇の背のような岩場に乗った感じの立地がスリリングです。ーの先端に立てば、眼下の谷まで高低差800Mの大絶壁は目もくらむばかりで、鎖の柵はあるものの足を滑らせたら落下してしまいそうです。

意を決して鎖で囲われた「大蛇ぐら」の先端に立つ

写真:和山 光一

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大蛇ぐらから対岸の断崖の中に、日本でも有数の落差を誇る日本の滝百選「中の滝」が見えます。その隣には「西の滝」も見えますが、遠くてその迫力が伝わらないのが残念です。

体力に自信のある方は「シオカラ谷」へ

体力に自信のある方は「シオカラ谷」へ

写真:和山 光一

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展望を楽しんだら分岐点まで戻り、シオカラ谷へ至る急坂を下ること20分、大自然の清流、シオカラ谷の渓谷美が堪能できる長さ20mほどの「シオカラ谷」のつり橋に出ます。河原に降り、清流に触れて一息つけば川のせせらぎに癒されますよ。

橋の架かる谷の周辺は、シャクナゲの群生地で、5月中旬から下旬が見ごろです。

体力に自信のある方は「シオカラ谷」へ

写真:和山 光一

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シオカラ谷からは急な上りが続き、大台ケ原ビジターセンターに戻ります。コースの最後に難所が待ち構えているようでこたえます。体力に不安な方は尾鷲辻まで戻り、ところどころに石畳がある起伏のゆるやかな道でスタート地点に戻ることもできますよ。一周約9km、休憩を含め約4時間の東大台コースです。

ひなびた三峡の湖畔に湧く、秘湯「山鳩湯」で疲れを癒す

ひなびた三峡の湖畔に湧く、秘湯「山鳩湯」で疲れを癒す

写真:和山 光一

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国道169号を奈良方面に戻り、大迫ダム沿いに右折、走ること4KMで目的地「入之波温泉湯元 山鳩湯」に到着します。東西に大峰山脈と大台ケ原の台高山脈、北に吉野の山々が囲み、その山あいにひっそりと湧く入之波温泉は、まさに秘湯と呼ぶにふさわしい温泉です。

ハトの谷を150Mまでボーリングして湧き出た含炭酸重曹泉が毎分500ℓ湧出し、神経痛などによく効く炭酸泉が総杉丸太造りの大浴場と巨大なケヤキで作った丸木の露天風呂に注がれていて、湯船からは大迫ダム湖畔のパノラマが広がります。

「入之波」と書いて「しおのは」と読む難読な地名ですが、温泉としての歴史は古く、平安時代に開湯され、元禄時代には湯治客でにぎわっていたといいます。浴場で目を引くのが湯船をコーティングする石化した温泉成分です。湯の花が層をなして固まったもので、総杉丸太の湯船がまるで鍾乳石でできているかのようです。また淡黄褐色の湯も、いかにも”成分が濃厚ですよ”と言っているようで期待が高まります。少しぬるめの39℃の湯は長湯向きで、じんわりと温泉成分が体に染み込んでいくようです。大台ケ原を歩いた後に、ドライブを兼ねて訪れたい関西を代表する秘湯です。

大台ケ原へは車が絶対便利!

近畿日本鉄道から「大台ヶ原 探勝日帰りきっぷ」というお得なきっぷが発売されていますが、近鉄阿倍野橋から特急で大和上市駅まで1時間10分、大和上市駅から奈良交通バスで約2時間かかることを考えると、車で行くことをおすすめします。

大阪市内から阪神高速、近畿道・南阪奈道路と走り国道169号で一路大台ケ原を目指し、大台ケ原ドライブウェイ入口まで2時間の距離です。あとはドライブウェイといいながらクネクネの山道を20Km30分かけて走ると、大台ヶ原駐車場に到着します。

大台ケ原は今回紹介した東大台と2007年9月に全国初の利用調整地区となった西大台の二つのエリアがあります。一日で2エリアをまわるのは健脚の人でないと難しいので、日を分けるか、心・湯湯治館大台ケ原や先に紹介した入之波温泉湯元 山鳩湯等に宿泊するかして、これら大台ケ原の雄大な自然を味わって下さい。(※西大台は入山制限されておりインターネットや電話での入山予約が必要です。)



掲載内容は執筆時点のものです。 2014/10/11 訪問

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