加蘇山神社は2か所に分かれていて,最初に迎えてくれるのは、加蘇山神社遥拝所と神楽殿です。加蘇山神社と書かれた石碑と鳥居をくぐると正面に社務所を兼ねた石裂山荘があり、境内の右側に遥拝所と神楽殿があります。また、道を挟んだ反対側には小さな日向山薬師堂があり、無垢の本殿に歴史を感じます。
前日光県立自然公園は数多くのハイキングコース、登山コースが整備されていています。石裂山回遊登山コースは、加蘇山神社の社務所を起点に、加蘇山神社、竜ヶ滝休息所を経て、天然記念物の千本カツラ、中の院跡、行者帰しの岩の急斜面を上り、奥の院へ。。その後、東剣の峯、西剣の峯を経て、石裂山山頂から月山を経由して加蘇山神社に帰るコースです。
ガイドマップには、「登山コースには岩場や鎖場があり本格的な登山コースです」と書かれています。奥の院まで参拝する場合は登山の装備で入山することをお勧めします。
神楽殿の奥にある木戸を抜け、沢沿いの道を10分ほど歩くと道の右側に石段があり、加蘇山神社と書かれた鳥居とその柱に並ぶように大きな杉木があります。この右側にある杉木は、3本ある市指定の天然記念物の1本。樹齢は約500年で周囲は約6メートルもあります。後の2本は本殿脇の奥社登拝門の左右にあり、右手が樹齢約800年、周囲は約9メートル、左手が樹齢約500年、周囲は約6メートルもあります。3本の杉の内、鳥居の右側と奥社登拝門右側の杉は双幹になっていて「子宝の杉」と呼ばれています。
石段を上り二の鳥居の正面に拝殿があり、左手に手水場があります。うっそうと茂る杉林にある神社はとても幻想的で、拝殿正面には龍の彫り物が施されています。加蘇山神社の御祭神は磐裂命(いわさくのかみ)、根裂命(ねさくのかみ)武甕槌男命(たけみかづちのみこと)で、これらの神は伊邪那岐神(いざなぎのかみ)が火の神迦具土神(かぐつちのかみ)を斬った時、 剣の鍔に付いた血から生れた神々と言われ、五穀豊穣、家内安全、火難消除、武勇の神とされています。
竜ヶ滝休憩所で一息入れた後、沢沿いの登山道を進むと右手に多くの幹が茂る木が見えます。沢が大きく左に流れを変えた場所に有るのは、加蘇山神社の御神木の千本カツラです。この木は2本の木が成長の途中で1株になり、その根元から十数本の幹が茂り斜め上に伸びています。
2本のカツラは、高さ約23メートルで推定樹齢は1000年と700年で、寄り添うように空に伸びていることから「縁結びの千本カツラ」と言われています。県内最大のカツラの古木であり、栃木県指定天然記念物に指定されています。奥の院に続く登山道は一旦沢に降りて千本カツラの脇を通るため真近に見ることができます。
沢を流れる水の音と森林の澄んだ空気の中に立つ千本カツラは、自然が作り上げた芸術品です。豪雨や豪雪などの存続の危機を幾つ乗り越えたのでしようか・・・、1000年の歴史を刻む植物に畏敬の念を抱かずにはいられません。
奥の院への道は、しだいに沢から離れて急な登山道と姿を変えます。手を使いながら登山道を登ると右手に東屋が現れます、ここは、元加蘇山神社の中の院跡、前方には「行者帰しの岩」と書かれていて、大きな岩の壁が行く手を遮ります。
始めに梯子、途中からは鎖がかけられている壁の上には奥の院らしきものは見えません。この壁を登った後に何が有るのだろうと想像すると足がすくみます。壁の高さは約30メートル、角度は約40度ですが、下から見上げるとほぼ直角にも見えます。奥の院は参拝者の決意のほどを確かめているのでしようか。そんな疑念を抱いてしまう急激な壁です。
目の前の梯子、目の前の鎖だけに集中して、注意深く足場を探りゆっくりと登ります。梯子や鎖が無ければ上ることが難しい箇所です。この岩を登った後には賀蘇山神と出会うことができます。ここは、勇気を出して奥の院を目指してください。
石裂山は日光の開祖の勝道上人が神護景雲元年(767年)に開山したとされています。標高は決して高くはないのですが栃木県でも1〜2番目に危険な山と言われています。しかし、梯子や鎖をしっかりと持ち一歩々登って行けば「行者帰しの岩」は以外と簡単です。
その後、アルミ製の梯子を10メートル上ると、大きな岩の割れ目に鳥居と祠が姿を現します。近くに行き写真を撮ると目には見えなかった白い気が写ることも。静かな山中の中、岩場を登った達成感もあり、導いてくれた感謝の気持ちがこみ上げてきます。
昔の加蘇山神社は、現在の神社が下宮、東屋となっているのが中宮、そして本殿が奥宮だったようです。加蘇山神社の由緒沿革記によると「大正4年3月6日大浦内務大臣によって県社に昇格され、境内坪数64万4千7百54四坪、周囲三里に及び奥社の鎮座せる神域は風光絶佳にして奇岩奇勝の多き、他比なく全山老杉うつ蒼禽鳥の啼鳴こだまする」と書かれています。奥の院から見る石裂山の山麓はその当時の面影を残しています。
加蘇山神社は、再三の兵火によって記録が焼失されたため不明なことが多い神秘に満ちた神社です。また、石裂山の南麓の入粟野に賀蘇山神社があり、両社ともに賀蘇山神と言われています。
御祭神の「剣の鍔に付いた血から生れた神々」からか、数奇の運命をたどってきた神社だったのではないでしょうか。樹齢500年〜800年の杉に守られた本殿はとても幻想的です。また、栃木県道の終着点にあり、登山者以外に訪れる人も少ないためか自然が残り、春から秋にかけては多くの山野草を見ることができます。
社務所前のガイドマップには、千本カツラ(25分)、中の宮(45分)、奥の宮(1時間)と、各ポイントまでの時間が書かれていますが一般の人であれば、その倍はかかるとみてください。加蘇山神社への参拝には、ぜひとも奥の院までの参拝をお勧めします。
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