ケーブルカーや壮観な景色も満喫!日本仏教の聖地「比叡山」

ケーブルカーや壮観な景色も満喫!日本仏教の聖地「比叡山」

更新日:2016/06/03 14:00

今村 裕紀のプロフィール写真 今村 裕紀 旅先案内人
最澄の開創以来、平安仏教の中心の地となり、その後、各宗各派の高僧を輩出して、日本仏教の母山と仰がれている「比叡山」。
そんな「比叡山」は、旅の玄関口となる駅をはじめとして、ケーブルカー、ロープーウェイからの眺めなど、実に見どころ満載な場所なのです。
先達たちが学び、修業を積んだ足跡を美しい自然のなかに辿ってみませんか?

「八瀬比叡山口駅」から思いを秘めて

「八瀬比叡山口駅」から思いを秘めて

写真:今村 裕紀

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「叡山電鉄本線」の終点「八瀬比叡山口駅」が「比叡山」への出発点であり、玄関口となります。写真が、「八瀬比叡山口駅」のこじんまりとした駅舎。駅に降り立った瞬間に感じる空気とまわりの景色に、思わず「京都市内からちょっと遠くに来たな」という感じになります。駅舎は、大正14年開業以来の木造駅舎。なぜかいとおしく感じられる駅舎ではありませんか?

駅舎のすぐそばを流れる「高野川」沿いをゆっくりと散策するだけで清々しい気持ちになりますが、「高野川」の吊り橋を渡り、川沿いに来た方向を戻るように進みますと数分で、庭園で名高い「瑠璃光院」に到ります。春の苔じゅうたんの間を縫って流れるせせらぎや秋の楓紅葉が美しい寺院ですが、文化財保護のため、春と秋の特別拝観期間のみの公開になっていますので注意して下さいね。

鹿もお気に入りの高低差日本一の「叡山ケーブルカー」に乗って

鹿もお気に入りの高低差日本一の「叡山ケーブルカー」に乗って

写真:今村 裕紀

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「八瀬比叡山口駅」から「高野川」の吊り橋を渡り、徒歩で数分の「ケーブル八瀬駅」に向かいましょう。琵琶湖側からのアプローチである比叡山鉄道の「坂本ケーブル」に対して、京都側は、京福電鉄の「叡山ケーブル」で、大正14年の開業です。単線のこのケーブルカーは、上り、下り、同時に出発します。そして中央のこの位置で互いに左右に分かれて行きかい、再び単線に戻って行きます。

わずか一本の鋼鉄製ロープの両端に、それぞれ1両ずつケーブルカーが取り付けられていて、滑車で引っ張って運行しますので、電車とは違い、運転は山上駅にいる運転士が行っています。ただ、各車両に乗車している運転手さんは、ハンドブレーキを効かすことは出来ます。その証拠に……乗車中に激しい警笛音が響いて、突然、停車することがあります。これがハンドブレーキを使用した時です。何事かと思えば、鹿が線路の鉄を舐めに現れていることも。鹿も慣れた様子で、「しょうがないな〜」という感じで立ち去って行くという微笑ましい光景です。

春は新緑が、秋には紅葉が沿線を彩ります。高低差日本一の561mを約9分で登り、終点「ケーブル比叡」駅に到着します。

京都市内を見下ろす空中散歩

京都市内を見下ろす空中散歩

写真:今村 裕紀

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3つ目の魅力は「比叡山ロープーウェイ駅」からの空中散歩。遥か遠くの京都市内が、緑と青のコントラストのパノラマのなかにひろがります。眼下の視界がぐいぐいと広がっていくさまは、まさにロープーウェーならではの壮観な光景です。

この全長486m、約3分で「比叡山ロープーウェイ山頂」駅に到着するロープーウェイは、ケーブルカーとともに12月上旬で一旦運行を終了します。それ以降、あたりは雪に覆われてしまいますが、3月下旬には再開されます。

ようやく「比叡山」山頂に到着です。さて、「比叡山延暦寺」は何処でしょうか?実は、「延暦寺」がある場所としては、上り過ぎているのです。ですから、約2キロほど下らなければなりません。バスは30分に一本、下るのは約2キロ……歩けば、およそ30分です。バスを待つより、さあ歩きましょう!しかも、「延暦寺」は滋賀県にあります。ここはまだ、京都府です。歩いて滋賀県への県境を突破しましょう!

比叡山のふところにつつまれて

比叡山のふところにつつまれて

写真:今村 裕紀

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山頂からは、写真のような木の根道が続きます。下りの道をゆっくり歩きましょう。比叡山のふところに抱かれていることを実感出来る時間の始まりです。澄み渡った空気を思いっきり吸い込み、静寂に響き渡る鳥の声に耳を傾けてみましょう。途中に現れる石塔や石碑を見送りながら歩いて行けば、道標がしっかりと導いてくれます。山道を下る一歩一を先達たちの足跡に重ねながら、最澄開山の頃のいにしえに思いを馳せてみれば、比叡山の霊気につつまれたあたりの風景が、また変わって感じられるかもしれません。京都市内からやって来たことを思えば、ここは全くの異空間です。

やがて、小さな小屋が、ぽつりと現れます。「巡拝受付所」です。国境の検問所の観があります。「延暦寺諸堂巡拝料」を払って進みますと、いよいよ「山王院」が左手に現れ、さらに進むと、朱の「東塔」と「阿弥陀堂」が迎えてくれます。その間を抜けて進むと、「大講堂」が重厚な存在感のある姿を現わします。「根本中堂」ももう、すぐそこです。

ゴールイン「比叡山 延暦寺 根本中堂」

ゴールイン「比叡山 延暦寺 根本中堂」

写真:今村 裕紀

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この坂を下った左が「比叡山 延暦寺 根本中堂」です。実は、「延暦寺」というお寺はどこにもありません。「比叡山延暦寺」は、「根本中堂」がある「東塔地域」、「釈迦堂」のある「西塔地域」、それに「横川中堂」のある「横川地域」の3地域に分かれています。この3地域を総称して「比叡山延暦寺」といいます。各地域にそれぞれ中堂があり、東塔の「根本中堂」はその最大の仏堂で、「延暦寺」の総本堂になっています。

「根本中堂」は巨大な建物です。本尊の前には1,200年間燃え続けている「不滅の法灯」が安置されています。けれど、1,200年燃え続けている、というのは正確ではありません。なぜなら、織田信長の焼き打ちにより、「不滅の法灯」も一旦は消えているからです。このとき山形の「立石寺」に「根本中堂」から分灯されていた法灯があり、これを継いだとされています。

この中堂の特徴は、堂内が外陣、中陣、内陣に分かれていて、本尊や法灯が安置されている内陣が他より3m低い石敷きの土間となっていて、中陣でお参りをする参詣者と本尊や法灯が同じ目の高さになっていることです。これは仏も人もひとつという仏教の考えを表しています。やさしい心遣いを感じますね。

おわりに

「比叡山 延暦寺」は京都市と滋賀大津市にまたがる山全域を境内とする天台宗の大寺院です。「比叡山」という山をめざして山頂に到るまでの自然に触れ、景色を楽しみ、さらに1,200年前にひとつの理念を以て山中に展開された史跡の大伽藍に触れながら、広大な山全体の雰囲気にしっとりと浸ってみてはいかがですか?

最後に、「比叡山」に至るまでの方法はいくつかあります。「京都駅」からですと直行バスも出ていますし、今回のように京都市内からいくつもの交通機関を乗り継いで行く方法もあります。いずれにしましても、先を急がずに、ゆっくりと旅の行程を積み上げて、「比叡山」を訪れてみませんか?

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/06/15 訪問

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