阪神電鉄沿線日本酒めぐり!灘五郷の酒蔵で旨い酒を美味い肴で

阪神電鉄沿線日本酒めぐり!灘五郷の酒蔵で旨い酒を美味い肴で

更新日:2015/11/17 10:59

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
阪神電鉄沿線の海岸線に沿って「灘五郷」と呼ばれる、今津郷・西宮郷・魚崎郷・御影郷・西郷に酒蔵が点在し、味わい豊かな酒を造り続けています。

酒造好適米「山田錦」の産地が近く、六甲山系からの上質なミネラル水「宮水」が湧き、高い技をもつ丹波杜氏がいて、大消費地・江戸まで早く運ぶための良港があった、という好条件が揃い、灘は日本一の酒どころとなったのです。酒蔵自慢の酒を、是非飲み歩きに来てみて下さい。

御影郷「神戸酒心館」で蔵直採り生原酒と酒そばで舌鼓

御影郷「神戸酒心館」で蔵直採り生原酒と酒そばで舌鼓

写真:和山 光一

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「神戸酒心館」は、福壽酒造株式会社として宝暦元年(1751)に創業し、阪神淡路大震災で木造蔵が全壊してしまった翌年に設立されました。その福寿蔵で醸造した「福寿 純米吟醸」が、2012年12月にスウェーデン・ストックホルムにおいて、山中伸弥教授が受賞したノーベル賞の晩餐会に供されています。「福寿」は、七福神の「福禄寿」に由来し、福寿を飲んでいただいた方々に、財運がもたらされますようにとの願いを込めて商標にされています。

長屋門を入って右手奥にある阪神電車のCM「阪神沿線物語」で佐藤江梨子(優子役)とハマカーンの神田伸一郎(達也役)の二人が並んで座っていた大桶が、ここ神戸酒心館福寿の大桶です。

敷地内にある蔵の料亭「さかばやし」で、蔵元ならではの「酒そば」をいただくのもオススメ。酒そばは、せいろ蕎麦に日本酒をかけて食べるという、日本酒好きにはたまらない一品です。出てきたざる蕎麦にお猪口一杯にいれられたお酒を蕎麦に掛けると、蕎麦を手繰るときになんともいえないお酒の香りが漂います。そばつゆは酒の香りを消さないように薄口醤油に鰹だしを効かせたあっさり系です。お蕎麦は細切りのシャキッとした冷たい麺で、かなり冷たくしているので蕎麦の香りよりも酒の香りを楽しんでください。

小さい酒蔵ながら味はピカイチ「泉酒造」

小さい酒蔵ながら味はピカイチ「泉酒造」

写真:和山 光一

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宝暦6年(1756)有馬郡道場村にて、初代泉仙介が酒造業を創業した「泉酒造株式会社」。「神戸酒心館」を少し先にいった野っ原のような土地の一角に、社と事務所を構え、お酒を販売しています。

三代目仙介の時に道場村から御影に移り、恵まれた水源の尽きざさること泉の如く、また自らの姓も泉なるところより銘々した銘酒「泉正宗」を醸造していましたが、阪神淡路大震災で被災し、縁戚関係にある香川県の「西野金陵」に醸造・販売を委託していました。平成19年(2007)に自家醸造を再開し、初代の名を冠した銘酒「仙介」と「琥泉」の醸造を開始しました。ちなみに「仙介」とは、代々の当主が襲名する名前。また商品パッケージに使われている「泉」の文字は俳優森繁久彌の手によるものとのことです。

「仙介」は麹米に山田錦を使い、蔵の特徴である優しく漂うフルーティーさとシャープで力強いコクが広がるお酒です。時間の経過とともに爽やかな旨みが、しっかりとした旨みに変わり、酸とのバランスが調和してまた違った味わいになります。小さい酒蔵ですが見逃さず訪れてみてください。

魚崎郷の「浜福鶴吟醸工房」で酒造好適米の違いを味わう

魚崎郷の「浜福鶴吟醸工房」で酒造好適米の違いを味わう

写真:和山 光一

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六甲山地に水源があり、急な斜面を下って大阪湾に注ぐ住吉川の東側が「魚崎郷」です。その最奥に位置するのが「浜福鶴吟醸工房」。近代的な酒造りの設備とその工程を見学でき、広々とした販売スペースも明るく気持ちがいい。試飲コーナーの前では名物杜氏の宮脇米治さんの解説を聞きながら唎酒が出来ます。

昔はこの蔵元は「福鶴」と名乗っていましたが、全国でも「福鶴」という名前の蔵元は当時3つあったため、平成8年になって独自性を強調する為、魚崎浜近くにあるので「浜福鶴」という名前に改められました。

浜福鶴の代表銘柄「空蔵(くぞう)」は震災の時、当時の杜氏が屋根も無くなり「空しか見えないな」と呟いた事から、震災の苦労を忘れずゼロから再出発しようと名づけられたのが「空蔵」という名前なのです。ショップの奥にある試飲カウンターきき酒処で、「空蔵」(雄町と山田錦)飲み比べ試飲セット300円をおつまみセット200円と共に試してみることができます。フルーティな香りと透明感のある旨味を持ち、濃厚ながら飲みやすいお酒が山田錦なら、雄町は米の旨味を感じながらもキリッとした辛口に仕上がっています。酒造好適米の違いを舌で感じることができます。

一日三杯だけ飲める呑処「三杯屋」のある「櫻正宗」

一日三杯だけ飲める呑処「三杯屋」のある「櫻正宗」

写真:和山 光一

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櫻正宗株式会社は、灘よりも昔から酒造が盛んだった池田荒牧村(現伊丹市)で、享保2年(1717)創業し、江戸時代末期に灘に移ったといいます。六代目当主である山邑太左衛門が1840年に宮水を発見したとされ、また協会一号酵母は櫻正宗酵母なのです。そして日本酒の銘柄でよく用いられるナントカ正宗という銘柄の元祖とされている初づくしの酒蔵です。

阪神大震災での倒壊を免れた内蔵の門が現在「櫻正宗記念館(櫻宴)」の入り口となっている立派な門構えが目印の酒蔵で、門をくぐれば、エントランスからお洒落なレストラン仕様で、館内はレストラン、カフェ、ショップ、展示コーナーから構成されています。

2Fの酒蔵ダイニング櫻宴の入口入ってすぐ左にある暖簾のかかるお店が、日本酒が気軽に楽しめる呑処「三杯屋」です。カウンターだけの日本酒処で、一日三杯までお酒が楽しめ、スタンプカードに呑むごとに印が押されるシステムです。スタンプが貯まると称号が上がり、それに応じて酒器がプレゼントされるのが嬉しい。

カウンター越しに貼られたメニューには、豆腐味噌漬け、ぽん酒おでんから大根・蒟蒻セット、厚揚げ、牛すじ、ちくわと、格安な値段で書かれています。しかもぽん酒おでんはお酒の香りが効いています。あと七輪焼きもあり清潔な雰囲気で落ち着きがあるお店です。

伊勢神宮の唯一の御料酒「白鷹」

伊勢神宮の唯一の御料酒「白鷹」

写真:和山 光一

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西宮郷の「白鷹株式会社」は、文久2年(1862) 初代辰馬悦蔵が辰馬本家(白鹿醸造元)より分家し、酒造りを開始したのが始まりで、銘酒「白鷹」は伊勢神宮の御料酒として献上される唯一の日本酒です。小学館の漫画「美味しんぼ」第4巻にも白鷹が載っていました。

酒蔵通りにあった白鷹の蔵元・北辰馬家の住居と酒蔵が地続きになった造り酒屋の暮らしぶりをイメージし、再現した建物が「白鷹禄水苑」。漆喰壁に虫籠窓、戸をガラガラと開けると、昭和初期にタイムトリップしたかのような落ち着きのある土間の空間が広がり情緒豊かです。

1Fには蔵出し限定酒や全国からこだわりの肴を集めたショップ「美禄市」があり、その一角にあるのが、手漉きの和紙を透かした柔らかなライティングが欅の一枚にしっとりと映えるカウンター。そのゆったりとくつろいだ雰囲気の中、禄水苑限定酒や白鷹の代表酒を気軽にお楽しみいただける土・日・祝限定のバーが蔵BARです。12時からの営業で、モダンな土間風のカウンターの奥には日本酒が並び、『クッキングパパ』のうえやまとちと、『味いちもんめ』の倉田よしみのサイン色紙が立てかけられていました。

おすすめは「季節の飲み比べセット」(1000円)で季節の酒3種に酒肴が1品がついている。訪問時は禄水苑限定の純米大吟醸「醇味緑酒」、純米吟醸「超辛口」、常温の純米酒の3種に小鯛の昆布締めが付いていました。灘酒をじっくり味わってみてください。

かおり風景100選に選ばれる灘五郷の酒づくりは、宮水が育んだ日本酒文化

今回紹介したところ以外の酒蔵も含めた、オススメの巡り方は以下のルートです。

先ずは、阪神電車大石駅を最寄駅とする西郷にある「沢の鶴」から御影駅を中心とした御影郷にある「神戸酒心館」、「泉酒造」、大手の「白鶴」「菊正宗」とめぐり、住吉川を渡って魚崎駅を最寄駅とする魚崎郷の「櫻正宗」「浜福鶴」までの6駅5区間を歩くことになります。しかしながらお酒を飲みながらのてくてく散歩は、次に向かう楽しみがあり疲れないものです。

また西宮駅から今津駅までの酒蔵通りには、西宮郷に大手の「白鷹」「白鹿」「日本盛」があり、津門川を渡って今津郷に「大関」と建ち並んでいます。再び西宮郷に戻って浜側にある小さな酒蔵「大澤本家酒造」と「万代大澤醸造」を訪れます。

灘五郷の酒造りは地域に密着した地場産業として栄え、日本酒を通して日本酒文化を後世に伝えたいと今も酒造りに取り組んでいます。男酒と称されるしっかりとしたコクと酸が備わり、メリハリの利いたお酒は料理との相性もいいです。お気に入りの一本を探しに灘五郷を歩きに来てください。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/12/13−2014/12/21 訪問

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