旨すぎる!信州蕎麦の本場「戸隠」でお気に入りのそばに出会う旅

旨すぎる!信州蕎麦の本場「戸隠」でお気に入りのそばに出会う旅

更新日:2015/12/24 19:05

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
標高の高い山々に囲まれ冷涼な気候の信州。なかでも、朝晩の激しい寒暖差から霧が多く発生する地域のそばは「霧下そば」と呼ばれ、その品質が高く評価されています。全国に数あるそばの中でも、その呼び名に市町村名を冠したそばの代表格といえば「戸隠そば」でしょう。言うまでもなく戸隠が有数な霧下そばの産地として名高いことに由来します。神話のふるさと・戸隠の神秘とともに「戸隠そば」味わう旅にでかけてみませんか。

戸隠蕎麦は、神仏に御供えした“ぼっち盛り”で歴史と伝統を今に伝える寺方そば

戸隠蕎麦は、神仏に御供えした“ぼっち盛り”で歴史と伝統を今に伝える寺方そば

写真:和山 光一

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平安時代、山岳修行の山伏たちがそばを携帯食として持ち歩いたことから伝わる戸隠そば。山岳密教の修験者が集う仏教の修行場でもあった戸隠には、かつて戸隠三千坊といわれたほど周辺には数多くの宿坊が集落を形成していて、江戸時代には戸隠講に訪れる旅人たちをもてなすハレの料理として“寺方そば”が宿坊で振る舞われていました。戸隠そばの大きな特徴に「ぼっち盛り」というのがあります。神仏にお供えする際に一口ほどの量にきちんと束ね、5〜6束を地元産の根曲がり竹で編まれたザルに盛ったのが起源という説もあります。

戸隠山や飯綱山といった戸隠連峰から湧き出すミネラル分の豊富な水と標高1000mで栽培される霧下そば、独特の辛味のある戸隠地大根、それにマイナス20度の冷え込み。旨いそばのためにこれ以上の条件はありません。ぴりりと辛味を効かせたつゆで豪快にすすって、戸隠そばの醍醐味を味わってください。

戸隠の風景とともにたぐるぼっちもりの「そばの実」

戸隠の風景とともにたぐるぼっちもりの「そばの実」

写真:和山 光一

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澄んだ水面に峻嶮な戸隠連峰を映し出す鏡池へと続く道の入り口に佇むそば処が「そばの実」です。言わずと知れた戸隠の名店で、戸隠の風景に馴染むようにと考えられた建物の情緒を大切にした店構え。白い暖簾をくぐり中に入ると、水芭蕉や山ぶどうの画をあしらった衝立て、信州在住の陶芸家の手による花器に活けられるさりげない季節のあしらい等、古い調度品がセンス良く飾られています。そして広々とした窓に映り込むハンノキ林の美しい自然を眺めれば戸隠に来たことを実感できるお店です。

粉挽きから磨き、石抜き、脱皮まですべて店で行い、野趣あふれる艶やかなそばを楽しませてくれます。年間8度に保っている凄烈な地下水は、そばの味を凛と引き立てる大切な要素で、そばが濡れて輝いているうちに食べて下さい、水全体の旨さも感じられますよ。

ここでは、市販されていない希少な日本酒・佐久乃花酒造の「閑雲野鶴」と「五稜郭」がいただけるのでお酒好きの方は是非。すっきりとした上品な味わいで、風味豊かなそばの味をより引き立てます。

秋・冬には「雉子汁そば」もメニューに並びます。雉子肉とそばは冬の名コンビ。風味豊かなそばそばと佐久の自然の中で飼育された香り高い雉子肉の相乗効果で寒い冬には身も心も温まります。

越水ヶ原にある隠れ家的そばの名店「そば茶屋 極楽坊」

越水ヶ原にある隠れ家的そばの名店「そば茶屋 極楽坊」

写真:和山 光一

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知る人ぞ知る穴場の店「そば茶屋 極楽坊」は、戸隠のそば銀座ではなく、水芭蕉やカタクリなど山野草が咲き競う越水ヶ原、戸隠スキー場の看板を右折してすぐに左折する奥社への参道沿いに立つ、少し奥まった場所にあります。景観への配慮か看板はなく、紅色の生地に白抜きで梅鉢の紋に極の字の暖簾がひときわ目を引きます。

戸隠神社の宿坊である名店「徳善院蕎麦・宿坊極意」から暖簾わけされたお店で、しっかりと戸隠蕎麦の様式を受け継いでいます。古民家の佇まいを感じさせる店内は、ジャズが流れる落ち着いた雰囲気であり、カウンター席にテーブル席、畳敷きの和室につらなって角部屋には囲炉裏も設けられています。

二八の細打ちで5ボッチが上品に盛りつけられたそばは、香り豊かで力強い食感、そばつゆもきりっとした辛さの中にふんわりと甘さがのぞいています。薬味はネギと大根おろしは添えられているものの定番のわさびがないのが特徴です。水切りせずに出される戸隠そばにもまけず、そばとつゆの相性がよく、実際薬味は必要がないぐらいです。

食前にはそば茶とそばかりんとうも供されます。お蕎麦がでてくるまで、ジャズを聴きながらゆったりとした時間を過ごせます。

名店と称される所以はそば粉にあり「うずら家」

名店と称される所以はそば粉にあり「うずら家」

写真:和山 光一

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戸隠神社中社に歩を進めていくと、大鳥居脇にそびえる樹齢900年の三本杉に守られるように「うずら家」があります。JR東日本「大人の休日倶楽部」戸隠編のCMで、吉永小百合さんが蕎麦をいただいていたお店としてますます有名になったお店で、大きな窓からは中社門前の景色が眺めます。

ここでざるそばを注文したなら、まずはその香りを確かめてみましょう。うっすらと緑色を帯びたそばに鼻を寄せると、ふうわりとそばが香ります。その香りにつられ、つゆもつけずに一口啜ると、もちもちとした食感で、噛むほどに甘みを感じます。ここでは真冬の厳冬期に玄そばが熟成し、成分の糖化が最高に達したものを石臼製粉し、冷凍保存したそば粉を使うので年中うまいそばが味わえます。その為に毎年11月下旬から12月中旬まで休業になるので訪れる際は、注意が必要です。

旨いそばに自慢の天ぷらと信州の地酒「夜明け前」がよくあいます。わさびを自分で擂りながらそばを待つのも至福の時間です。

小鳥のさえずりに包まれる神話の里「戸隠」

長野市街地から「七曲がり」と呼ばれる曲がりくねった山道を通り、巨人デーダラ法師が湿地から足を引きぬいた所がそのまま池になったという伝説の大座法師池を過ぎて、真っ直ぐに伸びるメインルート「戸隠バードライン」を進むと、戸隠村に辿り着きます。さらに進むと、戸隠神社の宝光社、中社、奥社へと続きます。名前の通り道脇でさまざまな小鳥が鳴き交わし、山道を登りきったところで見える鋸歯のような戸隠連峰の威容が、神域に入った感を強めてくれます。

毎年11月には戸隠そば祭りとしてのイベント「半ざる食べ歩き」が開催されます。期間中半ざる(3ボッチ)そばが食べられる手形(半ざる券4枚2000円)を購入し、イベント参加そば店に持参して食べ歩きができるというものです。個性がそれぞれ光る各店の味が堪能できます。
(手形のお求めはそば店、土産物店などにて)

中社周辺には30数軒ものそば屋が軒を連ね、そば所・戸隠ならではの老舗、名店も多く、今日の一軒を選ぶのは、大いに楽しく、大いに迷うものです。今回紹介させたいただいたお店以外にも美味しいお店はたくさんあります。是非お気に入りの戸隠そばを見つけてみてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/12/13−2015/12/20 訪問

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