「東寺」の南大門を入って右手側には、日本の古い呼び名である大八州瑞穂国(おおやしまみづほのくに)に由来して名付けられた“八島社”。御祭神は「東寺」の地主神(じぬしがみ)とも大己貴神(おおなむちのかみ)とも言われています。
「東寺」以前より鎮座していた事から、弘法大師・空海(くうかい、774年〜835年)が各種の建造物の着工の前に、寺門造立の成就、方位の安全、仏法の興隆を祈願したと伝わっています。
少し離れた場所から眺めると、朱色の社殿、木々の緑、五重塔、青空と色彩のコントラストが鮮やか。京都駅からは約15分、近鉄東寺駅からは約10分と歩いて向かえる世界遺産の「東寺」の景観を各所で味わってみて下さい。
桓武天皇(かんむてんのう、737年〜806年)の時代から造営が始まった「東寺」は、嵯峨天皇(さがてんのう、786年〜842年)の治世に移っても、遅々として進みませんでした。その折、遣唐使として唐で密教を学び、様々な文化や技術を日本へ持ち帰った弘法大師・空海に、その役目が回ってきます。
唐から日本へと帰国した空海は、生まれ故郷である讃岐、現在の香川にて満濃池の堤防工事を成功させていました。水圧を分散させるアーチ型の堤防を築くなどの工法を用いて、それまで何度も決壊していた日本最大の溜池、満濃池を数ヶ月で修築していたのです。
書を始めとする芸術や文化に強い興味を抱いていた嵯峨天皇と空海が交流を持っていた事も「東寺」の管理・造営を任された背景の一つと言われています。そして、弘法大師・空海は着実に「東寺」を完成へと導いていったのです。
こちらは、国宝“大師堂”、西院(さいいん)・御影堂(みえどう)とも呼ばれます。元々は弘法大師・空海の住まいでしたが、1379年(康暦元年)に焼失。翌年には再建され、1390年(明徳元年)に国宝・弘法大師像を拝するための礼堂と中門を加えて、現在の形となりました。
「平安京」と「東寺」を守護するため、796年(延暦15年)に創建された社が“八幡宮”です。本尊の僧の姿をした僧形八幡神(そうぎょうはちまんしん)と二尊の女神(じょしん)は、一本の巨木から弘法大師・空海が自ら彫ったものと伝えられ、国内最古の神像。
平安時代に、“薬子(くすこ)の変”を鎮めたとされ、戦勝祈願の社としても名高く、足利尊氏(あしかが たかうじ、1305年〜1358年)も祈願に訪れた場所。1868年(明治元年)に焼失してしまいましたが、1992年(平成4年)に再建し、現在に至ります。
春と秋に開館されるのが“宝物館”。国宝の兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)や高さ約6メートルの千手観音菩薩の特別公開や「東寺」の歴史や文化財をテーマにした特別展などが行われます。
先述の足利尊氏が奉納した梵鐘(ぼんしょう)など多くの寺宝が展示されるので、非常にオススメです。詳しい開館期間などの情報は下部関連MEMOにあります公式サイトへのリンクより御確認下さい。
そして、こちらは弘法大師・空海が唐で恵果(けいか)和尚から密教の教えと共に持ち帰った儀礼のための道具や密教の世界を表現した絵図、両界曼荼羅(りょうかいまんだら)などが納められていた“宝蔵”です。注目のポイントは、現在使用されている瓦の多くが平安時代のものである点。
また火災による延焼に備え堀で囲まれた周囲は蓮に覆われており、夏には柔らかな桃色の花が咲き乱れ、訪れた方々の心を和ませます。特にお花好きの方にはオススメのスポットです。
弘法大師・空海と共に遣唐使として唐に渡った橘逸勢(たちばなのはやなり、生年未詳〜842年)。書に優れていた嵯峨天皇、空海、橘逸勢の平安時代初期の三人を合わせて「三筆(さんぴつ)」と呼ばれています。
同様に平安時代中期の書に優れた三人を「三蹟(さんせき)」と呼びます。小野道風(おののみちかぜ/とうふう、894年〜967年)、藤原佐理(ふじわらのすけまさ、944年〜998年)、藤原行成(ふじわらのゆきなり、972年〜1028年)です。
“宝蔵”の西側には小野道風ゆかりの柳が、しなやかな枝振りを見せています。書に対してスランプになっていた小野道風が、柳に飛びつこうとしている蛙の行動を見て、自らの努力不足を痛感。より一層の精進を決意した場所として伝わっています。
1994年(平成6年)には「古都京都の文化財」の一つとして世界遺産リストに登録された「東寺」。正式名称である「金光明四天王教王護国寺秘密伝法院」の略称として「教王護国寺」とも呼ばれています。
弘法大師・空海にゆかりがあり、また足利尊氏や小野道風を始めとする様々な歴史上の人物とのエピソードが残る寺院。草木が生い茂り自然の溢れる境内には“八幡宮”や“八島社”といった神様も鎮座しています。
以上、京都駅または近鉄東寺駅から歩いて向かえ、アクセスも簡単の真言宗総本山「東寺」の御紹介でした。
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