写真:和山 光一
地図を見る中央高速一宮御坂ICや勝沼ICから雁坂みち(R140)で笛吹市方面に向かい、山梨小学校前の信号を左折して細い道に入ります。小さい看板が一つだけあって多少心細くなりますが、更に細くなった道を右・左と曲がったところの桃畑の中に「正徳寺温泉 初花」という洒落た名前の立ち寄り温泉が突然現れるのです。開業は1998年、広い駐車場に、外観は高級旅館風で日帰り温泉施設には見えませんし、中もモダン和風でなかなか良い雰囲気です。
入浴料700円(3時間)なのですが、食事をすると、30分延長サービスがついています。受付で入浴料を払いロッカーの鍵をもらいましょう。
中に入って左手がうなぎの食事処、 右手の旅館のような渡り廊下を行くと浴場。廊下の壁には、新聞や雑誌で取上げられた記事が飾られ、温泉への期待が高まります。さらに進み、浴場の前には、飲泉所があり、ここの温泉が飲めるのです。お湯を飲んでみると生暖かく柔らかで、最後にほろ苦い味がします。
写真:和山 光一
地図を見るある晩、夢枕にウナギが一尾あらわれ、「温泉を掘りなさい。場所は正徳寺の近く、ウナギの養殖場の脇じゃ。掘れば必ず温泉が湧く」とウナギのお告げがありました。……といった伝説がこの地に定着するかもしれない、そんな温泉を掘ったのが、養鰻業を営むご主人。鰻の育ちが良いのは自分の池の水が良いからだと考え、掘れば温泉が出ると確信し、実際に掘ってみたら地下831mで38℃の温泉がお告げのとおり自噴したと言うのです。
日本では珍しいモール泉ということで、お湯は透明だが琥珀色をしています。ちなみにモール泉は、日本では北海道の十勝川温泉が有名なのですが、最近になってこの笛吹川流域もモール泉地帯だということがわかっています。英語やドイツ語で湿原(泥炭地)を意味するモール泉は、植物由来の有機物が多く含んだ泉質で、湯気からはうっすらとタールの香りがします。泉質が少しヌルっとしているのはウナギのせいではなく、炭酸イオン(陰イオン)が多いからだそうで、pH9.4あります。
写真:和山 光一
地図を見る浴室には大きな源泉浴槽(35・9℃)と、小さめの加熱浴槽(40℃)があり、源泉は黄褐色の澄んだ色、ちょっと冷たく感じるようなぬるいお湯ですが、どんどんお湯が注がれ、かけ流されていて、不感温度の源泉はとても気持ち良く感じます。泉質はアルカリ性単純温泉で、浴感はツルスベ、スルスルとした肌触りが気持ちよく、お湯の香りは少しタール臭があります。ぬる湯の源泉浴槽と加熱浴槽を交互に入ることでデトックス作用があると考えられていますし、また保温効果が長く続くといわれています。
露天風呂はずいぶん広く、お湯がどんどん注がれて気持ちよい!浴用加温しているものの浴槽温度は38℃ほどで、加熱を最小限に抑える姿勢に心意気を感じます。露天樽風呂や寝湯、うたせ湯と、心のまま、思いのままに周囲の緑をながめながらのんびりゆったり過ごせます。
ぬる湯の大量かけ流しの温泉ですので、洗い場のカランも温泉が使われていて、お湯の鮮度がとても嬉しく、ぬる湯好きには本当にお勧めの温泉です。
写真:和山 光一
地図を見るこの温泉でもう一つ嬉しいのが食事処。春には満開の桃畑も見渡せる明るい個室感覚の座敷で、初花自慢の鰻料理がいただけます。写真はうな重3000円ですが、うな重上3300円や他に鰻御膳4250円があります。うな重上に1000円程のアップで鰻寿司・肝焼・うざく・う巻き・茶碗蒸・サラダ・小鉢・酢の物・肝吸・デザートがつくのが鰻御膳なのです。
メインのうな重の蓋を開けると蒲焼のいい香りが立ち込め、ご飯の上に目いっぱい鰻が乗っていて、照りがいい感じ。見た目以上に量があり、さらっとした関東風のタレが絶妙です。肝心のうなぎも箸でサクッとすくえるぐらい柔らかくフワフワで、すぐに口の中でとろけていくほどで大満足間違いなしです。
※2015年11月現在の価格(消費税込)です。
山梨には、有名な西山、塩山、湯村温泉等、ぬる湯の名湯が多いのです。というのも山梨県には活火山というと富士山くらいしかなく、しかも富士山は温泉を持ってこない火山の代表格だから。マグマの粘度が低い玄武岩質の溶岩が広がって流れたため、冷えて固まる時にガスが逃げてしまって穴だらけで、温度もガス成分もなくなってしまい、水がしみ込んでも温泉にならないのです。代りに山梨の地下にあるフォッサマグナに1000万年ほど前の海底火山の堆積物があり、この成分をもった地下水が湧き出すと低温の源泉になります。温泉ではあるのですが、この地層には熱源が足りないのです。
信玄の隠し湯といわれる下部、川浦、増富、積翠寺温泉などもぬる湯や冷泉が多いのではこのため。傷だらけの武士が、あつい湯に入ったら痛くて仕方ないからでしょうか。ぬる湯に長く入ることで治癒効果も大きいと考えられます。
山梨の湯は源泉そのものがぬるいのですが、それに極力手を加えず、源泉の個性を生かした施設が多くあります。「温泉といえば湯治」という、山梨の温泉文化を実践する日帰り温泉施設「正徳寺温泉 初花」のぬる湯と鰻で、明日の健康と活力をもらって下さい。
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(2023/11/30更新)
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