写真:Lady Masala
地図を見るケンジントン宮殿、その正面に堂々とそびえ立つのは、白亜のヴィクトリア女王の肖像。レンガ造りのその建物は、宮殿とよぶにはいささか地味なようにも思えますが、1760年に王宮がバッキンガム宮殿に移るまでは、歴代の王の居住地でした。
現在は王家の親族の住居となっており、ケンブリッジ公ウィリアム王子ご一家もお住まいです。その母君であった故ダイアナ妃も、ご成婚の日から亡くなるまでこの宮殿の住人であったといいます。
繁栄を極めた大英帝国の象徴として知られるヴィクトリア女王は、この宮殿で生まれ、即位するまでここで暮らしました。生後8ヶ月で父親を亡くした女王は、教育熱心な母親に育てられたといいます。この宮殿では、個室を与えられることもなく、常に母親の監視下に置かれていたのだとか。
そのため、女王自身は、この宮殿にはあまり愛着を感じていなかったということですが、ゆかりの品々はここケンジントン宮殿に展示されています。
写真:Lady Masala
地図を見る宮殿内では、ヴィクトリア女王が実際にお召しになっていたという衣装を見学することができますが、その小ささに驚かされます。女王は身長が150センチほどしかなかったそうで、そのお召し物はまるで子供服のようなかわいらしさ。
しかし、訪れる人を惹きつけるのは、女王が身につけていたという喪服なのではないでしょうか。最愛の夫アルバート公をわずか42歳の若さで亡くし、それからの数年間は、ほとんど公の場に姿を現すことはありませんでした。夫の死から10年以上もの時を経て公務に復帰しましたが、生涯にわたって喪服を着つづけたといいます。
宮殿内では、ヴィクトリア女王在位60周年を記念する「ダイヤモンドジュビリー」の記念式典の映像が放映されていますが、喪服姿で一人馬車に揺られる女王の、なんと孤独で寂しそうに見えることでしょうか。
写真:Lady Masala
地図を見る宮殿内には、ヴィクトリア女王に関する展示「Victoria Revealed」のほかにも、二つのアパートメントがあります。
そのひとつは、ジョージ1世とその息子であるジョージ2世の時代を象徴する「The King’s State Apartments」。その居室のなかで最も豪華なのは「丸屋根の間」です。壁に描かれているのは、古典的な戦利品の武具で、壁の窪みの部分には、ギリシア神話の神々の彫刻が飾られています。
天井画がまた素晴らしく、中央にあしらわれているのは、イングランドの最高勲章である「ガーター勲章」。まるで、国王の権力と栄光とを反映しているかのようです。この天井画のお陰で、実際よりも天井がずっと高く見えます。これらの装飾は全て、ジョージ1世が教養のある慈悲深い国王であることを示すために施されたのだとか。
国王が本当に情け深かったのかどうか、真偽のほどは定かではありませんが、この居室に一見の価値があることだけは間違いないでしょう。
写真:Lady Masala
地図を見る夫であるウィリアム3世の共同統治者として、共に王位に即いていたというメアリー2世。女王として君臨していたメアリーのための住居「The Queen’s State Apartments」のなかで最も興味深い場所は、「女王のギャラリー」です。
そこには、大ぶりな花瓶や皿など、数多くの磁器がディスプレーされています。女王がオランダに住んでいた時分に東洋の磁器に魅了され、熱心に収集するようになったのだとか。ギャラリーを飾った、150点以上もあるといわれているコレクションの多くは、日本や中国から輸入されたという青と白のシンプルなもの。
また、女王は漆塗りの家具も好んで集めたそうで、なかには、インドや日本のものもあるのだとか。ギャラリー全体が、東洋的な雰囲気をかもし出していることにも納得できます。
宮殿内には、みどころがたくさんあります。今まで知らなかったイギリス王室の歴史を垣間見ることで、今日あるイギリスという国をより理解することができるのではないでしょうか。
時間に余裕があれば、美しい庭園とケンジントン・ガーデンズも併せて散策してみてください。ヴィクトリア女王が、亡き夫を偲んで建てたという「アルバート記念碑」には、心を打たれます。
お天気の良い日なら、一日中でも過ごせそうなケンジントン・ガーデンズ。宮殿の見学とともに充実の一日を過ごせそうです。
アクセス:
地下鉄 Central Line(セントラル・ライン)Queensway(クイーンズウェイ)駅より徒歩で約10分
または、
地下鉄 District Line / Circle Line(ディストリクト・ライン / サークル・ライン)High Street Kensington(ハイ・ストリート・ケンジントン)駅より徒歩で約10分
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この記事を書いたナビゲーター
Lady Masala
旅とマーケット、蚤の市めぐりが大好きな庶民派ロンドナーです。ロンドンを中心にイギリス、ヨーロッパの見どころを歴史や文化とともに紹介いたします。また、趣味で集めているアンティーク・ヴィンテージ食器の魅力…
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