写真:乾口 達司
地図を見る秋篠寺は、近鉄大和西大寺駅から、バスで十分ほどのところにあります。周囲には民家が立ち並び、そのすぐ脇をバスや車が駆け抜けるというのに、森にかこまれた境内に一歩足を踏み入れると、外界の雑音がまったく聞こえません。静寂に包まれた古寺。そんな言葉がぴったりのお寺です。
鎌倉時代に再建された本堂は、国宝に指定されています。堂内の須弥壇の上には数多くの仏像が安置されていますが、注目は、何といっても、美仏の誉れ高い伎芸天立像でしょう。伎芸天は、その名のとおり、諸伎諸芸を司る神仏。その美しい微笑みと立ち姿に、これまで多くの人が魅了されました。
たとえば、作家の堀辰雄は『大和路・信濃路』のなかで「このミュウズの像はなんだか僕たちのもののような気がせられて、わけてもお慕わしい」と賞賛しています。現在、伎芸天は「東洋のミューズ」と称えられています。仏像ファン、必見の仏像です。
写真:乾口 達司
地図を見る本堂の西側には、大元堂が建っています。大元堂の本尊は、鎌倉時代の作である大元帥明王立像です。2.3メートルにおよぶ筋骨隆々の体躯は、六本の腕を持ち、ところどころに蛇が巻きついています。面相は髪を逆立てた忿怒像で、伎芸天が「静」の代表なら、こちらは「動」の代表であるといえます。御開帳は毎年6月6日のみ。当日は、間近にその圧倒的なお姿を拝むことが出来ます。
写真:乾口 達司
地図を見る秋篠寺を訪れた誰もが、境内に敷き詰められた苔に目を見張ることでしょう。しかし、ここは、1135年(保延1)の火災時まで、金堂が建っていた場所なのです。
ご覧のとおり、往時をしのぶものはありませんが、その代わり、一面の苔が、古寺ならではの静寂さを演出してくれています。梅雨に入ると、苔は水分を吸い、さらに青々として来ます。苔を堪能したいなら、梅雨の時期に訪れることをお勧めします。
写真:乾口 達司
地図を見る秋篠寺を訪れたら、南門の手前、参道の脇にある小さな土壇にも、足を運んでください。中央に突起のある丸い石。いったい、何だと思いますか?これは東塔跡の礎石群なのです。
秋篠寺には、かつて、東西2つの塔がそびえていました。残念ながら、両塔とも焼失してしまいましたが、その塔を支えていた礎石が、当時のまま、残っているのです。付近には塔の屋根を飾っていたと思しき瓦の破片も散布しています。それらを眺めながら、ありし日の秋篠寺に思いを馳せるのもいいでしょう。
秋篠寺には、ほかにも大元帥明王立像の御開帳に合わせて霊水をいただける香水閣や雷にちなんだ民話を持つ「かみなり石」などもあります。こういった建造物やお庭、史蹟などを見てまわりながら、秋篠寺の豊かな歴史を学ぶのもよいでしょう。もしも、あなたが仏像ファンならば、堂内のベンチに腰掛けながら、伎芸天の微笑みを心ゆくまで堪能することをお勧めします。
静寂の支配する秋篠寺で、ゆったりとした時間の流れを感じてもらえたらと思います。
メモ
拝観料 : 大人500円(高校生以上/中学生以下は成人の同伴が必要)
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(2023/12/4更新)
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