憩いの宿「沼津倶楽部」、そこは感性が研ぎ澄まされる場所

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憩いの宿「沼津倶楽部」、そこは感性が研ぎ澄まされる場所

憩いの宿「沼津倶楽部」、そこは感性が研ぎ澄まされる場所

更新日:2015/11/20 16:30

小林 里穂のプロフィール写真 小林 里穂 翻訳家、トラベルライター

かつては有数の別荘地として栄えた千本松原に隣接したある一角。北には富士が聳え、西には駿河湾が広がる静岡県は沼津のその場所に、時間の流れをゆっくり感じられる宿、沼津倶楽部があります。静かな環境の中、聞こえてくるのは鳥の鳴き声や松の葉擦れ、そして規則正しい波の音。呼吸は自然と整い、見るもの、聞くもの、口に入れるもの全てを繊細に感じられる場所なのです。そんな憩いの宿、沼津倶楽部の魅力をご紹介致します。

波の音と共に、風が吹き抜ける部屋

波の音と共に、風が吹き抜ける部屋

写真:小林 里穂

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沼津倶楽部にあるのは全部で8室の部屋。それらは全て宿泊棟である新館に設えられています。用意されているのはお布団で休める和室の部屋からベッドやソファーが配置された洋室の部屋まで様々なタイプのお部屋。大きく縁取られた窓を開けると、どの部屋からも目の前に池を望めます。

5cmに設定された池の水深。意図的に作られたその高さはわずかな風をも繊細に感じ、水面に綺麗で細かな波を立てるのです。1階のお部屋の目の前には縁台が、そして2階のお部屋のバルコニーには椅子とテーブルが用意されています。どうか用意されているその場所に腰かけて、静かに波立つその水面に目を落としてみてください。しばらくその綺麗な波の動きを眺めていると、呼吸が整っていくのがわかります。

それぞれ特徴の異なる8部屋がある中、特におすすめしたいのが2階に設置された露天風呂付きの風通しのいい洋室のお部屋。余分な装飾のない気持ちの良いほどシンプルなそのお部屋には、心乱すもの一つなく、外に広がる自然の景色が見違えるほど鮮明に目に映ります。窓を開けると風が気持ち良く、鳥の鳴き声と、松の葉擦れと、そして心地いい波の音が、テレビをつけることを忘れさせてくれます。

サロンで過ごす、寛ぎのひととき

サロンで過ごす、寛ぎのひととき

写真:小林 里穂

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国の登録有形文化財に登録されている和館。明治40年に建てられたこの建物は「数奇屋造り」と呼ばれ、お茶室の建築模様を建物全体に取り入れた、まるで建物全体が一つの工芸品であるかのような造りになっています。

元々千人茶会が開けるよう造られたこの和館には、大きさの異なる様々な種類の部屋が迷路のように配置されていて、入り組んだその建物内を探索するだけでも楽しい時間を過ごせます。その中でも洋風の椅子やテーブルが配置されたまさに和洋折衷の「サロン(昭和の間)」は、午後のコーヒータイムや食後のデザートを頂く場所として、最高の時を提供してくれます。

サロンが位置しているのは、和館の玄関から入り、左に曲がって、廊下をまーっすぐ歩いて行った先の突き当たり。2種類の網代(あじろ)で構成された天井と、杉の木や椹(さわら)、竹の皮などの多種多様な木材がアクセントとなった重厚な空間があなたを迎えてくれます。昼間は吹きガラスから入る優しい光が部屋を照らし、夜になると「ツーン」という静かな音が部屋の中を包みます。昼と夜とで趣が変わる松のお庭を楽しみながら、その場所に用意されている様々な本に目を通すことも可能です。できればお茶やお茶菓子と共に、その静かな佇まいの中ゆっくり過ごしてみてください。

実はここ、戦後には政治家が集まり、日本国憲法の草案を話し合ったと言われている空間。東京を離れ、ここに集結し、どんな面持ちでそれぞれが握手を交わしたのだろうかーー。その重厚な佇まいに、かつて国を思い議論を交わした代表者達に、思いを馳せずにはいられなくなります。

噛めば噛むほど美味しさが広がる、朝食と夕食

噛めば噛むほど美味しさが広がる、朝食と夕食

写真:小林 里穂

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夕食と朝食共に和館の中にあるレストランで和のコースを楽しめる中、コースの内容はその日にとれたお魚次第。優しい昆布だしの味付けと料理長のセンス溢れるアイディアが、その素材の味を損なうことなく引き立てます。先付けにはじまり、向付や焼き物、強肴や最後の食事に至るまで、余分な味付けは一切なく、噛めば噛むほど素材の味が口の中に広がります。普段はあっという間に食べてしまう食事も、ここでは自然と時間をかけたくなるのです。

余分な飾りのないシンプルなお料理は、全て上品かつ素朴なお皿の上に盛り付けられてきます。それはまるで派手な装飾を嫌った茶人が好んで建てた数奇屋造りの建物そのもの。見た目はほんの少し装飾があるだけの素朴なお料理も、料理の要である「だし」に一番のこだわりと時間が費やされています。あと必要なのはほんの少しのアクセント。お庭に散った落ち葉を料理長自ら拾い上げ、それをお皿の上に散らすこともーー。お料理に対する料理長の愛情が、その味付けから盛り付けに至るまで一皿一皿感じられます。

忙しい普段の生活の中で、時に「お腹を満たすこと」が目的になってしまうこともある食事。しかしここでは見えない箇所に手間暇かけられたその丁寧で繊細なお料理を味わえたことに、舌が満足してくれます。ゆっくりと箸を動かし、それぞれのお料理を時間をかけて味わってみてください。お腹をいっぱいにしなくても、食事に満足できることを気づかせてくれます。

星を見ながらゆっくり浸かる、露天風呂

星を見ながらゆっくり浸かる、露天風呂

写真:小林 里穂

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宿泊棟である新館には、露天風呂、サウナ、そして岩盤浴を一度に楽しめるスパの施設が備わっています。

岩盤浴に使用されているのは、「バドガシュタイン鉱石」というオーストリアで採掘された石。血液やリンパの流れを良くする遠赤外線と、血液を綺麗にし代謝を良くしてくれるマイナスイオンの効果があると言われています。横になりながら、または座って壁にもたれながら、体がじんわりぽかぽかしてくるのを感じてください。サウナのように息が苦しくなることはなく、心地よい汗がゆっくりと体を伝っていきます。

岩盤浴で気持ちの良い汗を流した後に是非入って頂きたいのが、真上に星を眺めることができる露天風呂。ぽっかり切り取られた天井はまるでテレビの画面のようで、少しずつ変わっていく空の景色を眺めながらゆっくりとお湯に浸かることができます。お風呂のお湯に使用されているのは富士山の伏流水。さらさらとして透明度の高い綺麗なお湯は、ずーっと浸かっていたくなるほど心地よく肌になじみます。

自分と向き合う時間を与えてくれる、静謐なお茶室

自分と向き合う時間を与えてくれる、静謐なお茶室

写真:小林 里穂

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リラックスできる様々な空間が用意されている沼津倶楽部の中、一番おすすめしたいのが和館の一番奥にひっそりと佇むお茶室。一見質素で飾り気のないように見える約三畳の小さなお茶室には、我々日本人の琴線に静かに響く、古人の美学と精神が詰まっているのです。

迷路のような廊下を抜けて、やっと辿り着くお茶室。あえて暗くしてある室内では大小様々な白い障子窓に、外の景色がモノトーンの映像となって映ります。木が揺れたり、鳥が横切ったりーー。そんななんでもない風景も、お茶室の中から障子を通して見ると、なんとも味わい深いものに思えるのです。天井は低く、約3畳ほどの広さしかないため、気持ちは自然と落ち着いて、声のトーンも穏やかなものになっていきます。

質素な生活の中であっても、一つでも大事にしているものがあればその人の心は豊かになるように、この何もないようなお茶室も、一流の職人の技と選び抜かれた木材しか使われていないというその事が、その場にいる人の心を豊かにしてくれます。まるで継ぎ接ぎの布のように三種のデザインで構成された天井も、部屋のアクセントとなっている様々な種類の木材も、派手な装飾のないこの空間の中では、控えめながらキラリとその輝きを放ちます。

お茶室だからと言って、必ずお茶を飲まなくてはいけないということはありません。自分の好きな時間に、気の向くままに、是非お茶室へと向かってみてください。あるべきものだけがあるべき場所にある整然としたお茶室では、その佇まいに呼応するかのように、気持ちまで整理されていきます。

呼吸を整えてくれる、沼津倶楽部

普段生活している中で、時間があまりに早く進んでしまうことはありませんか?外の景色は早送りされたかのように色褪せて写り、例えそこにある美しいものも、美しい言葉も、気づかないまま通り過ぎていくーー。必要なのはただ心を落ち着かせてリラックスする時間だけれども、忙しい生活の中だとそれすらままならないーー。そんな時は、慌ただしい生活から少し離れて、時間の流れをゆっくり感じられる場所に身を置くことも時に必要かもしれません。

沼津倶楽部で感じるのはまるで早送りされていた景色が止まったかのような感覚。余分な装飾や情報や騒音などの紛らわしいものが一切ない場所だからこそ、外の景色は鮮やかに目に写り、鳥や風や波の音がBGMのように綺麗な音となって耳に届きます。

テレビを付ける必要もなく、何かに追われることもなく、ただその静かな佇まいに身を置いて、「時間の流れを感じる」という贅沢な時間を過ごせるのです。

サロンも、お茶室も、スパもお庭も、8組という限られた宿泊者のためだけに用意されているようなものーー。まるで「別荘に来た」ような感覚で、例えば本を片手に館内を自由に歩き、お気に入りのスポットでゆっくりと時間を過ごすことができます。

五感を通してあらゆるものを美しいと感じられるこの場所で、心からリラックスする時間を過ごしてみませんか?

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/10/25−2015/10/26 訪問

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