写真:阿部 吾郎
地図を見る写真右側に写っている格子のある家、よく見ると軒先に何かぶら下がっているのがわかると思います。これがくくり猿です。正面の漢方薬の店の軒先にもありますね。赤い体に白い頭、四肢をくくられていくつか連なった姿でつるされる姿は奈良町のいたるところで見られます。このくくり猿に関しては後程ご説明するとして、この格子にくくり猿、さらに土蔵、お地蔵様が見えるこの景色は、まさに典型的な奈良町の風景です。決して派手ではありませんが、どこか落ち着くほっこりとした風景だと思いませんか?
写真:阿部 吾郎
地図を見る奈良町で格子が使われ始めたのは室町時代と言われています。外から部屋の中は見えにくいのですが、中から外の様子はよく見えます。風通しもよく、火事が起これば簡単に取り外すこともでき、延焼を防ぐこともできます。
しっかり格子もくくり猿もある奈良町らしいお店でランチをいただきましょう。写真は「はり新」の上つ道弁当です。お弁当の他に食前酒、ゴマ豆腐、食後には抹茶のわらびもちも付きます。お値段は2,900円。古代のチーズ「蘇(そ)」も説明書つきで入っています。町屋を改装した純和風の空間でゆったり食事をすると身も心も癒されます。
はり新
営業時間:昼11:30〜15:30(14:30ラストオーダー) 夜18:00〜21:00(20:00ラストオーダー)
定休日:月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日)・年末年始
写真:阿部 吾郎
地図を見る奈良町の南側、元興寺町に「奈良市ならまち格子の家」という、奈良町の町屋の様子がよくわかるスポットがあります。入口は狭いのですが、奥に向かって部屋が連なっています。小さな中庭のわきにある渡り廊下を通って一番奥まで行くと立派な蔵があります。
二階にあがる階段がすばらしい。この趣のある引出つきの階段、しぶすぎます。二階から吹き抜けになっている土間の様子がこれまたしぶい。
入場無料なのがうれしいこの施設、是非立ち寄ってみてください。
奈良市ならまち格子の家
入場料:無料
開館時間:午前9時〜午後5時
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合その翌日)・祝日の翌日(土・日を除く)・年末年始12月26日〜1月5日
写真は奈良町のシンボルともいえる元興寺庚申堂です。お堂の提灯の裏あたりに、びっしりとくくり猿が張り付いています。
このくくり猿、病を取りサルという意味での縁起物ですが、もともとは赤疱瘡(あかもがさ)といわれた疱瘡除けから始まったようです。
庚申堂の「庚申(こうしん)」とは、60日に一度めぐってくる十干十二支でいうところの庚申の日をさします。その夜に、人間の体の中にいる三尸(さんし)の虫が天帝にその人の悪事を密告すると言われており、三尸の虫に密告されないようその夜は眠らずに講を組んで飲食を共にするという習慣がありました。サルが毛づくろいをする姿が三尸の虫を取って食べているように見えることから、くくり猿をつるすとも言われています。
写真:阿部 吾郎
地図を見る写真は元興寺の極楽堂です。一見そんなに興味をそそられるような写真ではありませんが、屋根瓦に注目してください。色がまだらになっている部分ですが、この瓦はなんと1400年前に作られた「行基瓦」と呼ばれる古代瓦です。
元興寺の前身は、飛鳥寺という蘇我馬子が588年に建立した日本最古のお寺です。これが平城遷都に合わせて奈良に移ったもので、当時は東大寺に次ぐ格付けのお寺で、実は奈良町全体が元興寺の境内だったのです。藤原氏が台頭し、その氏寺である興福寺が力を持ち、その勢力におされて衰退してしまいましたが、古代瓦はその歴史の重みを今に伝えています。
宝物殿にある国宝の五重小塔も是非ご覧ください。平安時代に作られたもので、五重塔を10分の1の大きさに作ったものです。ヒノキの部材を本物同様に作って組み上げられていますので、これを10倍すればそのまま本物の五重塔になります。
元興寺
拝観料:大人400円・中高校生300円・子供100円
拝観時間:9時〜17時(入門は16時30分まで)
奈良町には、まだまだおもしろいところがたくさんあります。猫カフェ、有名な布巾屋さん、おいしいパン屋さんなどなど。また次の機会にご紹介したいと思います。
参考文献
宮大工と歩く奈良の古寺 小川三夫 文春新書
庚申信仰 飯田道夫 人文書院
奈良市ならまち格子の家パンフレット
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(2023/12/4更新)
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