日本の寺院建築の様式には、和様(わよう)・大仏様(だいぶつよう)・禅宗様(ぜんしゅうよう)とそれらが混ざった折衷様があります。和様は平安時代に日本独自に発展した様式で、大仏様・禅宗様は鎌倉時代に宋から伝わった新しい様式です。重源(ちょうげん)という人物によって伝えられ東大寺大仏殿の再建に用いられたのが大仏様、大陸の禅僧との交流で伝えられ禅宗寺院で用いられたのが禅宗様です。
鶴林寺本堂は応永4 (1397)年の築で、折衷様建築を代表する建築です。各所に和様・禅宗様・大仏様の特徴があり、全体的にうまく調和しています。
寺院建築では軒の出を支えるために柱の上に写真のような組物(※斗きょうともいいます)をおきます。鶴林寺本堂では和様の組物を採用しています。柱上の組物の間に入れる装飾材を中備(なかぞなえ)といいますが、ここではU字型の装飾材が採用されています。これは大仏様で用いられる双斗(ふたつど)です。扉は禅宗様や大仏様で用いられる桟唐戸(さんからど)といって桟(木の枠)に板をはめた戸で、桟の断面が三角になった大仏様の桟唐戸です。内部には禅宗様の海老虹梁(えびこうりょう)という海老のように曲がった梁が使われていたり、大仏様に特徴的な断面の丸い虹梁(こうりょう、虹のように上に少し反った梁)が使われていたりします。
中世より古い時代のものですが、鶴林寺にはもうひとつの国宝があります。太子堂は平安後期に法華堂として建てられたもので、兵庫県最古の建築です。禅宗様や大仏様が成立する前の建物なので、もちろん和様です。桟唐戸は禅宗様のものなので、あとで変えられたものです。
鶴林寺の建造物では他に護摩堂、 鐘楼、常行堂、行者堂が重要文化財です。ここでは護摩堂の写真をのせてみました。本堂と違って斗きょうも中備もなくシンプルな外観ですが、中を覗くと大仏様で用いられる断面の丸い虹梁が大胆に入っているのが見えて、なかなかにかっこいい建物です。写真奥の建物は昨年(2012年)完成したばかりの宝物館です。銅造聖観音立像など重要文化財も展示されています。
さて、鶴林寺の紹介でしたが、鶴林寺にはいろんな時代のいろんな文化財があるので、じっくりと見て自分の好みにあうものを見つけていただきたいです。また、近隣にも貴重な文化財のある寺院がたくさんあるので(小野市の浄土寺、加西市の一乗寺、加東市の朝光寺、姫路市の円教寺など)、あわせて訪れると文化財や歴史の理解が深まると思います(鶴林寺以外は交通の便があまりよくないですが)。折衷様建築に興味をもつことができたのであれば、観心寺金堂(大阪府河内長野市)、浄土寺本堂(広島県尾道市)などを訪れてみて下さい。どちらも国宝で素晴らしい建築です。前述の朝光寺の本堂も折衷様建築で、国宝指定を受けています。
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