写真:沢木 慎太郎
地図を見る「女性博物館」は、ベトナム人女性をテーマにした博物館。ファッションや陶器、革製品、土器、ガラス製品、写真パネルなど、ベトナムの女性に関する約2万8000点の資料を所蔵しています。
数ある資料の中から、まずご紹介するのはベトナムの民族衣装であるアオザイ。もともとは18世紀に清朝から輸入されたチャイナドレスを起源としています。ベトナムの気候や風土に合うように改良され、現在に見られる細身でスリットの深いデザインとなりました。
女性博物館では、時代とともに移り変わるアオザイのファッションスタイルを見ることが可能。アオザイに丹念に編み込まれた刺しゅうは見事なまでに美しく、たいへん見ごたえがあります。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る女性博物館ではアオザイだけでなく、ベトナムの山岳地帯で暮らす少数民族(モン族やタイ族など)の伝統的な衣装も展示。少数民族の女性ならではの独特な美しさを見ることができます。
ろうそくのロウを使った伝統的な染色法(ろうけつ染め)による布地や独自の刺しゅうは、日本にはないファッションスタイルで、たいへん興味深い。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るさきほどご紹介した山岳民族の衣装に加えて、首飾りや銀製の耳飾りなども展示。魚や動植物など、生活に密着した素材をモチーフにデザインされた飾り物は素朴な美しさがあり、自然への畏敬や信仰心が感じられ、感慨深いものがあります。
山岳民族が実際に使っていたものばかりなので、圧倒的な存在感があり、たいへん貴重な資料。
写真:沢木 慎太郎
地図を見るそして、ベトナム人女性を語るうえで、忘れてはならないのが戦争の歴史。ベトナムはかつてフランスの植民地であり、1960〜70年代ではベトナム戦争という悲しい歴史を持ちます。
ベトナムでは民族の自立と誇りのために、多くの女性が戦争に参加。日本の学徒出陣(学生を戦地に派遣)のように、多くの女性が戦場におもむき、大勢の方々が傷つき、そして亡くなりました。
機関銃の引き金を引く10代の少女の写真や、地下壕で実際に使われていた道具、そして家族に送った手紙などが展示され、ベトナム人女性の栄光と犠牲がひしひしと伝わってきます。
写真:沢木 慎太郎
地図を見る最後のご紹介は、山岳民族の女性たちの写真パネル。のどかな山村で、子どもを抱いている多くの女性が撮影されているのですが、子どもを見つめる優しい笑顔にほっと癒されます。
人の生き方はそれぞれですが、子どもを持ち、家族で仲良く暮らすことに、平和の原点があるのかもしれません。女性博物館は、“愛”をテーマにした素晴らしい博物館です。
以上、いかがだったでしょうか?
女性博物館で強く印象に残るのは、戦争とベトナム人女性の関わり。日本の図書館やメディアでは決して伝えていない歴史が展示され、たいへん考えさせられます。
日本はベトナム戦争と深い関わりを持ちました。
日本はアメリカと「日米安全保障条約」を結んでいるので、東京の横田や沖縄の米軍基地からはアメリカ軍の爆撃機が飛び立ち、ベトナムに爆弾の雨を降らせました。また、日本の産業界はアメリカ軍にとって必要な物資を生産し、“ベトナム特需”で潤いました。
今後の日本とベトナムの関係を考えるうえでも、正確な歴史的な事実を再度確認する必要があるように思われます。
ハノイに観光で訪れたら女性博物館に立ち寄り、過去の戦争を越えて、今を美しく輝くベトナム人女性の微笑みにふれてみてはいかがでしょうか?
この記事を書いたナビゲーター
沢木 慎太郎
恋愛小説「星の流れに 風のなかに 宇宙の掌に」(※澤 慎一の名前で制作)が電子書籍化され、作家デビューしました。紀行小説「深夜恋愛特急」も、私のひそかなブーム。
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