廃止決定…青森〜札幌・最後の夜行急行列車「はまなす」に乗ろう!

廃止決定…青森〜札幌・最後の夜行急行列車「はまなす」に乗ろう!

更新日:2015/11/13 09:48

2016年3月。北海道新幹線の新青森〜函館北斗間が開業し、いよいよ新幹線が北海道に上陸します。それと同時に、役目を終えて消えていく列車があるのもこれまた事実です。今回はそんな列車のひとつであり、青森と札幌を結ぶ日本国内で唯一の夜行急行列車「はまなす」を“最後”そして“座席”という2つの視点でご紹介していきたいと思います。

いろいろな意味で“最後”の夜行急行列車「はまなす」とは??

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急行「はまなす」は、青函連絡船の廃止後に本州と北海道を結ぶ夜行列車として1988年(昭和63年)から運行が開始されました。運転区間は青森〜札幌駅間で、ともに22時過ぎに出発して青函トンネルを通過し、翌日早朝に終点へ到着するダイヤが組まれています。

2000年代の中盤頃から、新幹線や航空機や高速バスといった高速交通体系の台頭という時代の波に押され、全国各地を網羅していた夜行列車は次々と廃止されていく運命を辿り、風前の灯火となった中で最後の最後まで生き残った急行「はまなす」には、様々な意味での“最後”の肩書がつく結果となりました。

まず、大都市圏の私鉄等で普段から急行列車に乗っている人はあまり実感が湧かないかもしれませんが、2012年に大阪〜新潟を結ぶ夜行急行「きたぐに」が廃止されたことにより、JR系列では定期運行を行う“最後”の急行列車となりました。さらに、国鉄時代に製造されたいわゆるブルートレイン型の客車を、機関車が牽引する形で運行される“最後”の客車列車でもあります。そして、急行の客車列車という形態で定期運行される“最後”の夜行列車でもあります。

JRは2016年3月の北海道新幹線開業に合わせる形で、急行「はまなす」を2016年3月21日をもって廃止することが正式に発表されました。

【多彩な席種(1)】仲間との宴&人との出会いを楽しむなら開放型B寝台

【多彩な席種(1)】仲間との宴&人との出会いを楽しむなら開放型B寝台
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「はまなす」は通常は7両編成で運転されています。その編成は、寝台車と座席車を連結した大変珍しい編成体系をとっているので、自分の好みの席種を探してみてください。

1・2号車は開放型B寝台。上段・下段がありカーテンのみで仕切られる昔ながらのオーソドックスな寝台車両です。とはいえ、今となっては開放型B寝台を利用できる“最後”の列車となってしまいました。親しい仲間同士での語らいや、乗り合わせた人との会話を楽しみながら、昭和の古き良き夜行列車の風情を味わいたい人向けの車両です。運賃・急行料金に加え、寝台料金6,480円が必要です。

【多彩な席種(2)】格安旅行に最適 争奪戦必至の座席車(自由席)

【多彩な席種(2)】格安旅行に最適 争奪戦必至の座席車(自由席)
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3・7号車は、一般的な特急列車のような自由席の座席車です。今後廃止が近づくにつれて、指定席車は完売状態が続くでしょうから、指定席が取れなかった人がすべて自由席に流れてくるため、座席の争奪戦が繰り広げられるのは必至です。

特に、首都圏から普通列車を乗り継いで北海道に渡るのに便利な「北海道&東日本パス」で唯一利用できる席種であることから、ユーザーが集中することが予想され、何時間も前から列に並ばなければ座席を確保できないといった絶望的な状況に陥る可能性もあります。

約7時間半という長時間にわたる乗車となるため、仲間同士での乗車ならまだしも、見ず知らずの人が隣にいての窮屈な7時間半は正直しんどいかもしれません。おまけにリクライニングの角度が浅いうえに座席幅も狭く、多少の減光はされますが明かりが残るため、快適性という意味では乏しさは否めません。

ただ、運賃・急行料金のみで利用できる「はまなす」最安の席種であるため、できるだけお金をかけずに移動したいという人にとっては最適です。

【多彩な席種(3)】抜群の快適性を誇る座席車“ドリームカー”(指定席)

【多彩な席種(3)】抜群の快適性を誇る座席車“ドリームカー”(指定席)
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5・6号車は“ドリームカー”という愛称がつけられた指定席の座席車です。かつて国鉄型特急車両のグリーン車の座席として使われていたものが「はまなす」用に転用されています。それ故、自由席と比べて前後のシートピッチが格段に広く、フルフラットに近い角度までリクライニングさせることができるので、その愛称が示すとおり、快適な眠りを実現させることができるでしょう。2席+2席の座席車であるという点では自由席と変わりませんが、指定席なので乗車前に座席の確保に気を揉む心配がありません。運賃・急行料金に加え、指定席料金510円が必要です。

【多彩な席種(4)】入手困難!絶大な人気を誇るカーペットカー(指定席)

【多彩な席種(4)】入手困難!絶大な人気を誇るカーペットカー(指定席)
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4号車のカーペットカーは、「はまなす」の各座席の中でも特に絶大な人気を誇る席種で、他の席種に比べて定員数も25席しかなく少ないことから、今後ますます入手困難な状態になることが予想されます。カーペット敷きの指定された区画にゴロンと横になって体を休めることができ、毛布・枕・ハンガー・荷物置き場まで備わっています。敷かれているカーペットは電熱式なので、厳冬期の寒さに困ることもありません。

これだけでも、座席車との快適性の違いがお分かりかと思いますが、そんなカーペットカーの中でもさらに上をいく特等席“神座席”が存在します。それが、「カーペットカー・上段」というもので、1編成に8席(そのうち2席は女性専用)しかない超入手困難な席種です。

「カーペットカー・下段」が隣の人との区切りがない雑魚寝形式なのに対し、上段は一区画ごとが隔離された半個室状態で、プライベート空間が確保されています。下段と同じ設備に加えて、カーテン付きの専用の小窓まで完備されており、車窓の独り占めが可能です。さらに並びから見ても分かるとおり、座席が線路に平行になっているので、横になって眠るときの快適性が枕木に平行の下段や開放型B寝台とは格段に違います。

まさに至れり尽くせりの設備が揃っていながら、カーペットカー・下段やドリームカーと同様に乗車券・急行券・指定券のみで利用できるというのですからたまりません。あくまで個人的な見解ですが、別途寝台料金(6,480円)を払わなければならない開放型B寝台よりも快適だと思います。

“最後”の時間を噛みしめて

以上、廃止が正式決定した急行「はまなす」の多彩な座席の数々をご紹介しました。2016年3月21日の青森発が最終便となる予定です。廃止日が近づくにつれ、今回ご紹介した座席はますます入手が困難になるでしょうから、希望する座席にどうしても乗っていきたいという方は今のうちがチャンスかもしれません。

急行「はまなす」は、いろいろな意味での“最後”を背負いながら、終着駅へと走り続けます。その中で、最も大切な“最後”とは時間ではないでしょうか。心地よい列車の揺れに身を任せ、暗闇の中で流れゆく車窓を眺めながら、車内での語らいを楽しみ、時の流れと共に去りゆく運命にある夜汽車と共に過ごす“最後”の時間こそがかけがえのない最も大切な“最後”であるように思います。永遠に過去のものになろうとしている列車に身を委ね、悲しみの汽笛を胸に刻む旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/03/16−2015/03/17 訪問

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